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兵庫ゆかりの文学

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河井 酔茗

かわい すいめい河井 酔茗

  • 明治7~昭和40(1874~1965)
  • ジャンル: 詩人
  • 出身:大阪府

作品名

ちぬの海

概要

かへりみすれば大伴の
高師の浜は遠にして
月に湧くなる八百潮の
淡路をはてかちぬの海

宇奈比男とあひきそひ
妻どひしけむますらをの
はやち吹捲く潮騒に
船のりしけむ渚かも

行手も知らに雲のはて
天飛ぶ雁のさかりゆく
声にまぎれて櫓の音の
恋に聞く夜やつらかりし

ふぢえの浦に鱸釣る
蜑の子ならでうつゆふの
こもりて長けし津の国の
蘆屋をとめのおもかげや

長き黒髪たがねつつ
さしも小櫛のみだれざる
気高きふりの夢に入りて
うつたへにこそ恋ひわたれ

怪しうつるもののけに
今と昔をたがへけむ
恋つつあらむすべなさに
現ともなく船に乗る

清水湧くてふ和泉路の
ちぬ男とは生れしに
見まくほりするくはし女の
蘆屋の里に今もあらむか

『兵庫県文学読本 近代篇』のじぎく文庫 43?44P

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