写真家 中山岩太「私は美しいものが好きだ。」レトロ・モダン 神戸 2010年4月17日(土)−5月30日(日)



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あの場所は今!?(解答編その3)
2010/05/28
第3回の解答編です。

神戸の風景画像その1
2010(平成22)年4月26日撮影。

旧居留地、前町通と明石町筋が合流する地点から北に明石町筋を向いた構図となります。
通りの右側に、4連のアーチが印象的なクラシカルな建物があります。これが決め手となりました。当時の神戸海上火災保険株式会社の建物、竣工は1935(昭和10)年。今でも現役の建物で、おなじみ「ニッセイ」の看板が掲示されています。

神戸の風景画像その2
2010(平成22)年4月26日撮影。

鯉川筋を南に下り、大丸神戸店も南京町の長安門も通り過ぎると、やがて西側に栄町通が分かれるT字路にさしかかります。そのT字路の東側から栄町通を西に眺めると、栄町通北と鯉川筋東の角に面したクラシックな建物が目の前に現れます。3連アーチが印象的な建物をよく見れば・・・あっ!中山の作品と同じ光景が!

今はしゃれたお店がテナントに入るこのビルは、当時の神戸住友ビルヂング。この角で当時神戸市電は神戸大丸から南に曲がりわずかに鯉川筋を南下した後、このT字路ですぐに栄町通を西に向かうように敷設され、中山の作品でも市電のカーブする架線がはっきりと確認できます。そして構図を大胆にさえぎる当時の車がとってもオシャレ。

神戸の風景画像その3
2010(平成22)年4月26日撮影。

中山の作品の奥の方で、とんがり屋根を見せている建物は、当時のオリエンタルホテル。近頃リニューアルオープンされたオリエンタルホテルとは場所が異なり、今の商船三井ビルの東側にこの建物が建っていました。

これを基準にしますと、旧居留地、中町通と播磨町筋が交差する地点から南に播磨町筋を望む構図となり、これが中山の作品の場所と同定ができます。
オリエンタルホテルのあった場所には、現代的なビルが建ち、また大丸神戸店の立体駐車場がそびえるなど、中山の時代とかなり様子が異なるのが見て取れます。

神戸の風景画像その4
2010(平成22)年4月26日撮影。

中山の作品で「CANADIAN PACIFIC」と大書きされた看板の奥が当時のオリエンタルホテル、そのさらに奥が現存する商船三井ビルの北側、ということから、中山が撮影した場所が、前町通と播磨町筋との合流地点から少し前町通東寄りの地点を基準に、前町通を西に望む構図であることがわかります。辛うじて商船三井ビル北側が現存するので、中山の時代との比較は可能ですが、川西英も小松益喜も作品として遺した「CANADIAN PACIFIC」は、その姿をまったくとどめていません。都市はこのように時間をかけて変貌を遂げていくのでしょうか。

神戸の風景画像その5
2010(平成22)年4月26日撮影。

最後に山手の風景から。中山の作品にうっすらと姿を見せる教会の鐘楼らしき建物が決め手となりました。
これは中山手カトリック教会で、そこから少し北側に上がった地点から南を望むとこの構図が得られます。道の角度などにわずかに面影はあるといえ、中山の作品に見られた異国風の路地、といったエキゾチックな風情は払拭されています。よくもわるくも神戸は近代化・画一化された、ということでしょうか・・・。

中山の時代と今を生きる私たちの時代とを比べるまたとない機会となった今回の展覧会、まだご覧でない皆さま、どうぞご自身の目でご確認いただければ、担当者冥利につきます。どうぞ美術館にお越しください。

なお今回の「あの場所は今!?」と先月開催した「神戸街あるき」につきましては、ひょうごヘリテージ機構神戸地区にご所属の中尾嘉孝(なかお・よしたか)氏の多大なるご協力とご教示により実現することができました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

あの場所は今!?(出題編その3)
2010/05/27
恒例(?)の「あの場所は今!?」。ご好評につき(?)第3回に突入します。

今回は出血大サービスの5点の作品を出題します。浜手が4点と山手が1点。それぞれ副題に"北野"と"居留地"とありますが、実は担当者自身が皆目見当がつかなかった場所ばかりです。しかし先月開催された「神戸街あるき」の下見の際に詳細がついに明らかに・・・!

とはいえ神戸に在住の皆さんはすでにご存知の場所ばかりかも知れないのですが、いずれにしましても、当時と現在の比較をお楽しみいただくきっかけとなれば幸いです。

中山岩太の作品の画像その1
中山岩太《神戸風景(居留地)》 1939年頃(出品no.2-65)

中山岩太の作品の画像その2
中山岩太《神戸風景(居留地)》 1939年頃(出品no.2-66)

中山岩太の作品の画像その3
中山岩太《神戸風景(居留地)》 1939年頃(出品no.2-71)

中山岩太の作品の画像その4
中山岩太《神戸風景(居留地)》 1939年頃(出品no.2-70)

中山岩太の作品の画像その5
中山岩太《神戸風景(北野)》 1939年頃(出品no.2-80)


あの場所は今!?(解答編その2)
2010/05/26
25日に更新しました「あの場所は今!?(出題編その2)」の、解答と申しますか現状の写真をご紹介します。

神戸の風景画像その1
2010(平成22)年4月26日撮影。

中山の作品の副題にも明記されているのでおわかりの方も多かったと思いますが、名勝 布引の滝の雄滝です。この場所は山陽新幹線の新神戸駅のほぼ北側にあたり、整備された登山道を15分ほど歩けばたどり着くことができます。先月「芸術の館 友の会」の主催で開催した「神戸街あるき」でもここを訪れ、4月30日付のこの「お知らせ」でもお伝えしました。天気が良ければぜひ訪れていただきたい場所でもあります。

ちなみに中山の時代と比べると、滝の流れはほとんど変わりませんが、展望テラス(とでもいえば良いのか、滝を眺める欄干のある場所)が少し異なるのと、滝壺の様子も少し異なるのがご確認いただけますでしょうか。また中山の作品では点景として僧侶がいるところに、現代っぽくカップルがいるのも味わい深いところです。

神戸の風景画像その2
2010(平成22)年4月26日撮影。

元町の大丸神戸店東側を望む、朝日会館北側の歩道からの眺めです。中山の作品では、当時「東洋一」と称された神戸市電が行き来していますが、現在ではこのほぼ真下あたりを地下鉄海岸線が行き来しています。大丸の方に向かって少し西に行くと、その地下鉄の「旧居留地・大丸前」駅に着くことができます。

神戸の風景画像その3
2010(平成22)年4月26日撮影。

中山の写真とは撮影された時間帯が異なりますが、場所としては、現在の三宮神社北側から、大丸神戸店の東側を仰ぎ見る構図となります。

ここで疑問なのですが、中山の作品でもモチーフとして重要なこの狛犬、当時は西を向いていたのが現在では北を向いています。狛犬そのものは中山の時代のものと同じだと見受けられますが、なぜ方向が変わったのか、そもそも同じ狛犬なのか?

当時の三宮神社は、今のこぢんまりとした様子とは違って、もっと境内が広く取られていたと聞いています。途中で戦争もあったり、あるいは都市計画の流れの中で区画整理がされたのかも知れず、いろいろな想像をかき立ててくれます。

あと会期も残り少ない中、担当者の気力が続くまでこの企画、あと1回でも続けていければと思っています。どうぞお楽しみに。あっ、展覧会へのお越しもお忘れなく。

あの場所は今!?(出題編その2)
2010/05/25
しばらくお待たせしました。中山が撮影した「神戸風景」の場所が今どうなっているのかをたどる「あの場所は今!?」

前回と同じく、まずは「出題編」として、中山の撮影した「神戸風景」の図版をご紹介し、その後「解答編」としてそれらの現状の写真をご紹介する、といったかたちで進めます。
さてわかりやすいところもわかりにくいところも混在しているとは思いますが、このお知らせをご覧の皆さんは、どれだけおわかりになりますでしょうか?

中山岩太の作品の画像その1
中山岩太《神戸風景(布引の滝)》 1939年頃(出品no.2-84)

中山岩太の作品の画像その2
中山岩太《神戸風景(朝日会館)》 1939年頃(出品no.2-10)

中山岩太の作品の画像その3
中山岩太《神戸風景(大丸前・夜景)》 1939年頃(出品no.2-9)


第3回連続レクチャーを開催しました。
2010/05/23
「写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』」関連事業の連続レクチャー「"レトロ・モダン 神戸"を語る」の最終回となる第3回を本日、当館レクチャールームで開催しました。

今回の演題は「懐かしの絵葉書〜モダン神戸の原像」。講師は絵葉書研究家の石戸信也氏です。石戸氏は現役の高等学校教諭を勤めるかたわら、数千点にも及ぶ絵葉書類を収集する個人コレクターでもあり、今回の展覧会でも第2部に多くの資料類をご出品いただいています。またご自身のコレクションをもとに著書も多く、学会などへの講演も数多くなさっています。

非常に内容の詰まったレジュメが用意され、レクチャーがはじまってしばらくして映されたスライドには、時代考証に基づく明治期の服装に身を包んだ石戸氏が投影され、いやがおうにも期待は高まります。レクチャーの内容は、「絵葉書」というものがそれぞれの時代の出来事などを伝えるメディアとしての役割も果たしていたこと、そこに扱われるモチーフの多種多様なことなどを挙げ、膨大な量のスライドが次々に映し出される中で話は進みます。

そして最後の20分は、やはりご所蔵のSP盤レコードから、当時に神戸をモチーフにして作曲された「みなと音頭」や「神戸音頭」などがレクチャールーム内に流れ、約70名の参加者の皆さんは、目から耳から、レトロでモダンな神戸の情景を堪能することができました。

当館の特別展関連の講演会などは、通常250名入ることのできるミュージアムホールで行うことが多いのですが、今回は規模を若干縮小しても数を多く開催することに重きを置くこととしました。そのため、会場自体は少し小さいレクチャールームとなりましたが、かえってこれが参加しやすさにもつながったのか、3回とも参加される熱心な方もいらっしゃったりと、地元ならではの展覧会らしい関連事業となったのではないかな、と思っています。

早いもので展覧会の会期も残り少なくなりましたが、今月30日(日)まで展覧会は引き続き開催していますので、まだご覧になっていない方は、ぜひお見逃しないよう、よろしくお願いいたします。

レクチャーの画像その1
レクチャー中の石戸氏。

レクチャーの画像その2
当日は膨大な量のスライドが投影されました。


あの場所は今!?(解答編その1)
2010/05/18
おとといの回で「あの場所は今!?(出題編その1)」をご紹介しましたが、その解答編、と申しますか、現状の写真を今回ご紹介します。

三宮の風景画像その1
2010(平成22)年5月13日撮影。

まずひとつめは、現在のJR三ノ宮駅西側、フラワーロードの高架下から南を向いたところです。正面の建物は神戸そごう。中山の写真の建物とは似ても似つかないように見えますが、実は同じ建物です。建造当時の装飾の表にパネルを貼りつけているので、現代的な建物に感じられますが、1933年当時の建物が現在もなお使われています。
中山の写真では、建物西側に当時の阪神電車のキャッチフレーズ「またずにのれる」が掲示されています。かわって現代では、大阪、姫路、奈良に行けることがアピールされています。

三宮の風景画像その2
2010(平成22)年5月13日撮影。

続いてはJR三ノ宮駅北口を望む阪急の駅ビル、通称「阪急会館」の映画案内に見入る人々を撮影した中山の作品が、現在ではその阪急会館も過去のものとなり、今風の赤い建物が同じ場所に建っています。しかし地形などがそんなに様変わりしていないせいか、中山の写真とそれほど違っているようにも感じられません。

このようなかたちで、展覧会の会期終了まで、数回ご紹介していければと考えております。どうぞお楽しみに。


『写真家 中山岩太展』はいろいろなところで取り上げられています!
2010/05/18
みなさまにご好評いただいている『写真家 中山岩太展』。
Webサイトでもたくさん取り上げていただいてます。
毎日新聞編集局次長城島徹氏は、毎日新聞サイトWebの「毎日JP 関西再度STORY」で、中山岩太の夫人正子さんについてなど、展覧会に関して詳細に紹介していただいています。
また、批評紙「Splitterecho/シュプリッターエコー」Web版from神戸では、「中山岩太展―異域への熱病―」と題して山本忠勝氏が展示作品「神戸風景」「福助足袋」について取り上げてくださっています。
どうぞみなさま、いろいろな方のコラムをお読みいただき、展覧会へもお越しください。
『写真家 中山岩太展』の会期は5月30(日)までです。
お早めにご来館ください!

・毎日新聞Webサイト「毎日JP 関西再度STORY」 城島徹氏のコラム
(〈その13〉新興写真家・中山岩太:2010年4月28日)はこちら


・批評紙「Splitterecho/シュプリッターエコー」Web版from神戸
 「中山岩太展―異域への熱病―」山本忠勝氏のコラムはこちら


あの場所は今!?(出題編その1)
2010/05/16
「写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』」の第2部「レトロ・モダン 神戸−中山岩太たちが遺した戦前の神戸」では、中山が撮影したいわゆる「神戸風景」と称するシリーズの写真作品を展示しています。今からおよそ70年ほど前に撮影された当時の神戸の風景に、来館者の皆さまの反応も、「あぁ懐かしい」と感じられる方もいらっしゃる一方、「昔の神戸ってこんな感じやったんやぁ」と新たな発見をされる方もいらっしゃる、といった感じです。

さて当時の写真をご覧になられた方が一斉に思われるのは、「ここって今どうなっているんやろ?」ということではないでしょうか。
 作品の中には、現存する建物が写っているものもあり、あるいは非常にわかりやすい場所が写っているため、すぐに場所を確認できるものもあるのですが、その一方で地元の方もなかなか見当がつかない場所の作品もあったりします。

そこで以前の「神戸まちあるき」の回でお知らせしたように、このたびは「あの場所は今!?」と称して、そうした中山の撮影した神戸の風景が今どうなっているのかを、数回に分けてご紹介したいと思います。

まずは「出題編」として、中山の撮影した「神戸風景」の図版をご紹介し、その後「解答編」としてそれらの現状の写真をご紹介する、といったかたちにしたいと思います。

まずはその記念すべき第1回。中山の写真をご紹介します。地名からも、比較的わかりやすい場所かと思います。

中山岩太の作品の画像その1
中山岩太《神戸風景(三宮)》 1939年頃(出品no.2-81)

中山岩太の作品の画像その2
中山岩太《神戸風景(三宮)》 1939年頃(出品no.2-83)


5月14日付の神戸新聞朝刊『正平調』で、『写真家 中山岩太展』について掲載されました!
2010/05/15
5月14日付の神戸新聞朝刊『正平調』では、 5月14〜16日開催中の「神戸まつり」のルーツの1つである「みなとの祭」を 撮影した写真を、兵庫県立美術館で開催中の展覧会に展示していると取り上げていただきました。
「神戸まつり」を楽しまれた後、1933年「第1回神戸みなとの祭」の写真をご覧いただき、昔に思いをはせるというのはいかがでしょうか。

『写真家 中山岩太展』の第2部「レトロ・モダン神戸」に出品されている、神戸の画家 川西英の木版画「瓦せんべい屋」(菊水総本店)の「瓦せんべい」を、当館ミュージアムショップで販売しています!
2010/05/13
今年1月に閉店し、3月に営業を再開して話題となった「瓦せんべい」で有名な菊水総本店。
『写真家 中山岩太展』第2部「レトロ・モダン神戸」で展示している神戸の画家、川西英(1894-1965)の木版画「神戸百景」の中の「瓦せんべい屋」(1936年)は、この菊水総本店を描いたものです。
ぜひみなさま、展覧会をご鑑賞いただくとともに、当館ミュージアムショップで販売中の菊水総本店創業当時からある「菊水まんじゅう」や「瓦せんべい」、「やわらか焼」をご賞味ください!!

販売している瓦せんべいの画像
珍しい特大瓦せんべいもあります

掲載された新聞記事の画像
新聞にも掲載されました

第2回連続レクチャーを開催しました。
2010/05/09
「写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』」関連事業の連続レクチャー「"レトロ・モダン 神戸"を語る」の第2回を本日、当館レクチャールームで開催しました。

今回の演題は「変貌する都市風景1930's〜50's−昭和期神戸の光と影」。講師は神戸大学大学院准教授の建築史家、梅宮弘光氏です。梅宮氏は今から13年前に当館の前身となる県立近代美術館ほか計4館で開催された「阪神間モダニズム」展の共同研究者のおひとりで、また昨年当館で開催された「日本の表現主義」展でも展覧会カタログに寄稿されるなど、非常に幅広く活躍されている研究者です。公共建築物全般に造詣が深く、また現存建築のみならず、実現されなかった建築計画などにも強く関心を持ち続けていらっしゃいます。

今回は、勤務先の神戸大学で発見された、1936(昭和11)年当時に撮影された神戸市街地の航空写真をもとに、須磨から灘までの省線(当時の鉄道省管轄の鉄道、現在のJR)の高架線をなぞるようにたどりながら解説する、といった形式で進められました。また当時の写真雑誌などを適宜取り上げ、そこにあらわされた「都市美」と「都市醜」の比較といった興味深い内容にも言及されていました。

スライドで映し出された航空写真は、須磨の海岸から現在の須磨区、長田区あたりの区画された街並みをはっきりと示し、また湾岸の工場地帯とその近辺の住宅地との対照、あるいは元町・三宮あたりでは省線をほぼ境にして北側の未区画地帯と、南側の旧居留地に代表される碁盤の目状の街並みとの対照を明らかにしていました。地上から見るのとはまた異なる都市の視点、見方に、約70名の参加者の皆さんも熱心に講義を聞き、またスライドに見入っていました。

改めて「神戸」という街の多様性に気づく機会をご提供する連続レクチャーも、残り1回となりました。最終回は23日(日)の14時から開催します。多くの皆さんのご参加をお待ちしております。

レクチャーの画像その1
レクチャー中の梅宮氏。

レクチャーの画像その2
灘駅西側の阪急と省線(現・JR)の高架線離別地点あたりが映し出されています。

街のあちこちで、感慨深く。(注※ 私は電鉄会社の回し者ではございません。)
2010/05/07
写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』」の第2部「レトロ・モダン 神戸」では、戦前(1930年代から40年代にかけて)の神戸の街並みを主なテーマとして取り上げています。その中では、市街地を東西に貫く現在のJRの高架線や、阪神三宮駅の駅ビルなども扱っています。これはとりもなおさず中山岩太が自作の「神戸風景」シリーズの中でモチーフとして取り上げているからなのですが、(いずこの街でも同じことではありますが)神戸の鉄道事情というのは、街の景観に大きな影響を及ぼしているため、必ずしも美術館で取り上げない分野ではないと思い、展示室内での解説文などにも少しばかり書かせていただいている次第です。

画像その1
2010(平成22)年4月21日撮影。

さて話は変わって、この写真は少し前に阪神梅田駅で撮影したもので、ホームの柱に中山展のポスターが掲示されています。今回の展覧会では経費的な面もあって、大々的にポスターをあちこちに掲示したりはしていないのですが、そうなると時々見かけるこのような情景に、思わずカメラを向けてしまうのです。

画像その2
2010(平成22)年4月20日撮影。

続いてこの写真は、少し前に阪神三宮駅で撮影したものです。
このタイル貼りの柱は、阪神三宮駅の建造当時のものといわれています。オープンしたのが1933(昭和8)年。その後元町駅までの延伸の際に一部改造されたりしていますが、70年以上前の建築物が今なお現役であることに感慨深さを感じます。ただし、阪神三宮駅は現在工事中で、もうじきこの由緒ある柱ともお別れになるようです。

画像その3
2010(平成22)年4月20日撮影。

同じく阪神三宮駅。ここで後ろに写っている電車は、近鉄電車です。「阪神の駅に近鉄が止まってる訳ないやろ」と思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、昨年から阪神と近鉄は直通乗り入れを行っていて、毎日三宮と奈良の間を阪神・近鉄双方の電車が行き来しているのです。関西ではかなりメジャーなニュースとして取り上げられていたのですが、改めて見てみると、何かしら感慨深いものを感じます。

画像その4
2010(平成22)年4月27日撮影。

ところ変わってここは近鉄・阪神の大阪難波駅。改札口の横のチラシラックに、よく見ると中山展のチラシが!乗り入れの効果はこんなところにも現れていて、以前は大阪ミナミで当館の広報を行うといったことはあまり考えられませんでしたが、鉄道の開通により、広報の守備範囲が広がったということでしょうか。中山と近鉄(という名称は終戦少し前までは存在せず、さしずめ「大軌・参急・関急電」に「大鉄」「奈良電」「信貴山急行」「信貴生駒電」、あるいは関西急行略して「関急」といったところでしょうか・・・)という取り合わせが何とも不思議で、時代も変わったぁ、などとここでも感慨にふけること十数分・・・。
ついでに申しますと、写真には撮れませんでしたが、同じチラシが近鉄京都駅や近鉄丹波橋駅!にも置いてあり、とりわけ(神戸の人々にとってはほとんど縁のなさそうな)近鉄丹波橋駅では残り1枚という優秀な成績を収めていました。京都伏見近辺の人々に中山の存在が知れ渡るといいなぁ、とここでもしばし感慨にふけり・・・。


画像その5
右が通常のチラシ、左が駅配布用チラシ。

これら近鉄の駅で配布されているチラシは、通常のチラシとは少しデザインが異なります。沿線地図などを挿入する欄をオモテ面に設ける必要があることから、その分のスペースを空けているのです。美術館では入手できないので、関心のある方は、お出かけの際にぜひお手にとってご覧ください。

画像その6画像その7
2010(平成22)年4月20日撮影。2010(平成22)年4月20日撮影。

こちらは最寄りの阪神岩屋駅のポスター。余談ですが、先ほどの近鉄丹波橋駅とこの阪神岩屋駅とはレールがつながっています。トロッコを仕立てれば、物理的にはここまで行くことができるのです。そのことにもまた感慨深く。


画像その8
2010(平成22)年4月5日撮影。

最後に阪急今津線甲東園駅前に掲示されていた中山展ポスター。車道に面しているのでなかなか近くに寄っていけないのですが、離れていながらも、今回のポスターが放つ"Simple is Best."の精神をかいま見たような気分になりました。さらに余談ですが、この阪急甲東園駅も、さらにさらにしつこくいえば、このお知らせで出てきたすべての駅(阪神梅田、阪神三宮、大阪難波、近鉄京都、近鉄丹波橋、阪急甲東園)の線路が、実は全部つながっているのです。そのため、トロッコを仕立てれば物理的にはいずこも行き来が可能です(実際には信号システムやらダイヤやらの都合で実施不可能でしょうが)。

話がずいぶん脱線しましたが、皆さんも機会がありましたら、中山展の広報の痕跡をぜひ突き止めてみてください。あっ、展覧会も今月30日(日)までですのでお忘れなくお越しくださいね。

第1回連続レクチャーを開催しました。
2010/05/02
すでにお知らせしていますように、「写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』」では、中山の活躍した戦前の神戸をよりいっそう知っていただくために、全3回の連続レクチャー「"レトロ・モダン 神戸"を語る」を開催しますが、本日、その第1回を当館レクチャールームで行いました。

 今回の演題は「戦前のアマチュア映像作家が捉えた神戸」。講師はご自身も映像作家である映像研究家で、今年3月まで神戸芸術工科大学で教鞭を執られていた森下明彦氏です。

ここでの「アマチュア映像作家」とは、本展覧会の映像コーナーに出品している桝田和三郎(ますだ・わさぶろう)氏のことです。中山とほとんど同じ世代に属する桝田氏は、昭和10年前後に9.5mmや16mmの映写機を購入し、ご家族を中心に撮影会などさまざまな場所で映像を記録されていました。そのご子息の桝田輝郎氏と森下氏の出会いにより、昨年の11月に映写会が実施され、また今回の展覧会の出品も実現しました。

今日のレクチャーでは、桝田和三郎氏が試写機を手に取り撮影をした当時の社会状況などに着目して解説いただきました。引き続いて桝田和三郎氏による映像資料の数本をレクチャールーム内で流しました。その中には、今回展覧会場内では流れていないものも含まれ、約80名の参加者の皆さんは、今なお鮮やかに甦る戦前の動く映像に、しばし見入っておられました。

レクチャー終了後には、森下氏ご所蔵の貴重な蔵書閲覧コーナーが急きょ設けられ、皆さん興味深く、その蔵書に目を通されていました。また森下氏への質問なども活発に交わされるなど、非常に有意義な時間をご提供することができました。皆さん、本当にありがとうございました。

連続レクチャーは、あと2回開催しますので、中山岩太のファンや写真のファンの皆さんだけでなく、神戸の街をこよなく愛する神戸の皆さんの参加も、心よりお待ちしております。

レクチャーする森下氏の画像
レクチャーする森下氏。

森下氏蔵書閲覧コーナーの画像
急きょ設けられた森下氏蔵書閲覧コーナー。

ミュージアム・ボランティアによる中山岩太展解説会のご紹介。
2010/05/02
「写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』」では、会期中の毎週日曜日の11時より約15分間、ミュージアム・ボランティアによる解説会を実施しています。これは当館で開催される特別展のたびに実施しているものです(なお次回開催の「レンピッカ展」は除きます)。

事前の研修を済ませた当館の誇るミュージアム・ボランティアの皆さんが、写真家中山岩太の魅力を、約20枚のスライドを映し出しながら解説しています。中には戦前の神戸を実際に経験したベテランのボランティアさんもいらっしゃって、実体験に基づく解説は、思わず聞き手をぐいぐい引きつける強さを持っています。

毎週穴を開けることもなく継続し続けられている、当館ご自慢のこの解説会。展覧会の見どころを短時間で効率よく得ることのできる貴重な機会でもあります。どうぞご参加ください。

解説会の画像
中山岩太の魅力を引き出すべく、私たちも頑張っています!

戦前の神戸の映像をたっぷりご覧いただけます!
2010/05/01
現在、兵庫県立美術館では、 「写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』レトロ・モダン 神戸」展会場内で、 映像資料「桝田和三郎映像集」を約20分繰り返し上映しています。
昭和10年頃の神戸の古い町並みや歳末の様子、ブラジル移民船など、 懐かしい映像をご覧いただけます。

また、当館1階エントランスホールでは、同展特別出品として、神戸市電気局・神戸市観光課製作の映像資料「観光の神戸」を随時上映しています。
戦前の神戸港や居留地、摩耶ケーブル、六甲山などの観光地の映像が、約13分間紹介されています。

さらに、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター東館3階「水と減災について学ぶフロア」では、1938年(昭和13年)7月に発生した「阪神大水害」の実写映像を、上下二段の大型スクリーンで公開しています。
こちらでは、自然災害が起こった戦前の神戸をご覧いただけます。
阪神大水害は、六甲山からの土石流が「山津波」となって神戸・阪神地区を襲い、死者600名、家屋の倒壊・流出3000戸を超える甚大な被害をもたらしました。その様子は「少年H」(妹尾河童)や「細雪」(谷崎潤一郎)でも紹介されています。

既にお知らせしていますとおり、人と防災未来センターへは当館チケット半券をご持参いただくと割引でご入館いただけます。
この機会にぜひ、展覧会と合わせて戦前の神戸の映像をゆっくり・たっぷりご鑑賞ください。

「神戸街あるき」を行いました。
2010/04/30
現在好評開催中の「写真家 中山岩太『私は美しいものが好きだ。』」の関連イベントのひとつとして、昭和の日の昨日、「芸術の舘友の会」主催の「神戸街あるき」を実施しました。これは、中山岩太が撮影した「神戸風景」の写真のモチーフとなった場所を実際に歩いてみる、という企画です。

夜中の嵐がうそのように晴れ渡った当日の午後1時30分、集合場所の新神戸駅1階に参加者の皆さんにお集まりいただき、まずは名勝「布引の滝」へ。駅のすぐ北側にあり、徒歩で約15分程度で行くことのできる場所。しかし整備されてはいるものの、そこは町中とは異なる山の中。まずはいちばん下流の「雌滝」を経由して、川沿いの結構な傾斜のコースを上流に向かって歩いていくと、中山が撮影した「雄滝」に到着。新幹線の駅からすぐ近くにあるにもかかわらず、まるで別世界のようなその眺めに、皆さんしばし休息を取られました。

その後は元の新神戸駅を経て、北野の異人館街へ。小松益喜が描いたエキゾチックな街並みを、多くの観光客たちとともに散策。その後休憩場所である海外移住と文化の交流センター内のCAP STUDIO Y3に立ち寄りました。戦前から長らくブラジル移民のための施設として使用された由緒ある場所、また近年ではCAP HOUSEとして親しまれた場所で、参加者の皆さんは、カフェのマスターで写真家の鳴海健二さんや、現代美術家の藤本由紀夫さん、杉山知子さんが淹れてくださったコーヒーをいただくという貴重な機会を得ました(写真を撮り忘れました!ごめんなさい!)。

続いて街あるき再開。神戸目抜き通りのひとつ「トアロード」をひたすら南下します。そして三宮神社に到着。ここはおととしに実施した、同じく中山にちなんだ神戸街あるきの際にも訪れた場所。その時の感情がしばし甦ります。 引き続き神戸大丸から、旧居留地をめぐって中山の撮影場所をひとつひとつ確認、最後は神戸大丸前で解散、という流れで、およそ4キロの道のりを、ひとりのけが人も脱落者も出さずに無事終了しました。参加者の皆さん、またスタッフとして協力いただいた皆さん、本当にありがとうございました。

なお今回の街あるきの下見の際に、中山の撮影場所を確認した写真を撮影しています。今後随時アップしていきますので、どうぞご期待ください。

街あるきの画像その1
滝は中山の時代と変わらない流れで、私たちを迎えてくれました。

街あるきの画像その2
絶好の行楽日和のトアロードを下る参加者の皆さん。

街あるきの画像その3
2年ぶりのご対面。三宮神社の狛犬さん。

「福助足袋」1930年、第一回国際広告写真展一等受賞
2010/04/30
日常的なものをテーマとした広告写真の草分け的作品。伝統的な足袋をモダンでシャープな表現でとらえ、一度見たら忘れられない印象を与える中山岩太の代表作のひとつである。
先日来館したグラフィックデザイナーで画家でもあるサイトウマコト氏も「あなたはこの写真をみたことがありますか?」というコピーとともに、この作品を絶賛した。

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「福助足袋」1930年

写真家 中山岩太「私は美しいものが好きだ」展関連事業 連続レクチャー「"レトロ・モダン 神戸"を語る」
2010/04/30
【 第1回 】
日 時:2010年5月2日(日) 午後2時〜(約90分)
場 所:兵庫県立美術館レクチャールーム
テーマ:「戦前のアマチュア映像作家が捉えた神戸」
講 師:森下明彦(映像研究家、映像作家)
内 容:今回の展覧会の第二部の注目の展示のひとつ、戦前の神戸の映像を解説します。撮影者は、須磨在住だった桝田和三郎氏。プライベートフィルムとして多くの映像を残しました。昭和10年前後の映像は、今日貴重な神戸の遺産となっています。兵庫駅から三宮駅へ高架を走る蒸気機関車など鉄道マニアも必見です。編集した講師の森下明彦氏は、元神戸芸術工科大学教授、昨年開催された「神戸モガ・モボを探せ!」展の主宰者でもあります。
会場でも上映中ですが、連続レクチャーでは、詳細な解説をもとに、映像でレトロ・モダン神戸を振り返ります。

森下明彦
【 第2回 】
日 時:2010年5月9日(日) 午後2時〜(約90分)
場 所:兵庫県立美術館レクチャールーム
テーマ:「変貌する都市風景1930's〜50's−昭和期神戸の光と影」
講 師:梅宮弘光(建築史家、神戸大学大学院准教授)
内 容:今日、居留地や北野町に代表される神戸のモダンな建築物の多くは、失われてしまいましたが、その面影を中山岩太はじめ多くの画家たちが作品に残しています。写真、絵画の視点から神戸の建築を紹介、その魅力をわかりやすく解説します。モダニズム建築の研究で知られる梅宮氏は、昨年の当館企画展「躍動する魂のきらめき−日本の表現主義」展の折の講演会に引き続いての登場です。
梅宮弘光

【 第3回 】
日 時:2010年5月23日(日) 午後2時〜(約90分)
場 所:兵庫県立美術館レクチャールーム
テーマ:「懐かしの絵葉書〜モダン神戸の原像」
講 師:石戸信也(絵葉書研究家)
内 容:「石戸コレクション」として知られる神戸の絵葉書収集の第一人者。展示中の絵葉書からは、神戸港、元町、三宮、六甲山などの懐かしい風景とともに、当時の人たちがどのような視点で神戸の街を捉えていたかが見えてきます。絵葉書文化と神戸の話を聞くことができるでしょう。講師には、『神戸のハイカラ建築−むかしの絵葉書から』『神戸レトロコレクションの旅』などの著書もあります。
石戸信也

この週末は解説会がおすすめです!
2010/04/22
4月24日(土)午後5時から30分程度、当館学芸員が「写真家 中山岩太」展の解説を行います。
展覧会を既にご鑑賞いただいた方も、まだご鑑賞いただいていない方も、 展示の内容や中山岩太の作品などを知っていただく絶好のチャンスです。
当日は夜8時まで開館しておりますので、 解説会に参加いただいた後、ゆっくり展覧会をご鑑賞いただけます。
みなさま、ぜひご参加ください!

日 時:4月24日(土) 午後5時〜(30分程度)
場 所:レクチャールーム(当館1階、インフォメーション横)
参加無料


また、翌25日(日)は、午前11時から15分程度、当館ミュージアム・ボランティアが展示についてわかりやすく解説します。
こちらもぜひご参加ください!

日 時:4月25日(日) 午前11時〜(15分程度)
場 所:レクチャールーム(当館1階、インフォメーション横)
参加無料

4月17日、展覧会開幕!
2010/4/17
昨日までの雨から一転、さわやかな春の日差しの中、開会式が行われました。
4月より新たに就任した、蓑 豊館長の開会のことば、吉本知之兵庫県副知事のあいさつ、そして、中山岩太の次男でいらっしゃる中山亮様のあいさつがありました。
中山亮様は「親父がどんな人だったか、とよく聞かれますが、自分は子供だったのでよくわからないが、このような機会を得まして、写真が整理され、テーマに沿って展示されているものを改めて観ることができました。」と感慨深くお話されていました。

展示作品は約380点。モダンでハイカラなレトロ神戸の懐かしい風景の写真や映像、絵画や版画などなど。思わずじっ・・と見入ってしまいます。
そして、昭和8〜11年のフィルム映像では、自分が当時の汽車に乗ってまわりの風景を見ている感じでタイムスリップしたよう。この景色は懐かしい、と思われる方も多いでしょう。
おしゃれな中山岩太の写真の数々、みなさまに楽しんでいただきたいです。

開会式テープカットの画像展示室風景の画像
『写真家中山岩太展』の開幕です!みなさまもぜひご来館ください。

5月1日(土)「中山岩太」展 教員向け解説会及び特別内覧会を開催します
2010/03/28
「中山岩太」展の担当学芸員による教員向けの解説会を開催します。
教育普及担当スタッフからの学校での美術館利用案内や今後の展覧会の最新情報も含めご案内します。
解説会終了後は「中山岩太」展、「コレクション展T」の両展覧会をご鑑賞いただきます。
参加費は無料。是非ご参加ください。

日 時:5月1日(土)13:30〜14:30
    ※終了後、展覧会をご鑑賞いただきます。
場 所:兵庫県立美術館 レクチャールーム
対 象:小・中・高・特別支援学校で図工・美術科及び校外学習をご担当されている教員の皆様
定 員:100名(定員を超えた場合のみ、事前にご連絡いたします)
参加費:無料

お申し込みは、別紙FAX様式にてお願いします。
申込み締め切り:4月28日(水)
ご案内はこちら(PDF)      申し込みFAX用紙(PDF)

お知らせのページを立ち上げました!
2010/03/28
本日、お知らせのページを立ち上げました。
これから展覧会に関するお知らせを発信していきますので、みなさまどうぞお楽しみに!
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