オランダ絵画の黄金時代−アムステルダム国立美術館展
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共和国の門閥市民と貴族
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Amsterdam

第6章共和国の門閥市民と貴族
 17世紀後半、多くの門閥市民や裕福な市民が富をたくわえ、それまで貴族にしかできなかったような生活を送れるようになりました。自分の成功と家族の地位を誇りとする裕福な市民たちは、自分たちの晴れ姿を絵画や彫刻に残そうとし、肖像画製作を画家に依頼しました。1689年にイングランドの王と女王となるオランダの総督ウィレム(ウィリアム)3世とメアリー・スチュアートは、どちらも熱心な芸術愛好家であり、2人はイギリス、オランダ双方にいくつもの宮殿を建設し、内部を彼らお気に入りの絵画や装飾品で飾りました。特にメアリー・スチュアートは白地に青の絵付けをしたデルフト陶器の熱心なコレクターであり、この時期はデルフトの陶器製造業が繁栄しました。この章では共和国の裕福な市民たちを描いた肖像画を展示します。

フランス・ハルス《醸造者にしてアムステルダム軍隊長、ニコラース・ハッセラールと思われる男の肖像》1633-35年頃

フランス・ハルス
《醸造者にしてアムステルダム軍隊長、
ニコラース・ハッセラールと
思われる男の肖像》1633-35年頃
アムステルダム国立美術館蔵

  ここに描かれているのはアムステルダムでビール醸造者として財をなしたニコラース・ハッセラールという人物であるとされています。この人物は同時にアムステルダムの軍隊長も務めた市の有力な市民でした。彼は結婚の肖像画を描かせるために、知人を介してフランス・ハルスに肖像画製作を依頼したようです。彼の2番目の妻であるサラの肖像画も展覧会に出品されています。人物は腕を椅子の背にかけ、もう一方の手を腰に当て、半分体をこちらに向けた無造作な体勢で描かれており、こちらを振り返ったほんの一瞬の表情をすばやい筆致でハルスは的確に表現しています。乱れた髪の毛の描写や、白いレースの襟の描写、手の表情なども見事で、ハルスの比類のない技術を示しています。ハルスは下描きをせずにカンバスに直接描いたとされ、その即興的な技法が人物により生き生きとした表情を与えているのです。

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