シンプルな線描で林檎のかたちを残す、つまり描かないことで描いた奥田善巳のドローイング。
肉厚の薔薇と渦巻く枝が、どこか別世界へと誘ってくれるかのような北辻󠄀良央のオブジェ。
ともに美術のオーソドックスなモチーフを扱った70年代と80年代の対比的な作例から、展覧会は始まります。
出品作家:奥田善巳、北辻󠄀良央80年代に入ると現代美術の領域では、それまでの禁欲的な傾向から一転して、豊かな色彩やかたちによる表現が息を吹き返します。作家がそれぞれに造形言語を探るなかで、変形キャンバスやレリーフ、さらにはイラスト的表現など、従来の絵画や彫刻という枠組みを超えた表現が続々とあらわれました。また、美術や美術館の枠組みさえ飛び越えるかのような破天荒な作家たちも旺盛に活動していました。
出品作家:朝比奈逸人、飯田三代、北山善夫、栗岡孝於、辰野登恵子、中谷昭雄、福嶋敬恭、堀尾貞治*、榎忠*ほか *記録写真による展示1983~84年頃になると、当時の若手作家たちが京阪神の画廊などでみずみずしい作品を精力的に発表するようになり、「関西ニューウェーブ」として注目を集めます。新たな発表のかたちとして隆盛したのが、画廊空間を「私」の世界で埋めつくすかのようなインスタレーションです。展示空間にあわせた表現のため再現できる作品は限られますが、いくつかの再現と、資料展示により紹介します。
出品作家:石原友明、杉山知子、藤浩志、松井智惠ほか80年代後半は、各作家がインスタレーションから絵画、彫刻、版画など各自の領域に戻るとともに、表現の内容を深めた時期と言えます。その際、起点になったのは「私」のイメージなり身体なり物語であり、それぞれのリアリティでした。
出品作家: 池垣タダヒコ、河合(田中)美和、川島慶樹、小西祐司、中西圭子、中西學、濱田弘明、原田要、松井紫朗、松尾直樹、三村逸子、森村泰昌、安井寿磨子、山崎亨、吉原英里ほか80年代は「ミーイズム」の時代とも言われますが、それぞれが「私」のリアリティを探求してゆくなら、その先には必ずや「私」が生きる世界や芸術の普遍的な問題―たとえば生と死―が待ち受けているでしょう。80年代終盤の生命力あふれる大作や、ユニット、共同制作による作品を展示します。
出品作家: 赤松玉女+森村泰昌、KOSUGI+ANDO(小杉美穂子+安藤泰彦)、TRIO(福田新之助、浜本隆司、中澤テルユキ)、田嶋悦子、中原浩大、山部泰司ほか