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兵庫ゆかりの文学

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有本 芳水

ありもと ほうすい有本 芳水

  • 明治19~昭和51(1886~1976)
  • ジャンル: 詩人・歌人
  • 出身:兵庫県

作品名

播磨より

概要

播磨はわれの父の国
播磨はわれの母の国
秋風吹けば旅人は
松の名どころ数へつつ
遠き国よりたづね来ぬ

尾上は近し高砂や
ここは名だたる歌どころ
秋の日なれば赤々と
照らす夕日を背にうけて
馬に乗りしも交るかな

松の並木の木の間より
聳えて見ゆる書写の山
番の御寺のことなれば
人は西より東より
鉦鳴らしつつ詣で来ぬ

赤き夕日のてるところ
昔なつかしふる里に
われも旅よりかへり来て
小川のほとりとめ来れば
野は秋草にみだれたり

水色しろき揖保川の
堤にひくく日は落ちて
牛ひきかへる少女子の
淋しき唄の節にすら
あつき涙も流るるよ

出船入船数しげく
飾磨はふるき港にて
南に近く四国路や
室津坂越も遠からず
今も絵巻にのこるかな

船つく浜の片びさし
わが家の軒の白かべに
蜻蛉みだれてとぶ見れば
幼き頃も思はれて
海の入日のかなしけれ

夕となれば大空を
北の国より海越えて
南にかへる雁の声
今宵泊りの船人は
いかに淋しく聞くらむか

いづくに急ぐ旅人よ
船路の夢は寂しくば
せめて今宵は泊れかし
飾磨はふるき港にて
播磨はわれの国なれば

『兵庫県文学読本 近代篇』のじぎく文庫 173?174P

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