徒然草
- 巻号:第六十九段
- 作者:吉田兼好
内容
書写の上人は、法華読誦(どくじゆ)の功積りて、六根浄にかなへる人なりけり。旅の仮屋に立入られけるに、豆の殻(から)を焚きて豆を煮ける音のつぶつぶと鳴るを聞き給ければ「疎(うと)からぬおのれらしも、恨(うらめ)しく我を煮て、辛き目を見するものかな」と言ひけり。焚(た)かるゝ豆殻のはらはらと鳴る音は、「我心よりすることかは。焼かるゝはいかばかり堪へがたけれども力なき事なり。かくな恨み給ひそ」とぞ聞えける。
場所
書写 (しょしゃのやま)
現在地
姫路市書写山