2010年度コレクション展2 2010年7月17日(土) − 11月7日(日)


特集1
新収蔵品から見た時代
1歴史の新収蔵
 今回の新収蔵品展の中でも歴史的な1点です。ヴィクトール・パリモフ(1888-1929)は、ロシア、サマーラ生まれ。ロシア未来派の女性画家の一人。キエフ美術学校の教授も務めました。1921年に「モスクワ未来派の画家ヴィクトル・パリモフの展覧会」を東京で開催しています。このころ神戸の蒐集家が入手した作品と考えられます。ロシア未来派の流れをくむ画風であり、テーマも当時を象徴する労働者となっています。
パリモフ・ヴィクトール《作品(労働者らは工場から帰る)》1920年ころ

 セメントを素材とした彫刻作品を手がけた笠置季男の作品を紹介。戦争を彫刻で表現した珍しい作品です。
同時代の作品とともに紹介します。
第30回二科展(1943年)の出品作品。時局を反映した航空兵を主題とした作品で、人物を大胆にとらえた戦時中の希少な作品です。
笠置季男《若人よ空へ征け》1943年

2現代美術の時代
 時代の移り変わりとともに美術の表現方法も多様化してきます。今回新たに収蔵した作品は、1950年代から現在にいたる作品であり、油彩画だけではありません。写真や映像の作品を見ながら、時代と表現とは何かを考えて見ます。
金山平三賞受賞作家(1978年)の一人。小西保文が体験に基づく内面的な「眠り」を テーマにした時代の作品です。「生きる悲しみ」を感じさせるこの作品は、彼にとって二紀会会員となった記念碑の作品といえます。
小西保文《睡魔》1970年

 藤本由紀夫の代表作が新収蔵となりました。椅子に座ってパイプを耳に当てるだけでふだん気づかない環境に迷いこませてくれます。館内の2階のスペースに設置された作品に是非座ってみてください。
藤本由紀夫《Ears with chair》1990/2010年

 ヴィトリーヌ(フランス語ショーウィンドウを意味する言葉)と称される山口勝弘の初期のシリーズの1点です。ガラスに描かれた絵を偏光ガラスを通して見る仕掛けがあり、見る者の視点の移動によって画像は変化していきます。
山口勝弘《ヴィトリーヌ「静かな街」》1956年

 「現代美術から宇宙を見る」という趣きのコーナーです。
美術家は、しばしばはるか遠くに思いを馳せ、宇宙をテーマとした作品を生み出します。限りない世界への探求に注目します。


特集2
ブラジル日系人画家の系譜

 2008年のブラジル移民100周年を機会にサンパウロ在住の日系人コレクター、リカルド・タケシ・赤川氏より寄贈を受けた作品を紹介します。100年の歴史の移民者たちの中で絵画を志した日系人たちの作品からは、その生活、思考が伝わってきます。日系人画家のまとまったコレクションとしては、サンパウロ州立美術館にせまる質と数で、これまで日本国内で紹介されていない画家たちを含めその動向を紹介します。

 赤川コレクションとは? 
サンパウロ在住の日系二世リカルド・タケシ・赤川氏は、旅行会社ツニブラトラベル(TUNIBRA TRAVEL CO.,LTD.)の社長です。美術品コレクターとしても著名でブラジル人作家をはじめ世界の現代美術の最先端の作品がコレクションされています。
2008年に神戸旧移民センターを訪れた赤川氏は、かつて祖父が出港した神戸の地に彼の所有するブラジル日系人画家の作品を寄贈する決意をされました。現在日本で働く日系ブラジル人たちに、先人たちの業績を広く知ってもらうことを願って、兵庫県立美術館に65点の作品が寄贈されました。本展では、それらから45点を紹介します。
11歳で家族とともに移住した半田知雄は、日系人の中で初めて芸術活動に専念したひとりです。農具を片手に天を見上げる男性や授乳する女性の姿には、単なる記録ではない象徴的な意味が込められています。
半田知雄《農民》1956年

 ブラジル抽象絵画界の第一人者。パリ滞在の後60年代に手がけた表現主義的作品の一点です。抽象と具象、客観と主観の壁を取り払おうとする表現は、ブラジルの美術に大きな影響を与えています。
フラビオ・シロー《黙示録》1966年
  彫刻室 海外の近現代彫刻/安藤忠雄コーナー
 オーギュスト・ロダンをはじめとする海外の巨匠による彫刻を展示。また、当館設計家の安藤忠雄による震災復興プロジェクトなどを紹介するコーナーも併設します。
安藤忠雄コーナーのページへ


特集2
美術の中のかたち−手で見る造形 金氏 徹平 展 Ghost in the Museum

 今年は、気鋭の作家金氏徹平を迎え、作品のかたちだけではなく、作品の質感、作品の成り立ちを考える展示を試みます。

小磯良平記念室
 神戸生まれの小磯良平(1903-1988)は、近代洋画を代表する巨匠のひとりです。的確なデッサンとやわらかな色づかいの、気品あふれる人物画で知られています。ハイカラなセンスあふれる画風は、いかにも神戸の町にふさわしいものです。今回は、小磯作品の中ではめずらしい風景画をまとめて展示します。(出品点数 約30点)
小磯良平《T嬢の像》1926年

金山平三記念室
 神戸生まれの金山平三(1883−1964)は、風景画の名手として知られる近代洋画の巨匠です。信州や東北をはじめ日本各地を写生に訪れ、落ちついた色づかいと巧みな筆さばきで、情感ゆたかに風景を描き出しました。今回の展示では、寄贈を受けた小品を中心に、金山の小油彩作品の魅力に注目します。(出品点数 約30点)
金山平三は、海辺の風景を多く描いています。現在の山形県鶴岡市の三瀬あるいはその周辺の漁港で描いた作品と推測される。人の気配を感じる小品(4号)です。本展では、現場で写生したと思われる風景画の小品を集めました。金山の豊かな描写力をご覧ください。
金山平三《苫屋》制作年不詳

日本画と映像
 2階展示室6では、寄贈を受けた西山翠嶂(前期展示:9月12日まで)、村上華岳(後期展示:9月14日から)の日本画作品とともに、2007年のベネチアビエンナーレに出品された束芋の映像作品を紹介します。

 ベネチアビエンナーレの企画展に招待作家として出品された作品。Doll Houseに見立てた作品のタイトルDolefullhouseは、悲しみに沈みこんだ家という意味です。6分30秒の映像は、ドールハウスを組み立てていく途上に水が流れてきたり、たこが絡まってつぶしていくなどの展開で見る人を引き込んでいきます。
※他館情報:国立国際美術館では、束芋の新作による個展が開催されています。
 「束芋:断面の世代展」、2010年7月10日〜9月12日 国立国際美術館
束芋《dolefullhouse》2007年

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兵庫県立美術館 小企画 美術の中のかたち−金氏徹平展
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