本展は、バーン=ジョーンズの芸術を以下の12のパートに分けて概観します。
バーン=ジョーンズは、友人ウィリアム・モリスの作った商会の製品のために、様々な装飾デザインを制作するとともに、それらをもとに独立した絵画や大規模な装飾画を描くという制作スタイルをとりました。本章では、バーン=ジョーンズの画家としての出発点の状況を紹介します。
イギリス近代文学の祖チョーサーは、バーン=ジョーンズとモリスがオクスフォード大学の学生だった頃からの愛読書でした。ここでは、タペストリー《巡礼を導く「愛」》など、チョーサーの『薔薇物語』に関連する作品を紹介します。
バーン=ジョーンズは、学生時代にジョン・ラスキンとの知遇を得て、15世紀イタリア絵画に関心を抱きました。中でもヴェネツィア派の画家カルパッチョの《聖ゲオルギウスと龍》から大きな影響を受け、同じ主題に基づく連作絵画を制作しました。
1860年代にウィリアム・モリスは自作の詩「地上の楽園」を出版する計画をたて、バーン=ジョーンズが挿絵を任されました。後年、そのデザインは絵画や室内装飾へと発展していきます。本章では、そうした室内装飾の代表的作例である《クピドとプシュケ》を紹介します。
本展の第4章、第7章、第8章で取り上げるように、ギリシャ・ローマ神話は、バーン=ジョーンズにとって中世文学と並ぶ素材の宝庫でした。本章では、トロイの物語などその他の主題の作品を紹介します。
バーン=ジョーンズは、19世紀後半に広くヨーロッパに広がった象徴主義を代表する画家のひとりです。本章では、彼の寓意画の最高傑作《運命の車輪》を筆頭に、バーン=ジョーンズ作品における様々な寓意と象徴に注目します。
自作の彫像に恋した彫刻家を主人公とするピグマリオン伝説をウィリアム・モリスが物語詩に翻案、それを元にバーン=ジョーンズは4点の油彩画からなる連作を完成させました。彫像のモデルとなったのは、バーン=ジョーンズの愛人であったギリシャ人女性マリア・ザンバコです。
バーン=ジョーンズは1875年、後にイギリスの首相となる政治家アーサー・バルフォアの邸宅のために、英雄ペルセウスの冒険物語を描いた一連の装飾絵画の制作を計画しました。本章では、未完に終わったこの構想の一部を紹介します。
古くからの伝承である「眠り姫」の物語は、バーン=ジョーンズがおよそ30年に渡って描き続けた重要な主題です。本章では、このテーマに基づく2番目の連作のための習作群と3番目の連作に含まれる完成作を展示、甘美な幻想に満ちたバーン=ジョーンズ芸術の真髄をご覧いただきます。
バーン=ジョーンズは、ロマン主義者であるとともに、敬虔なクリスチャンでした。例えば、彼が幾度も手掛けた教会のステンドグラスのデザインは、彼の芸術家としての創作意欲と深い信仰心に根ざしています。本章では、キリスト教とそれと関連性の強い中世説話を主題とする作品を紹介します。
バーン=ジョーンズは、自らを正面きって描いた自画像を残していませんが、かわりにペンによるカリカチュアはいくつか残しています。ここでは、そうした風刺的自画像のひとつと、同時代の画家ジョージ・フレデリック・ワッツが描いたバーン=ジョーンズの肖像画を見比べていただきます。
バーン=ジョーンズは生涯に渡って書物と関わりを持ち続けた芸術家でした。特に、モリスが設立したケルムスコット・プレスからは、バーン=ジョーンズの装丁や挿絵による美本の数々が刊行されました。ここでは、世界で最も美しい本とも評される『チョーサー著作集』など代表的な書物を紹介します。