

フランス・ハルス
《醸造者にしてアムステルダム軍隊長、
ニコラース・ハッセラールと
思われる男の肖像》1633-35年頃
アムステルダム国立美術館蔵
|
 |
ここに描かれているのはアムステルダムでビール醸造者として財をなしたニコラース・ハッセラールという人物であるとされています。この人物は同時にアムステルダムの軍隊長も務めた市の有力な市民でした。彼は結婚の肖像画を描かせるために、知人を介してフランス・ハルスに肖像画製作を依頼したようです。彼の2番目の妻であるサラの肖像画も展覧会に出品されています。人物は腕を椅子の背にかけ、もう一方の手を腰に当て、半分体をこちらに向けた無造作な体勢で描かれており、こちらを振り返ったほんの一瞬の表情をすばやい筆致でハルスは的確に表現しています。乱れた髪の毛の描写や、白いレースの襟の描写、手の表情なども見事で、ハルスの比類のない技術を示しています。ハルスは下描きをせずにカンバスに直接描いたとされ、その即興的な技法が人物により生き生きとした表情を与えているのです。 |