古今著聞集
- 巻号:釈教第二 行基菩薩昆陽寺を建立の事
- 作者:橘成季(たちばなのなりすえ)編
内容
行基、諸(もろもろ)の病人をたすけんがために、有馬の温泉にむかひ給に、武庫山の中に一人の病者臥たり。上人あはれみを垂て問給ふやう、「汝何によりてか此山の中にふしたる」。病者答曰、「病身を助んがために温泉に向ひ侍る。筋力絶尽て、前途達しがたくして山中にとゞまれる間、粮食あたふるものなくして、漸(やうやう)日数を送れり。願は上人あはれみを垂て、身命をたすけ給へ」と申す。
場所
武庫の山 (むこのやま)
現在地
神戸市灘区・東灘区の背後にある武庫山(六甲山)のこと