常設展示

兵庫ゆかりの文学

  1. TOP
  2. 常設展示
  3. 兵庫ゆかりの作家
  4. 兵庫ゆかりの文学
  5. 一月十七日暁闇

すぎやま へいいち杉山 平一

  • 大正3~平成24(1914~2012)
  • ジャンル: 詩人・映画評論家
  • 出身:福島県会津若松市

作品名

一月十七日暁闇

概要

一月十七日 暁闇
導入部もなく 伏線もなく
いきなりクライマックスがきた
往復ビンタさながら右から左から
何ものかに叩きのめされて

轟々の地鳴りに 建物 家具 食器の 崩落する
ドーン ダダーン ガチャガチャンの
大交響楽が高鳴り
ドラマは 終った

薄明のなかに うっすら現像されてきた
阪神の一変した すがた

何ということだろう
一瞬のカットバック
在ったものが消え 在るべきものが 無くなって

いまや 隠れていたものに気付かされた
水やガスが ひそかに地の中を走っていたことに
世界に開いた日本最大の窓が神戸港だったことに
日本中が神戸の靴で歩いていたことに
日本中の自動車が神戸の部品で走っていたことに

その神戸が止まった 足元を失なって
危ないかな 日本

だが神戸は支える 支えるだろう
無礼な若者 暴走の少年の
隠れていた優しい心も見えてきた
沈静と秩序を支える文化を持っていることも見えてきた

イギリスの放送は
神戸とは神の戸口の意味だと解説した
見るがよい
戸口には早くも光が見えてくる


(平7・3・2「神戸新聞」)


『杉山平一全詩集〈上〉』編集工房ノア P.664?666

杉山 平一の紹介ページに戻る

ページの先頭へ