県美プレミアム 2017年10月28日[土]―2018年1月21日[日]。

特集展示 絵画のふしぎ ~県美・絵画・名品選~

兵庫県立美術館では、前身の兵庫県立近代美術館時代より45年余りに渡って収集活動を行い、これまでに収蔵された作品数は9,000点以上に及びます。当館1階と2階の展示室では、「県美プレミアム」(旧称コレクション展)と題し、年3度の展示替えを行いながら、様々なテーマによってコレクションを紹介する展覧会を開催します。
本年度第3期の県美プレミアムでは、「絵画のふしぎ~県美・絵画・名品選~」と題し、当館所蔵の日本近・現代絵画を中心に展示します。
目の前の現実を再現しようとしたものから、虚構の世界や観念を描いたもの、「何か」を描くのではなく絵画そのもののあり方を問うたものまで、古今の画家たちは絵画という二次元のメディアでさまざまな表現を行い、その可能性を追求してきました。特集展示では、絵画をめぐるふしぎを、主題表現、技法、素材、視点といった観点から考えます。

< みどころ >
● 当館所蔵の絵画(平面作品)の名作100余点を一挙公開。
明治初期から現代までのさまざまな絵画表現に触れていただく機会です。
● 「絵画」を見るポイントを5つの章で構成。いろいろな視点から「絵画のふしぎ」を考えます。
1 あたかもそこにあるかのように
明治以降、本格的に日本にもたらされた西洋絵画はその迫真性により、日本人の絵画に対するそれまでの見方を大きく変えました。明暗法による巧みな質感描写、遠近法を駆使した空間表現、油絵具による鮮やかな色づかい等によって、対象を写実的に描写した絵画に大きな衝撃を受けた画家たちは、油彩画の技術、技法の習得につとめました。以降、日本の近代絵画は写実=リアリズムを軸に展開していきます。
この章では、洋画の技術を習得し、日本近代絵画の礎を築いた画家たちの「写実」への取り組みを紹介します。
神中糸子《はるの像》1894(明治27)年頃
2 再現から表現へ
「芸術は自己の表現に始まって、自己の表現に終るものである」(夏目漱石『文展と芸術』1912年)
20世紀初頭、明治末年から大正にかけて、新しい動きが起こります。後期印象派などの西洋の新思潮に影響を受けた画家たちが、対象の再現という課題から一歩踏み込み、人間の内面に眼を向けるようになりました。画家たちはそれぞれの「個性」や「自我」を絵筆に託して描き出そうとしました。絵画は「再現するもの」から「表現するもの」へと転換を遂げます。
この章では、同時代の西洋美術の新思潮を摂取しつつ、一個の画家として、日本人の画家として、そのアイデンティティを絵画表現の中に追求した画家たちの作品を紹介します。
鴨居玲《トランプ》1969(昭和44)年
3 開かれた窓
絵画はしばしば世界を眺めるための窓にたとえられてきました。開かれた窓は視界を一定の大きさの矩形に切り取り、その向こうに広がる光景を縁取る額縁の役割を果たすからです。ここでは、文字通り「窓」から見た風景を描いた風景画など、空間の広がりを巧みに描き出した作品を展示します。
池田永治《まど》1934(昭和9年)
4 かげ、あと、しるし、もの
絵画の起源はどのようなものだったのでしょう。ナルキッソスの神話に象徴されるような(水に映る)影、何かの痕跡、何かを指し示す記号、絵画それ自体を成立させている絵具や支持体といった物質―いずれも絵画の根源を問うとき、そして絵画の可能性を探るうえで重要な要素であるといえます。この章では、1950年代以降の絵画作品の中から、絵画のありようを問い続けた作家たちの作品を紹介します。
榎倉康二《Figure-No.35》1984(昭和59)年
5 何がどう見えている?
人はものをどのように見ているのでしょう。「見る」ことは動き回る眼によるさまざまな視点、見るという行為の持続から成り立っており、「空間」と「時間」の中にあります。視点を固定し、ある瞬間を切り取った「視覚」は、「見ること」の一断片にすぎません。この章では、ものを見ること、それ自体を問いかけた作品を展示します。
斎藤智《無題75-B》1975(昭和50)年
展示室 5
近現代の彫刻/
安藤忠雄コーナー

当館が所蔵する近現代の彫刻作品を展示します。
展示室東側のスペースでは、当館を設計した建築家・安藤忠雄について、関西でのプロジェクトを中心に、模型、写真、映像などで紹介しています。

小磯良平記念室

神戸生まれの小磯良平(1903-1988)は、近代洋画を代表する巨匠のひとりです。優美で気品のある人物像は、現在も私たちを魅了します。《T嬢の像》や《洋装する女達》などの人物画の名作に加え、小磯の卓越した構成力が伺える静物画や風景画をあわせて展示します。

金山平三記念室

金山平三《女の肖像》1932(昭和7)年

神戸に生まれた金山平三(1883-1964)は風景画家として知られていますが、優れた人物画、静物画も多く描きました。今回の展示では、金山の人物画、静物画を展示し、風景画家とはまた違う金山の魅力に迫ります。神宮外苑にある聖徳記念絵画館の壁画の画稿のほか、軽快なタッチで瑞々しく描かれた静物画の秀作を紹介します。

県美プレミアム
館外作品を中心とした小企画展:JAPAN KOBE ZERO の軌跡 / 収蔵品によるテーマ展:絵画のふしぎ ~県美・絵画・名品選~
会期・観覧料  展覧会構成  関連イベント