じきはら ひろみち直原 弘道
- 昭和5~ (1930~)
- ジャンル: 詩人
- 出身:名古屋市
作品名
但馬海岸
概要
日がぐんと短くなった
街まで運んでくれる
最後の列車に乗りこんだときは
すでにとっぷりと暮れ
まだ暖房のない車室で
さっそく差し入れの地酒の封を切る
あれは余部のあたりか
沖に一面の灯がともり
あまりの見事さにみとれていると
途中まで同行する友が
沖の大きい灯がスルメ烏賊
手前の小さい灯がシロ烏賊の
釣舟だと教えてくれる
漁さえあれば
明け方まで沖にいるので
入江の浜によりそっている
家々は暗く静まりかえっている
沖の灯がかすかにゆれている
この夜 海もおだやかなのか
海中に射しこまれる光を慕って
あつまってくる烏賊たちよ
なんとなく街の灯めがけて
帰っていくわたしの深い疲れよ
『日本現代詩文庫・第二期 ? 直原弘道詩集』 土曜美術社出版販売 61P