栄花物語
- 巻号:巻五
- 作者:未詳
内容
帥殿は播磨におはすとて、「ここは明石となん申」と云を聞しめして、
物思心の闇し暗ければ明石の浦もかひなかりけり」「いでや、物のおぼゆるにや」と、我御心にもにくゝおぼさるべし。「中納言ことかたへおはすらむを、などか、同方にだにあらましかば、何事もよからまし」と、あやにくなる世を心憂くおぼされて、「白浪はたてど衣に重ならず明石も須磨もおのが浦浦」といふ古歌をかへさせ給へるなるべし。
かたがたに別るゝ身にも似たるかな明石も須磨もおのが浦浦」とぞおぼされける。
場所
明石 (あかし)
現在地
兵庫県明石市。