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松方コレクション

第一次大戦中のヨーロッパで作品蒐集を始めた松方は、その後11年の間に一大コレクションを形成します。専門家や批評家たちの助言を積極的に受け入れて一気に購入を進め、ルネサンスから当時最新のものまで幅広い年代をおさえた多彩なジャンルの作品が揃いました。


  • フランク・ブラングィン 《松方幸次郎の肖像》
    1916年
    国立西洋美術館(松方幸次郎氏ご遺族より寄贈・旧松方コレクション)

  • クロード・モネ 《陽を浴びるポプラ並木》
    1891年
    国立西洋美術館(松方コレクション)
1)松方幸次郎の夢:「共楽美術館」の建設計画

松方が美術館建設の構想を持った背景にはイギリス人画家フランク・ブラングィンとの出会いがありました。ブラングィンの作品を多数購入した上に、「共楽美術館」と名付けた夢の美術館のデザインも依頼しています。美術館の最初の建設候補地は、当時松方が住んでいた神戸でした。


  • フランク・ブラングィン
    《共楽美術館構想俯瞰図、東京》
    国立西洋美術館
    (2010年度美術作品購入募金の補助により購入)
2)松方幸次郎の夢:ロダンと《地獄の門》

ロダンの代表作でありながら生前に完成することのなかった《地獄の門》は、松方の発注によってブロンズ鋳造が可能になりました。ダンテの『神曲』「地獄篇」に着想を得たロダンは、無数のデッサンを描いています。繰り返される試行錯誤の中から、《考える人》など独立した彫刻がいくつも生まれています。


  • オーギュスト・ロダン《考える人》
    1881-82年 国立西洋美術館
    (松方コレクション)
    撮影: ©上野則宏

  • オーギュスト・ロダン
    《ダンテに話しかける亡霊たち、
    『オーギュスト・ロダンのデッサン』(『アルバム・フナイユ』)より》
    1897年出版
    国立西洋美術館
    (松方コレクション)
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コレクション・ダイアローグ

この章では、国立西洋美術館と兵庫県立美術館の所蔵品の対話を取り上げます。
ロダンの《青銅時代》とシーガルの《ラッシュ・アワー》が伝えるのは、20世紀における彫刻の概念の拡張です。また、両館が所蔵する《オルフェウス》は、彫刻の複数性と鋳造の問題について考える機会を提供します。


  • オーギュスト・ロダン《青銅時代》1877年
    国立西洋美術館(松方コレクション)
    撮影: ©上野則宏
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山村コレクション

パブリック・コレクションとして世に残すことを目的に作品蒐集を始めた山村は、はじめ国内外の近代美術を、その後戦後日本の前衛美術の蒐集に情熱を燃やしました。自らの足と審美眼を頼りに約30年をかけて築いたコレクションは、日本の現代美術史の重要な一側面を今に伝えています。


  • 清水 九兵衞《ウィグA》1980年
    兵庫県立美術館(山村コレクション)

  • 篠原 有司男《モーターサイクル・ママ》
    1971年
    兵庫県立美術館(山村コレクション)
    ©篠原有司男+乃り子
1)山村德太郎の夢:西洋近代美術コレクション

母ハルから一部の資金援助を受けながら山村が蒐めた最初のコレクションには、西洋の近代美術も含まれていました。しかし母の死の前後に山村は活動方針を転換し、それらは徐々に手放されていきます。1965、67年に国立西洋美術館へ寄贈された8点は、山村の夢のはじまりでもありました。


  • ジャン(ハンス)・アルプ《輪―森》 1961年
    国立西洋美術館(山村德太郎氏より寄贈)
2)山村德太郎の夢:戦後日本の現代美術

山村に戦後日本の前衛美術に目を向けさせた4人の作家との象徴的な出会いがありました。津高和一、吉原治良、斎藤義重、そして元永定正です。量ではなく質を優先し、時には作品を入れ替えるなどして形成されたコレクションには、多種多様な作家たちの軌跡を系統だてておさえようとした山村の意図が現れています。


  • 津高 和一《母子像》1951年
    兵庫県立美術館(山村コレクション)

  • 高松 次郎 《題名》 1971-83年
    兵庫県立美術館(山村コレクション)
    © The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates, Tokyo, Pace Gallery, New York
3)山村德太郎の夢:具体美術協会

技法・材質における既存の枠組みを打ち破り、新しい表現を次々に生み出した具体美術協会の活動は、国内外で高い評価を得ています。海外に流出した作品を買い戻したり、失われた作品の再制作を作家に促したり、関連資料の収集も行うなど、山村は彼らの活動を包括的に残そうとしました。


  • 白髪 一雄 《天異星赤髪鬼》 1959年
    兵庫県立美術館(山村コレクション)

  • 田中 敦子 《作品》 1958年
    兵庫県立美術館(山村コレクション)
    © Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association
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エピローグ 夢の続き

松方コレクションは激動の時代を背景に散逸しましたが、創設間もないロダン美術館の運営を支えたのみならず、いまだ公立美術館のなかった日本にもたらされ文化力の向上を大きく後押ししました。一方の山村は、現代美術がほとんど普及されていなかった時代に、作品を集め、過去のパフォーマンスの絵画化を提案し、関連資料にも目を向けるなど先鋭的な感覚で唯一無二のコレクションを形成しました。形を変えながらも受け継がれる彼らの夢は、知的財産を守り伝えることの大切さを伝えます。


  • オーギュスト・ロダン
    《「地獄の門」のマケット(第三構想)》1881-82年頃(原型)
    国立西洋美術館(松方コレクション)
    撮影: © 上野則宏