昨年5月に亡くなった中西勝(1924‐2015)の人柄とその画業を偲んで開催する展覧会です。当館が収蔵する作品と、美術館と兵庫県が作者より生前中に寄贈を受けた作品、第15回安井賞を受賞した《大地の聖母子》(東京国立近代美術館蔵)、あわせて25点を展示します。
第1章は、黒がなんらかの象徴的な意味をもつ例をご紹介します。鴨居玲が描いた、黒い背景に沈みこむような人物たち。正木隆は、ありふれた風景から特定の部分を白い色で残し、それ以外を暗く塗りこんでいます。黒色を使うことによって生じる神秘的で厳かな雰囲気、あるいは恐さや、孤独感など、そこからは多様なメッセージを読みとることができるでしょう。私たちを惹きつけてやまない黒の世界観にじっくり浸ってみてください。
第2章では、絵画や彫刻に使われた黒が、作品の構成に重要な効果をもたらしている作例をご紹介します。
横尾忠則は風景画の中で空や海を黒く塗ることで、明るい色彩で描いた部分との対比を際立たせました。斎藤義重による独楽のような立体作品は、形態から生じる軽やかさと黒がもたらす重量感を併せ持っています。他の色を引き立てたり、全体のバランスをまとめたり、または重さを感じさせたり。実はさまざまな役割を果たす黒について考えてみましょう。
第3章では、素材の違いによる黒の表現の豊かさをご紹介します。 福岡道雄は、縦2.3m、横3.2mの強化プラスチックの一面に、「何もすることがない」という言葉をくり返し刻みました。壁のように広がる言葉の波に圧倒されるようです。また河口龍夫の《DARK BOX 2007》は、暗闇を閉じ込めた鉄の箱です。目には見えないけど、そこに確実にある闇の世界、これもまた黒の素材のひとつと言えるでしょう。技法や材質によって全く異なって現れる黒色の違いを楽しんでみてください。
第4章では、黒い線に注目して、線そのものの良さが生きている作品をご紹介します。
アルベルト・ジャコメッティによる一連の版画作品では、彼が過ごしたパリの日常風景が素早く的確な線で写し取られており、当時の空気がよく伝わってきます。吉川霊華は、細く優美な線によって、人物の表情や衣装の襞を巧みに描き出しました。また森田子龍は、書と絵画とが融合したような、自由な書を追及しました。太かったり細かったり、真っ直ぐだったりぐねぐねしていたりと、さまざまな表情をもつ黒い線。線そのものを辿り、また線それだけで紡ぎ出されるイメージの豊かさに触れてみましょう。
確かなデッサン力に裏打ちされた人物像は、現在も私たちを魅了します。小磯の代表作を展示する記念室では、小磯がどのように画面を構成し、理想的な空間を描こうと試みたのか、《T嬢の像》や《洋装する女達》などの人物像を中心に紹介します。
今回の展示では、代表作《大石田の最上川》など、金山が自然の観察から生みだした美しい色彩表現にご注目ください。
当館は、彫刻を作品収集の柱のひとつに据えてきました。展示室5では、ロダンに始まる近現代の彫刻の名作を紹介します。 また、当館の設計者である建築家・安藤忠雄の業績の一部を模型、写真、映像などで紹介するコーナーを展示室東側に併設します。