

カスパル・ネッチェル
《子供の髪を梳いている母のいる室内
(通称「母親の世話」)》1669年
アムステルダム国立美術館蔵
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この絵には様々なものが描かれています。子供の髪を梳かしている母親、従順に母のひざにもたれている子供、画面右側で鏡にむかっておかしな顔をしている子供、画面左から水差しとたらいを持って入ってこようとする女中、母親の足元に転がっている独楽、風車。これらは子供を正直で善良な人間に育てるための親の義務についての暗示が込められたものであるとされています。髪を梳かすことは、迅速な措置をとるべきであるということ、独楽は子供のしつけのためには時にはむちを使わなければならないということを示し、子供を厳格に育てる母親の義務についての教訓が込められているということです。また従順な子供といたずらな子供の対比もこの絵で表されています。
作者のカスパル・ネッチェルは優雅な人物のいる室内を描いた風俗画で人気のあった画家でした。彼の洋服の生地の質感を表現する技術は大変見事です。オランダの風俗画を眺めるとき、描かれたモチーフがそれぞれ象徴している意味内容も「謎解き」の喜びを与えてくれますが、様々な物質の質感を写実的に見事に描き分けた画家たちの技術も同時に私達の目を楽しませてくれます。 |