1 領域

境界は、さまざまな領域をつくります。国という大きな場所はもちろんのこと、もっと狭い地域や部屋、そして、物理的な場所のみならず、心理的なテリトリーまで、それぞれの領域は、境界によって定義され、ときには、守られていることもあるでしょう。まず、はじめの章では、領域というものが描かれた作品をご紹介します。


小松益喜《元居留地風景》1939年 油彩・布

2 線をひく

作家は、キャンバスや紙の上にさまざまな線をひいて絵を描きます。キャンバスにひかれた1本の線は、境界のように画面を分割することもあるでしょう。本章では、線によって区切られ、構成された作品を展示します。


中辻悦子《内外》1983年 アクリル・布 山村コレクション

3 東/西

作家たちは表現を通して、さまざまな境界を越えていきます。明治維新以降に洋画を志した日本人画家たちは、西洋の技法や主題を学びました。そして、現在活躍する作家もまた、東洋的な要素と西洋的なものを融合させた表現を展開しています。

 
左:森村泰昌《セルフポートレート女優/ビビアン・リーとしての私1》1996年 カラー写真
右:斎藤与里《春》1918年

4 生/死

生と死の間には、絶対的な境界線が存在しています。家族や親しい友人を失うという耐え難い体験から制作へと向かう作家もいます。そして、生の輝きや巡る生と死を表現することで鎮魂の祈りが込められた作品をご紹介します。


北村四海《橘媛》1915年 ブロンズ

5 他者/自己

ときには絶望的に思えるほどの他者との違いを埋めることはできるのでしょうか。自己と他者の姿に改めて出会い見つめ直す、その端緒となる作品を展示します。人との差異を発見することで、自身の姿が見えてくることがあるでしょう。


舟越桂《消えない水滴》1986年 彩色、大理石、楠木

6 現実/非現実

意識と無意識の狭間で、夢か現実かわからない世界を描いたシュルレアリスムの作家たちをはじめ、自然の描写の中に現れた不思議な光景など、境界線の曖昧な世界が描かれた作品をご紹介します。


浅原清隆《敗北》1935年

以下の各展示室でも、「境界」と関連するテーマを設けて展示を構成します

小磯良平記念室

神戸出身で、人物画の名手として知られる小磯良平(1903-1988)の画業を顕彰する記念室です。今期は「 部屋(アトリエ)のうちそと」というテーマのもと、人物画の代表作はもちろん、静物画にも焦点をあて、計18点を展示します。

金山平三記念室

神戸出身の洋画家、金山平三(1883-1964)の記念室では、「境界を歩く」と題し、風景画で知られる金山が国内外の各地を訪れ描いた油絵17点と、制作過程を伝える写真やスケッチブックなどの関連資料を紹介します。

展示室5(彫刻展示室)

外光の差し込む展示室5には、近現代の彫刻・立体を展示しています。今期は「ウラとオモテ」、「もうひとつの世界」という2つのコーナーを設け、ロダンから2010年代の作例まで、ヴァラエティにとんだ27点を出品します。