常設展示

兵庫ゆかりの作家

  1. TOP
  2. 常設展示
  3. 兵庫ゆかりの作家
  4. 新田 次郎

にった じろう新田 次郎

  • 大正1~昭和55
  • ジャンル: 小説家
  • 出身:長野県諏訪市

PROFILE

兵庫県ゆかりの作品に『孤高の人』がある。 明治45年(1912)長野県上諏訪町(現・諏訪市)字角間新田に生まれる。ペンネームの「新田次郎」は、「新田村の次男坊」に由来する。長野県立諏訪中学校(現:諏訪清陵高校)を経て昭和5年(1930)無線電信講習所本科(現:電気通信大学)に進学。卒業後は昭和7年(1932)中央気象台(現:気象庁)に就職し、約5年間、富士山測候所で山岳気象観測に従事した。昭和18年(1943)満州国中央観象台に赴任し、新京で終戦を迎える。旧ソ連軍の捕虜となり一年あまりの抑留生活を送ったのち昭和21年(1946)10月、帰国して中央気象台に復職した。昭和30年(1955)富士山測候所時代の経験をもとに描いた小説『強力伝』で第34回直木賞を受賞。妻である藤原ていの『流れる星は生きている』がベストセラーになったことに触発されての執筆だった。昭和39年(1964)担当課長として指揮を執っていた富士山気象レーダーが完成すると、それを置きみやげに昭和41年(1966)気象庁を退職。以降、文筆活動に専念する。『孤高の人』、『アラスカ物語』、『八甲田山死の彷徨』など自然をテーマにした小説の他に、『武田信玄』などの時代小説、さらには推理小説など、幅広いジャンルの創作活動を展開した。名作『孤高の人』は兵庫県浜坂出身の登山家、加藤文太郎の人生を描いた作品。神戸市の六甲山脈や但馬の山々が物語の背景に用いられている。

《 略年譜 》

年齢事項
191206月6日、父・彦、母・りゑの次男として長野県上諏訪町(現・諏訪市)で生まれる。
19197上諏訪町立高島小学校入学。
192513県立諏訪中学校(現・諏訪清陵高校)入学。
193018上京。無線電信講習所本科(現・電気通信大学)入学。
193221無線電信講習所を卒業。中央気象台(現・気象庁)に就職。約5年間、富士山観測所の交代勤務員となり、冬の滞頂を経験。
1939275月、両角ていと結婚。この年より約4年間、中央気象台布佐出張所(千葉県)に勤務。
1943314月、満州国新京(現・長春)の中央観象台に高層気象課長として赴任。
1945328月、新京で終戦を迎える。旧ソ連軍の捕虜となり、1年余の抑留生活を送る。
19463410月、満州から帰国、中央気象台に復職。
194836アルバイトとして理科の教科書、特に気象関係の執筆をした。
1949374月、妻・ていが『流れる星は生きている』(日比谷出版社)を刊行し、ベストセラーとなる。
195139妻の著書がベストセラーとなったのに刺激され「強力伝」を「サンデー毎日第41回大衆文芸」に応募、現代の部1等に入選。丹羽文雄を訪ね、「文学者」同人となる。
195240春、東京都下吉祥寺に転居。
195543「山犬物語」が第47回「サンデー毎日」大衆文芸に入選、陽春特別号に掲載。「孤島」が「サンデー毎日」3周年記念大衆文芸懸賞小説に1等入選、中秋特別号に掲載される。9月、処女短篇集『強力伝』(朋文堂)刊行。
195644『強力伝』で第34回直木賞受賞。
1961497月、ヨーロッパの気象測器調査と取材を兼ねてヨーロッパを回る(~10月)。
1963514月、気象庁測器課長になり、富士山気象レーダー建設担当責任者となる。
196452夏、富士山頂気象レーダー建設工事を成功させ、辞職の決心をする。
196553東京で開かれた国連気象機構気象測器観測部会の国際会議に委員として出席。
196654気象庁を退職、筆1本の生活に入る。夏、2度目のヨーロッパ旅行をする。
1967556月より『新田次郎山岳小説シリーズ』全5巻(新潮社)刊行。
196957兵庫県浜坂出身の登山家加藤文太郎の生涯を描く『孤高の人』(新潮社)発表。
1973616月から約1ヶ月、『アラスカ物語』取材のためアラスカへ旅行。
1974623月、『武田信玄』ならびに一連の山岳小説に対して、第8回吉川英治文学賞を受賞。6月、『新田次郎全集』全22巻(新潮社)刊行開始。
197563夏、夫人と3度目のヨーロッパ旅行。
1976643月~4月、講演旅行でヨーロッパの主要都市を回る。
1978667月、夫人と東欧旅行。11月、『密航船水安丸』取材のためカナダへ旅行。
1979676月、『孤愁―サウダーデ』取材のためポルトガル、マカオにモラエスの取材旅行。
1980682月15日、武蔵野市吉祥寺の自宅で心筋梗塞のため急逝。
逝去地
東京都吉祥寺
兵庫県との関係
舞台(神戸市、浜坂)  『孤高の人』

代表作品

作品名刊行年版元備考
強力伝1955朋文堂
孤島1956光和堂
蒼氷1957大日本雄弁会講談社
網走路1958新潮社
ひとり旅1959秋元書房
海流1959講談社
青い失速1960講談社
絵島の日記1960講談社
永遠のためいき1960新潮社
岩壁の掟1960新潮社
風の遺産1962講談社
異人斬り1962集英社
神々の岩壁1963講談社
望郷1965文藝春秋新社
火の島1966新潮社
赤い雪崩1968新潮社
孤高の人(上・下)1969新潮社
八甲田山死の彷徨1971新潮社
赤毛の司天台1971中央公論社
栄光の岩壁(上・下)1973新潮社
アラスカ物語1974新潮社
武田信玄(1.2.3.4)1974文藝春秋
聖職の碑1976講談社
小説に書けなかった自伝1976新潮社
岩の顔1976文藝春秋
剣岳1977文藝春秋
陽炎1977毎日新聞社
アイガー北壁・気象遭難1978新潮社
アルプスの谷 アルプスの村1979新潮社

関連情報

場所説明内容
美方郡浜坂町浜坂浜坂サンビーチ松林詩碑「孤高の人」 観音山のいただきには寺があった。そこから彼は彼の故郷浜坂をしみじみと眺めおろした…

受賞歴

受賞年受賞内容受賞作品
1951「サンデー毎日」懸賞小説 創刊30周年記念100万円懸賞小説 現代小説部門1等入選「強力伝」
1955第34回直木三十五賞「強力伝」
1955第47回「サンデー毎日」大衆文芸 入選「山犬物語」
1955「サンデー毎日」懸賞小説 大衆文芸30周年記念100万円懸賞 1等入選「孤島」
1973第8回小説現代ゴールデン読者賞「春紫苑物語」
1974第8回吉川英治文学賞「武田信玄」
1979紫綬褒章

文学碑

場所 碑文
美方郡新温泉町浜坂サンビーチ松林 「孤高の人」 省略
ページの先頭へ