谷崎潤一郎と阪神間
明治・大正・昭和、3つの時代を生き、独自の美学を貫いた作家谷崎潤一郎。
彼が豊饒の時を過ごした阪神間時代にスポットを当て、その生涯、残した作品、阪神間での足跡をご紹介いたします。
人と文学
-
1歳
1886年 明治19年
-
生い立ちから学生時代
潤一郎は明治19年、東京日本橋に生まれた。優しい母、裕福な生活に恵まれたが、やがて家は零落。苦学の日々を送った彼は、不安のうちに文学の道を歩み始める。エリートの道を捨てての大きな賭けだった。
-
25歳
1910年 明治43年
-
文壇デビューと関東時代
明治44年、反自然主義の旗手として華々しくデビュー。耽美的な作風は「悪魔主義」として人々を引きつけた。しかし、すぐに活動は停滞し、破滅的な放浪生活を送る。30歳で結婚するが、やがて有名な小田原事件へと発展する。
-
38歳
1923年 大正12年
-
阪神間、新たな美の発見
大正12年、関東大震災を逃れ阪神間に定住。阪神間の温厚な気候や文化は彼の意識の変化を促した。運命の人、松子との出会いを通じて古典的な美を発見。戦時下において珠玉の名作へと結実した。
-
61歳〜80歳
1946年 昭和21年
-
晩年、死とエロスをテーマに
60歳で終戦を迎えた潤一郎。高血圧や狭心症といった肉体の衰えを感じ始めながらも、旺盛な創作意欲で「老人の性」をテーマに創作活動を続ける。死とエロスを見据えた作品は海外からも高い評価を受けた。
谷崎作品へのいざない
『刺青』
明治34年11月号「新思潮」
『痴人の愛』
大正13年3月4日〜6月14日「大阪朝日新聞」大正13年11月号〜大正14年7月号「女性」
『卍』
昭和3年3月〜4年4月、6〜10月、12月〜昭和5年1月、4月「改造」に発表
『蓼喰ふ蟲』
昭和3年12月~4年6月「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」に連載
『春琴抄』
昭和8年6月「中央公論」
『猫と庄造と二人のをんな』
昭和11年1・7月号「改造」
『細雪』
昭和18年「中央公論」に連載し始めたが軍隊より弾圧。23年、全三巻を中央公論より刊行した。
『鍵』
昭和31年1月、5月〜12月「中央公論」
『瘋癲老人日記』
昭和36年11月〜37年5月「中央公論」
谷崎作品「乱菊物語」の舞台を歩く
室津は『乱菊物語』の舞台となったところである。本格大衆小説を意図した作品だが、昭和5年の妻千代子との離婚で中絶した。明の張恵卿が室津の遊君かげろうを手に入れるために、彼女の所望した羅綾の蚊帳の入った金の小函を船で運んでいる途中、室津の沖合いで遭難する。かげろうは、この金の小函を届けた者に身を任すとおふれを出したために、幻術師、海賊など入り乱れ、播磨の太守赤松家と代官浦上家を巻き込んでのスペクタルである。海の風景や家島諸島を念頭においた谷崎にはめずらしい大がかりなものである。
-
01見性寺
-
見性寺
臨済宗相国寺派。開山は十四世紀。毘沙門天立像はおよそ700年前に建てられたといわれる見性寺の寺宝。材料、彫刻共に平安朝藤原時代のものとして国指定重要文化財になっている。
『乱菊物語』で見性寺は、海龍丸をかたった幻術使いの幻阿弥が仮の宿りとするところ。「室君」の章の「その二」に、築地の周りに龍の丸の定紋を打った幔幕が繞らされ武士が見張りをしている、という描写がある。
-
02街並み
-
街並み
奈良時代、摂播五港の一つに定められた室津港は、江戸時代は、参勤交代の大名を泊める本陣六軒ほか、豪商、揚げ屋、置屋などでにぎわった。明治以後、交通が陸路を主とするようになって、室津は衰退した。だが、町のそこここには、古い建物が残っていて、昔の面影を忍ばせてくれる。また近年「町おこし」の一環として、元の本陣は「室津資料館」に、豪商「嶋屋」は改装されて「室津海駅館」として見学施設になっている。失われていく文化財を活かす努力の一方で、歩道も石畳に整備された。
-
03賀茂神社
-
賀茂神社
高倉天皇に伴って平清盛が厳島詣での際この地にたちより、神前に祈願した。古びた五、六棟の社殿が立ちならんでいたと「高倉院厳島御幸記」に記されている。五つの社殿とそれを囲む回廊、それに唐門は国指定重要文化財。四境内には県指定天然記念物のそてつの群生がある。
-
04浄運寺
-
浄運寺
浄土宗、本尊は阿弥陀如来像、山号を清涼山という。承元元年(1207)法然上人が讃岐へ渡る際、舟でこぎ出した友君という遊女が上人の説法を聞き得度し念仏往生を遂げた、と伝えられる。法然上人御霊場の一つである。又、門前には友君の墓がある。法然上人像、友君像、お夏像がお祀りされている。
浄運寺の向かえには室津小学校や室津浄化センターがあり、その背景におだやかな浜辺が広がり、少し高台の浄運寺の境内からそれを望むことができる。
-
05遊女友君の墓
-
遊女友君の墓
浄運寺の門前にある。木曾義仲の夫人であったと伝えられている友君は、室津に移り住み船人の旅愁を慰めた。『乱菊物語』の「小五月」その二に「かの古への花漆に次ぐ遊女――法然上人の教えを受けて往生の素懐を遂げたという友君の墓がある」と紹介されている。
-
06藻振の鼻と家島諸島
-
藻振の鼻と家島諸島
室津の南西端、藻振の鼻に立つと、三方を海に囲まれる絶景が見れる。間近に見えるのは唐荷島。昔、唐の船が難破し、その積荷がこの島に流れ着いたところから、唐荷島と呼ばれるようになった。万葉集や播磨風土記にもその名が見える。『乱菊物語』の「海島記」には、唐荷島、家島、藻振の鼻、七曲りなど、室津の美しい海の風景が描写されている。
-
07室津港
-
室津港
播磨風土記には、「この泊風を防ぐこと室のごとし 故に因りて名をなす」と記されている。『乱菊物語』「海島記」その三に「いったい明治以後における何千噸、何万噸という巨船は、大概小豆島の南側と四国との間の水道を選んで、家島の辺りを航行することはめったにない。それというのは、この近海には暗礁が多く、なかんずく西島から坂越の沖へかけて漁師が「しづも」と呼んでいる長い瀬があるために、吃水の深い船舶はそこを通ることが出来ないのである。が、航海術の幼稚であった時代には主として沿岸を縫って行くので、沢山の島が宿駅を設けてくれる方が心強い訳であるから、従って家島と中国との間が重要な海の往還であり、この港もまた、どんなにか当時の旅人や船長から頼りにされたことであろう。」とある。海路が交通路でなくなった現在、室津港は漁港としてほそぼそとなりわいを続けている。竹久夢二も愛した、この漁港風景は叙情にあふれている。
谷崎・阪神間リンク集
1999年に谷崎潤一郎記念館、兵庫県立美術館、西宮市大谷記念美術館、芦屋市立美術博物館は4館合同で「阪神間モダニズム・六甲山麓に花開いた文化、明治末期ー昭和15年の軌跡」を開催した。
研究論文・資料谷崎潤一郎参考文献目録
単行本
辰野 隆 谷崎潤一郎(イヴニング・スター社 昭22・10)
日夏耿之介 谷崎文学(朝日新聞社 昭25・3のち復刻版)
中村光夫 谷崎潤一郎論(河出書房 昭27・10のち河出・新潮文庫)
風巻景次郎・吉田精一編 谷崎潤一郎の文学(塙書房 昭29・7)
吉田精一編 近代文学鑑賞講座9 谷崎潤一郎(角川書店 昭34・10)
橋本芳一郎 谷崎潤一郎の文学(桜楓社 昭40・6のち増訂版等)
谷崎精二 明治の日本橋・潤一郎の手紙(新潮社 昭42・3)
谷崎松子 倚松庵の夢(中央公論社 昭42・7のち中公文庫)
三枝康高 谷崎潤一郎論考(明治書院 昭44・6)
伊藤 整 谷崎潤一郎の文学(中央公論社 昭45・7)
野村尚吾 伝記谷崎潤一郎(六興出版 昭47・5のち改訂新版)
日本文学研究資料叢書 谷崎潤一郎(有精堂 昭47・10)
荒 正人編 谷崎潤一郎研究(八木書店 昭47・11)
野村尚吾 谷崎潤一郎 風土と文学(中央公論社 昭48・2)
野口武彦 谷崎潤一郎論(中央公論社 昭48・2)
橋本 稔 谷崎潤一郎 そのマゾヒズム(八木書店 昭49・4)
野村尚吾 谷崎潤一郎の作品(六興出版 昭49・11)
三瓶達治 近代文学の典拠 鏡花と潤一郎(笹間書院 昭49・12)
野口武彦等 シンポジウム日本文学16 谷崎潤一郎(学生社 昭51・9)
河野多恵子 谷崎文学と肯定の欲望(文芸春秋 昭和51・9のち中公文庫)
秦 恒平 谷崎潤一郎ム〈源氏物語〉体験(筑摩書房 昭51・11のち増補版・筑摩叢書版・湖(うみ)の本版)
永栄啓伸 谷崎潤一郎研究のためにム文献目録(私家版 昭52・1)
秦 恒平 神と玩具との間ム昭和初年の谷崎潤一郎(六興出版 昭52・4のち湖(うみ)の出版)
高木治江 谷崎家の思い出(構想社 昭52・6)
今 東光 十二階層崩壊(中央公論社 昭53・1)
林 伊勢 兄潤一郎と谷崎家の人々(九芸出版 昭53・8)
古典と近代作家第一集 谷崎潤一郎(筑摩書院 昭54・3)
佐伯彰一 物語芸術論 谷崎・芥川・三島(講談社 昭54・8のち中公文庫)
稲沢秀夫 谷崎潤一郎の世界(思潮社 昭54・9のち新装版)
長野甞一 谷崎潤一郎ム古典と近代作家(明治書院 昭55・1)
渡辺たをり 祖父谷崎潤一郎(六興出版 昭55・5)
紅野敏郎編 論考 谷崎潤一郎(桜楓社 昭55・5)
笹原伸夫 谷崎潤一郎潤一郎ム宿命のエロス(冬樹社 昭55・6)
紅野敏郎・千葉俊二編 資料 谷崎潤一郎(桜楓社 昭55・7)
多田道太郎・安田武 関西 谷崎潤一郎にそって(筑摩書房 昭56・11)
千葉俊二編 鑑賞日本現代文学8 谷崎潤一郎(角川書店 昭57・12)
市居義彬 谷崎潤一郎の阪神時代(曙文庫 昭58・3)
森安理文 谷崎潤一郎 あそびの文学(国書刊行会 昭58・4)
平山城児 考証『吉野葛』ム谷崎潤一郎の虚と実を求めて(研文出版 昭58・5)
稲沢秀夫 聞書谷崎潤一郎(思潮社 昭58・5)
谷崎松子 湘竹居追想ム潤一郎と「細雪」の世界(中央公論社 昭58・6のち中公文庫)
斎藤なほや 妄想家の顛末ム谷崎論のための私かな読解の試み(近代文芸社 昭59・1)
大久保典夫 物語現代文学史ム1920年代(創林社 昭59・2)
永栄啓伸 谷崎潤一郎 資料と動向(教育出版センター 昭59・5)
大谷晃一 仮面の谷崎潤一郎(創元社 昭59・11)
笹原伸夫編 新潮日本文学アルバム7 谷崎潤一郎(新潮社 昭60・1)
武田寅雄 谷崎潤一郎小論(桜楓社 昭60・10)
渡辺たをり 花は桜、魚は鯛ム谷崎潤一郎の食と美(ノラブックス 昭60・12のち中公文庫)
坂上博一 反自然主義の思想と文学(桜楓社 昭62・5)
遠藤 祐 谷崎潤一郎ム小説の構造(明治書院 昭62・9)
永栄啓伸 谷崎潤一郎試論ム母性への視点(有精堂 昭63・7)
藤田修一 谷崎潤一郎論(曜曜社出版 昭63・12)
堀切直人 ファンタジーとフモール(青土社 平1・6)
谷崎終平 懐かしき人々ム兄潤一郎とその周辺ム(文芸春秋 平1・8)
千葉伸夫 映画と谷崎(青蛙房 平1・12)
千葉俊二編 日本文学研究資料新集 谷崎潤一郎・物語の方法(有精堂 平2・1)
市居義彬 谷崎潤一郎和歌集(曙文庫 平2・1)
川本三郎 大正幻影(新潮社 平2・10)
宮内淳子 谷崎潤一郎ム異境往還ム(国書刊行会 平3・1)
水上 勉 谷崎先生の書簡ムある出版社社長への手紙を読む(中央公論社 平3・3)
塚谷晃弘 谷崎潤一郎 その妖術とミステリー性(沖積舎 平3・4)
群像 日本の作家8 谷崎潤一郎(小学館 平3・5)
渡部直己 谷崎潤一郎ム擬態の誘惑(新潮社 平4・6)
永栄啓伸 谷崎潤一郎論ム伏流する物語(双文社出版 平4・6)
河野仁昭 谷崎潤一郎 京都への愛着(京都新聞社 平4・6)
たつみ都志 谷崎潤一郎・「関西」への衝撃(和泉書院 平4・11)
小森陽一 緑の物語ム『吉野葛』のレトリック(新典社 平4・12)
大里恭三郎 谷崎潤一郎ム『春琴抄』考ム(審美社 平5・3)
秦 恒平 名作の戯れ『春琴抄』『こころ』の真実(三省堂 平5・4)
河野多恵子 谷崎文学の愉しみ(中央公論社 平5・6のち中公文庫)
伊吹和子 われよりほかに 谷崎潤一郎最後の十二年(講談社 平6・2)
東郷克美 異界への片ヘム鏡花の水脈(有精堂 平6・2)
三島佑一 谷崎潤一郎『春琴抄』の謎(人文書院 平6・5)
千葉俊二 谷崎潤一郎 狐とマゾヒズム(小沢書店 平6・6)
山田和幸 谷崎潤一郎作品再録状況(昭和四十年以前)ム全集・叢書・単行本・文庫本・雑誌等(私家版 平6・10)
安田 孝 谷崎潤一郎の小説(翰林書房 平6・10)
久保田修 『春琴抄』研究(双文社出版 平7・11)
細江 光(翻刻・注) 映像・音声資料(芦屋市谷崎潤一郎記念館 平7・12)
三島佑一 谷崎・春琴なぞ語り(東方出版 平7・12)
細谷 博 凡常の発見 漱石・谷崎・太宰(明治書院 平8・2)
清水良典 虚構の天体 谷崎潤一郎(講談社 平8・3)
雨宮庸蔵宛谷崎潤一郎書簡(芦屋市谷崎潤一郎記念館 平8・10)
竹内清己 文学構造ム作品のコスモロジー(おうふう 平9・3)
瀬戸内寂聴 つれなかりせばなかなかにム妻をめぐる文豪と詩人の恋の葛藤(中央公論社 定9・3)
笹原伸夫編 近代文学作品論叢書9 谷崎潤一郎『刺青』作品論集成1・2(大空社 平9・6)
永栄啓伸 評伝 谷崎潤一郎(和泉書院 平9・7)
アドリアーナ・ポスカロ等 谷崎潤一郎国際シンポジウム(中央公論社 平9・7)
高桑法子 幻想のオイフォリー 和泉鏡花を起点として(小沢書店 平9・8)
近藤信行 谷崎潤一郎 東京地図(教育出版 平10・10)
谷崎松子 廬辺の夢(中央公論社 平10・10)
久保家所蔵谷崎潤一郎久保義治・一枝宛書簡(芦屋市谷崎潤一郎記念館 平11・3)
河野多恵子編 いかにして谷崎潤一郎を読むか(中央公論社 平11・4)
宮本徳蔵 潤一郎ごのみ(文芸春秋 平11・5)
尾高修也 青年期 谷崎潤一郎論(小沢書店 平11・7)
前田久徳 谷崎潤一郎 物語の生成(洋々社 平12・3)
谷崎潤一郎・渡辺千萬子 谷崎潤一郎=渡辺千萬子 往復書簡(中央公論新社 平13・2)
明里千章 谷崎潤一郎 自己劇化の文学(和泉書院 平13・6)
雑誌特集号
谷崎潤一郎氏(「雄弁」大8・4春季増刊号)
最近の谷崎潤一郎氏(「新潮」大13・2)
「春琴抄後語」の読後感(「文学界」昭9・7)
谷崎潤一郎研究(「評論」昭9・8)
谷崎潤一郎特輯(「文学会議」昭25・7)
谷崎潤一郎読本(「文芸」臨時増刊 昭31・3)
さまざまの「鍵」論(「中央公論」昭32・1)
谷崎潤一郎・作家論と作品論(「解釈と鑑賞」昭32・7)
荷風と潤一郎(「國文學」昭39・4)
谷崎潤一郎追悼(「心」昭40・9)
谷崎潤一郎追悼(「中央公論」昭40・10)
谷崎潤一郎追悼(「群像」昭40・10)
谷崎潤一郎・高見順追悼(「文芸」昭40・10)
唯美の系譜 泉鏡花と谷崎潤一郎(「解釈と鑑賞」昭48・6)
志賀直哉と谷崎潤一郎(「日本近代文学」昭50・10)
谷崎潤一郎 耽美の構図(「解駅と鑑賞」昭51・10)
文芸読本 谷崎潤一郎(河出書房新社 昭52・2)
谷崎潤一郎 美とエロスの航跡(「國文學」昭53・8)
作品論・谷崎潤一郎(「芸術至上主義文芸」昭54・11)
谷崎潤一郎(「解釈と鑑賞」昭58・5)
仕事部屋の谷崎潤一郎(「中央公論文芸特集」昭59・10)
生誕百年谷崎潤一郎特集(「國文學」昭60・8)
谷崎潤一郎(「墨」昭61・3)
春琴抄読本(国立劇場 昭61・7)
谷崎潤一郎の戯曲(「悲劇喜劇」昭61・9)
谷崎潤一郎の関西と近代(「関西文学」昭62・8)
谷崎文学小特集(「解釈」昭63・2)
《語り》の位相(「日本近代文学」平2・5)
谷崎潤一郎ム語りからテーマへ(「文学 季刊」平2・7)
シンポジウム『細雪』ム病いの時空ム(「国語国文研究」平2・12)
谷崎潤一郎の世界(「解釈と鑑賞」平4・2)
日本文学の巨人谷崎潤一郎(「鳩よ!」平4・5)
谷崎潤一郎 問題としてのテクスト(「國文學」平5・12)
〈シンポジウム〉文学作品の分析(「表現研究」平6・9)
谷崎潤一郎ムいま、問い直す(「國文學」平10・5)
谷崎潤一郎を読む(「解釈と鑑賞」平13・6)
単行本・雑誌等所収論文
(単行本は『』、雑誌等は「」で示した。巻号はすべて、副題については必要に応じて省略した。昭和四十年以降の単行本に収められたり、研究史で言及した論文は、極力省略した。単行本、雑誌それぞれに複数回収録されたものについては、閲覧が容易と判断した方のみ示した。)
永井荷風 谷崎潤一郎の作品(「三田文学」明44・11)
小宮豊隆 谷崎潤一郎君の「刺青」(「文章世界」明45・3)
谷崎精二 谷崎潤一郎氏に呈する書(「早稲田文学」大2・4)
谷崎精二 潤一郎氏の近業(「文章世界」大2・12)
中村孤月 谷崎潤一郎論(「文章世界」大4・2)
秦 豊吉 最近の谷崎潤一郎論(「新潮」大5・4)
芥川龍之介 文芸的な、余りに文芸的なム併せて谷崎潤一郎氏に答ふ(「改造」昭2・4~8)
前田河広一郎 谷崎潤一郎論(「文芸戦線」昭3・5)
小林秀雄 谷崎潤一郎(「中央公論」昭6・5)
水上滝太郎 「吉野葛」を読んで感あり〈貝殻追放〉(「三田文学」昭6・6)
川端康成 文芸時評 谷崎潤一郎の「盲目物語」と「紀伊国狐憑漆掻語」(「中央公論」昭6・10)
正宗白鳥 谷崎潤一郎と佐藤春夫(「中央公論」昭7・6)
川端康成 文芸時評「春琴抄」他(「新潮」昭8・7)
舟橋聖一 谷崎潤一郎ム文学と想像力について(「行動」昭8・11)
佐藤春夫 最近の谷崎潤一郎を論ずム春琴抄を中心として(「文芸春秋」昭9・1)
勝本清一郎 谷崎潤一郎と志賀直哉(「中央公論」昭11・9)
生島遼一 谷崎潤一郎論ム日本の古典主義(「新潮」昭22・3)
吉田精一 谷崎潤一郎論ム細雪を中心として(『現代日本文学論』真光社 昭22・9)
福田恒存 芥川・谷崎の私小説論議(「人間」昭22・10)
寺田 透 長井・志賀・谷崎諸家の作風について(「改造文芸」昭23・7)
生島遼一 「細雪」問答(「中央公論」昭24・2)
日夏耿之介 細雪細評(「表現」昭24・2)
中村真一郎 「細雪」をめぐりて(「文芸」昭25・5)
寺田 透 細雪(『文学の創造と鑑賞』岩波書店 昭29・11)
水谷昭夫 「春琴抄」の文芸史的意義ム近代レアリスムの衰退とその変貌(「日本文芸研究」関西学院大学 昭30・6)
大石修平 「形」の饗宴ム谷崎潤一郎論(「日本文学」昭38・10)
三島由紀夫 谷崎朝時代の終焉(「サンデー毎日」昭40・8)
野島秀勝 異端者の幸福(「批評」昭42・10)
駒沢喜美 谷崎潤一郎論ムねわざの美学(「日本文学」昭44・5)
秦 恒平 谷崎潤一郎論(『花と風』筑摩書房 昭47・9)
三好行雄 近代文学の諸相ム谷崎潤一郎を視点として(『日本文学の近代と反近代』東京大学出版会 昭47・9)
千葉俊二 「吉野葛」論(「おべりすく」昭50・4)
竹内清己 谷崎潤一郎「お艶殺し」論ム「殺し」における艶美の醍醐味(「芸術至上主義文芸」昭51・9)
加賀乙彦 円環の時間「細雪」(『日本の長篇小説』筑摩書房 昭51・11)
笹原伸夫 谷崎潤一郎・古典回帰の位相他(『近代小説と夢』冬樹社 昭53・7)
永栄啓伸 谷崎文学における美学「母を恋ふる記」を中心に(「芸術至上主義文芸」昭53・11)
田中美代子 神になった女ム「痴人の愛」について(『天使の幾何学』出帆新社 昭55・2)
遠藤 祐 谷崎潤一郎の一側面(『大正文学論』有精堂 昭56・2)
中村 完 「痴人」の語りム潤一郎小論(同上)
山口政幸 「刺青」論(「上智大学近代文学研究」昭57・8)
赤祖父哲二 『鍵』ムコミュニケイションの回路ム(『いかに読むかム記号としての文学ム』中教出版 昭58・11)
高桑法子 『武州公秘話』論ムその位置と意味についてム(「学芸国語国文学」昭59・3)
篠田浩一郎 日記体フィクションの可能性ム谷崎の「鍵」をめぐって(「國文學」 昭59・4)
野口武彦 宝としての物神ム谷崎潤一郎の「通俗小説」ム(『近代小説の言語空間』福武書店 昭60・12)
小森陽一・野口武彦・山田有策 司会東郷克美〈シンポジウム〉方法の可能性を求めてム「痴人の愛」を読む(「日本近代文学」昭61・10)
柏木慶子 モデルが明かした『痴人の愛』の真相(「新潮45」昭61・11)
田口律男 谷崎潤一郎「痴人の愛」を読むム1920年代・都市・文学(1)(「近代文学試論」広島大学 昭62・1)
千葉俊二 『細雪』論(「解釈と鑑賞」昭62・4)
平野芳信 谷崎の〈語り〉序説ム〈語り〉の始原(『日本文芸の形象』和泉書院 昭62・5)
井上章一 『細雪』の建築家(『アート・キッチュ・ジャパン 大東亜のポストモダン』青土社 昭62・8)
野口武彦 はじめに『型』ありきム谷崎潤一郎『細雪』ム(『文化記号としての文体』ぺりかん社 昭62・9)
松本 徹 信太森(しのだもり)ムうらみ葛の葉(『夢幻往来ム異界への道』人文書院 昭62・10)
塩崎文雄 「年代記」の制覇ム『細雪』の一側面(「日本文学」昭62・12)
平野芳信 谷崎潤一郎の〈語り〉(『講座昭和文学史』第一巻 有精堂 昭63・2)
三田村雅子 二股道の果てム「吉野葛」の旅から「廬刈」「夢の浮橋」へ(「日本の文学」有精堂 昭63・5)
大久保典夫 谷崎潤一郎における〈戦後〉の意味(『現代文学史の構造』高文堂出版社 昭63・9)
小林敏一 谷崎潤一郎の露伴観(小林一郎編『日本文学の心情と理念』明治書院 昭64・1)
森 常治 コミュニケーションとしての性ム『鍵』について(『脱出技術としての批評』沖積舎 平1・6)
種村季弘 解説 巨人と侏儒(『美食倶楽部』ちくま文庫 平1・7)
曽根博義 日本語の「発見」(「昭和文学研究」平2・2)
栗林知美 隠された妻ム谷崎文学における母性思慕の深層ム(「東京女子大学日本文学」平2・3)
三枝和子 谷崎の矛盾(『恋愛小説の陥穽』青土社 平3・1)
柳沢幹夫 谷崎潤一郎の心的機構論序説ム『秘密』(「文芸研究」明治大学文学部 平4・7)
清水良典 記述の国家(『作文する小説家』筑摩書房 平5・9)
近藤信行 荷風潤一郎(1)~(28)(「図書」平6・1~平8・11)
細江 光 〈翻〉谷崎潤一郎全集逸文及び関連資料紹介(「甲南女子大学研究紀要」平6・3)
多田道太郎 日本人の美意識(『多田道太郎著作集4』筑摩書房 平6・4)
笹原伸夫 谷崎潤一郎論ムナオミ、あるいはモードの身体ム(「解釈と鑑賞」別冊 平7・1)
細江 光 恒川陽一郎の大貫雪之助宛書簡紹介(「甲南国文」平7・3)
細江 光 谷崎潤一郎全集逸文及び関連資料紹介(同上)
清水良典 空想の王国ムプロトタイプ原型としての谷崎潤一郎を読む(『超絶[エロス恋]講座』海越出版社 平7・3)
川島淳史 『細雪』論(「論輯」駒沢大学大学院 平7・5)
日高佳紀 方法としての〈大衆〉ム谷崎潤一郎・『乱菊物語』の構造ム(「成城国文学」 平8・3)
中谷元宣 谷崎潤一郎「幇間」論(「国語と教育」大阪教育大学 平8・3)
笹原伸夫 「細雪」の語りと構図(「研究紀要」日本大学文理学部人文科学研究所 平8・3)
蓮実重彦 〈美〉についてム谷崎潤一郎『疎開日記』から(『知のモラル』東京大学出版会 平8・4)
村瀬 学 「13歳」の物語史4 言いなりになるということム『少年』『小さな王国』考(「現代詩手帖」平8・5)
五味渕典嗣 谷崎潤一郎ム散文家の執念(「三田文学」平8・5)
石井和夫 谷崎における漱石への共鳴と反発ム「金色の死」前後(熊坂敦子編 『迷羊のゆくえ』翰林書房 平8・6)
安田 孝 ドラマトゥルギーの確立(「都大論究」平8・6)
榊 敦子 和声と記述の饗宴ム『卍』(『行為としての小説』新曜社 平8・6)
坪井秀人 男もすなる……ム日記のジェンダー・ポリティクス(「日本近代文学」平8・10)
畑中基紀 『細雪』のテレフォノロジー(同上)
八木恵子 「明治一代女序」と「羹」ム手紙の手法(「埼玉大学紀要」教養学部 平8・10)
前田久徳 谷崎潤一郎「少年」論(「イミタチオ」金沢近代文芸研究会 平8・11)
藤村 猛 谷崎潤一郎「春琴抄」論(「近代文学試論」広島大学 平8・12)
中村真一郎・井上ひさし・小森陽一 座談会 昭和文学史 谷崎潤一郎と芥川龍之介(「すばる」平9・1)
中村三代司 〈夫婦小説〉としての「痴人の愛」ム谷崎文学と活字メディアム(「日本近代文学」平9・5)
日高佳紀 『痴人の愛』における〈教育〉の位相(「日本文学」平9・5)
石割 透 谷崎潤一郎「白昼鬼語」(「日本文学」平9・6)
丸川哲史 『細雪』試論(「群像」平9・6)
中川成美 モダニズムはざわめく(「日本近代文学」平9・10)
田中励儀 雑誌「季刊日本橋」細目ム鏡花、荷風、潤一郎らをめぐってム(同上)
城殿智行 云ふ迄もない話ム谷崎潤一郎『吉野葛』論ム(「文学 季刊」平9・10)
蕭 幸君 〈滑稽〉の発見ム谷崎文学の一側面(同上)
安田 孝 一幕物の流行した年ム谷崎潤一郎と戯曲(鴎外研究会編『森鴎外『スバル』の時代』双文社 平9・10)
石野泉美 『蓼喰ふ虫』考ム語りにおける共同体への志向から(「日本文芸研究」関西学院大学 平9・12)
遠藤伸治 谷崎潤一郎における〈伝統への回帰〉について(『近代文学の形成と展開』和泉書院 平10・2)
藤原智子 谷崎潤一郎の“お春どん”への手紙(「婦人公論」平10・4・7)
丸川哲史 『鍵』試論ム冷戦構造と文学機械(「群像」平10・9)
日高佳紀 〈改造〉時代の学級王国ム谷崎潤一郎『小さな王国』論(「日本近代文学」平10・10)
山口政幸 『細雪』論ム下巻最終部への一考察(「専修国文」平11・1)
綾目広治 谷崎潤一郎の表現論ム『文章読本』論(『脱=文字論』日本図書センター 平11・2)
細江 光 笹沼源之介・谷崎潤一郎交流年譜(「甲南国文」平11・3)
丸川哲史 『瘋癲老人日記』試論ム冷戦構造と文学機械◆(「群像」平11・6)
城殿智行 他の声 別の汀ム谷崎潤一郎『廬刈』論(「日本文学」平11・6)
永栄啓伸 書簡にみる谷崎潤一郎ム出発期の谷崎とその周辺ム(上)(中)(「皇学館論叢」平11・6、8)
中谷元宣 谷崎潤一郎未発表書簡12通紹介ム佐藤績、森川喜助、北尾鐐之助、川田順宛(「国文学」関西大学 平11・9)
清水良典 谷崎潤一郎『饒太郎』(「三田文学」平11・11)
小林 敦 〈小説なるもの〉をめぐる物語から遠く離れた冒険ム谷崎潤一郎「吉野葛」試論(「論樹」東京都立大学 平11・12)
溝渕園子 〈「小説の筋」論争〉再読のためのノート(「方位」熊本近代文学研究会 平12・3)
細江 光 谷崎家・江沢家とブラジルム訂正と追加(「甲南国文」平12・3)
堀口淳二 谷崎潤一郎「廬刈」論ム語り手論と聴き手との間に(「国学院大学大学院文学研究科論集」平12・3)
根本美作子 谷崎潤一郎『夢の浮橋』論(「津田塾大学紀要」平12・3)
森岡卓司 「「門」を評す」と谷崎文学の理念的形成(「日本文学叢」東北大学 平12・3)
田中俊男 谷崎潤一郎『卍』論(「国語と国文学」平12・8)
中条省平 思想なきからくり芝居ム谷崎潤一郎の語りの戦略(「文学界」平12・9)
藤原智子 『蓼喰ふ虫』にみられる「西洋受容」の完了(「日本文芸研究」関西学院大学 平12・9)
鈴木登美 モダニズムと大阪の女ム谷崎潤一郎の日本語論の時空間(「文学 隔月刊」平12・9)
《付記》紙数との兼ね合いもあり、遺漏があるかと思われる。既存(研究史参照)の文献目録も、併せご覧いただきたい。
学燈社刊「別冊国文学 谷崎潤一郎必携」(2001年11月)の平野芳信稿に依る
※書名など、一部当用漢字を使用しています
監修者のご紹介
たつみ都志(武庫川女子大学教授)
文学と場所をキーワードに近代文学を解読。谷崎潤一郎の関西での足跡をつぶさに調査した実績をもとに、谷崎文学と関西の相関性にこだわって研究を続けている。転居魔の谷崎は阪神間在住21年間に13回も引っ越しているが、中でも「細雪」のモデルの家は倚松庵と名付けて移築保存に成功。現在は阪神大震災で全壊した、谷崎が自分で設計した持ち家を「鎖瀾閣」と名付けて復元運動に取り組んでいる。また谷崎文学友の会を神戸市東灘区岡本で立ち上げ、谷崎文学の顕彰に取り組んでいる。
専門領域
日本近代文学 (特に谷崎潤一郎・川端康成)
専門領域
- ・『ここですやろ谷崎はん〜谷崎潤一郎・関西の足跡』(広論社85年)
- ・『谷崎潤一郎・関西の衝撃』(和泉書院92年)他
Copyright © Net Museum Hyogo Bungakukan All Rights Reserved.