道ゆきぶり
- 作者:今川了俊
内容
磯際近く行きめぐる海人(あま)の小舟見ゆ。かの新発意(しぼち)が、明石のすみ所にさしわたしけん浦づたひも、ここなりけむかし。山もとの海づらをはるばると行くほどに、大蔵谷といふところあり。松の木だち白州の色までも心とどまりぬべきを、名のことごとしげなるぞ心うきや。あまさへたび人の舟どもうかがふなる。白波のよりくる舟などしげしなどいひおそりて、あはたゞしくいそぎ過るなるべし。うたて、などしもかかるおもしろき所に、かやうのさはりの侍るらん。明石の浦は、ことに白浜の色もけぢめみえたる心地して、雪を敷けらんやうなるうへに、みどりの松の年ふかくて、浜風になびきなれたる枝に手向草うちしげりつゝ、村々なみたてり。岡辺の家居も所々に見えたり。
場所
明石 (あかし)
現在地
兵庫県明石市