


2025県展大賞受賞者インタビュー
県展大賞 邯鄲の夢(安田 正裕)
―段ボールを素材にした立体作品で大賞を受賞した安田正裕さん。定年退職をきっかけに兵庫県に移住し、制作をはじめたといいます。県展出品後に開催された個展会場にて安田さんに、県展大賞受賞作品や県展への想いなど、お話を伺いました。
県内の公募展への挑戦は、兵庫県を知るためでもあるんです。
プロフィール
安田 正裕(やすだ まさひろ)
2021年兵庫県に移住。宝塚市展、西宮市展、尼崎市展、明石市展など、多数の公募展に挑戦。
―――段ボールでの制作はいつから始められたのですか?
安田:立体作品を制作しはじめたのは、退職後、兵庫県に移住してからです。兵庫県に移住したのは宝塚歌劇が大好きだからです。移住当初は観劇ばかりしていました。制作といっても指示書のようなイラストは趣味で描いていましたが、絵画を制作するということに抵抗を感じており、仕事をしている間は制作ができませんでした。
―――これまで制作をされていなかったのは驚きです。宝塚歌劇のために兵庫県に移住されたということですが、そこで制作に至ったのはどうしてでしょうか。
安田:宝塚歌劇を観に行ったときに、駅前の商業施設内にあった市展のチラシが目に入りました。「このような発表の場があるのか」と気づいたことを契機に制作をはじめました。最初は段ボールではなく、粘土を使った立体作品を作っていました。そのはじめての市展で、運よく奨励賞をいただくことができました。審査結果や来場者の反応から学ぶことが多く、市展での挑戦を機に、電車や自転車でいける範囲の公募展に挑戦しはじめました。各地域の公募展への参加は、兵庫県を知るきっかけにもなっています。
―――粘土から段ボールに素材がうつったのはなぜですか。
安田:あるとき、体調を崩してしまい、重いものが持てなくなってしまいました。その時に軽い素材である段ボールにいきつきました。制作過程で、支持体など聞かれますが、針金のような支持体はなく、段ボールをそのまま形成しています。形になっていくのが楽しく、一気に作り上げていきます。立体作品は広い置き場が必要で、古い作品は解体してしまっています(笑)。
―――展示は立体作品の他に、絵画作品も多いのですが、絵画はいつから取り組まれているのですか。
安田:絵画というか、イラストは昔から描いてはいましたが、専門的に習ったわけではありません。絵画作品の制作は、自分が描いていいものか抵抗がありました。それは、親から「絵を描くことは選ばれた芸術家がすることで余程の覚悟がいることだ」と言われていたのが心に残っていたからかもしれません。
―――それは、「そんなこと(絵を描く)より、勉強しなさい」という感じでしょうか。
安田:そうだと思います。資本主義リアリズムに則っているのかと(笑)。絵画は自分にとって余計なことというイメージを持っていたのですが、1年前に近所の公民館で水彩画教室が開催されていることを知りました。そこではじめて水彩画を習ったのですが、先生や絵を描く仲間と話をしたり、制作したりすることで、自分も絵を描いてもいいんだと思えるようになりました。みんなで絵を描くということが自分にとってもとても大切な時間になっています。
―――立体作品の後ろに絵画作品が飾ってありますが、制作はどちらを先に行うのですか。
安田:それは時によって異なります。例えば、実在している作家を作品にする場合は、小説や資料を読み、その人物を頭の中で固め、それを絵におとしていく。そのイメージをもとに、立体作品にする場合もあります。段ボールを素材にした作品は、はじめに、ピカソの作品を作ったのですが、それは立体から先に制作しています。
―――ピカソ以外にも多くのアーティストをモチーフにされていますが、どうしてでしょうか。
安田:制作をしていると、作品づくりに苦悩するときがあります。自分の好きなアーティストと対峙することで、そのアーティストも自分と同じように苦悩していたのではないか、アーティストの気持ちが少しわかるような気持ちになるのです。現在は、頭の中に思い描いた物語をイメージ化した立体作品も制作しています。
―――県展への応募はいつから?
安田:県展にはじめて応募したのは2022年です。フリーダ・カーロをモチーフに、夫婦の作品を出品しましたが落選してしまいました。県展は、レベルが高いというイメージです。真夏の受付で大変暑く、搬入が大変だったのを覚えています(笑)。
―――ご自身の作品が審査されるってどうでしょうか。
安田:私は、こんな風に捉えられるのかととても勉強になっています。だめな場合は「次の作品はこうしよう」とか。人からの講評は、ショックを受けるときもありますが、人それぞれの感じ方がとても勉強になり、講評を積極的に取り入れています。審査されるというのは、自分の作品がどう解釈されているか、どう思われているかキャッチボールできるとてもいい機会です。これからも対話するような気持ちで制作を続けます。
