没後10年を経て国内外から再び注目を集める石岡瑛子(1938-2012)。広告、舞台、映画など表現のジャンルから国境までを超え、世界的に活躍したデザイナーです。
本展では瑛子が、東京を拠点にしていた1960-80年代の仕事を中心に、センセーションを巻き起こしたポスターやCM、アートワークからスケッチまで400点以上の作品を一挙公開します。表現者にとって大切なのは「ほんとうの自分力」を培うこと。つまり「私」を磨き抜くこと。瑛子はその信念を胸に、革新的ビジュアルを生み出す創造の旅を続けました。写真や映像、イラストなど多様な分野のトップランナーたちとの協働作業を重ねながら。
本展は石岡瑛子のクリエイションの核となる「 I=私 」に迫ります。いまなお熱を放つビジュアルと瑛子自身の言葉に、時代をも超越するデザインの生命力を体感してください。これは“回顧展”ではありません。石岡瑛子は、ここにいます。いまを生きるあなたをインスパイアするために。
©Kazumi Kurigami 1983
石岡瑛子|略歴
デザイナー/アートディレクター。東京藝術大学卒。1961年、資生堂宣伝部入社。前田美波里を起用したポスターなどで頭角を現し独立。70年代にはパルコ、角川文庫など時代を揺るがす数々のキャンペーン、ファッションショーの演出、書籍デザイン他を手がける。80年代初頭に活動の拠点をニューヨークに移して以降は、美術及び衣装デザインなど、さらにボーダーレスに仕事の領域を広げ、舞台「M.バタフライ」でニューヨーク批評家協会賞、アルバム「TUTU」でグラミー賞、映画「ドラキュラ」でアカデミー賞を受賞するなど世界的評価を得る。作品集に『EIKO BY EIKO』『EIKO ON STAGE』、著作に『私デザイン』他がある。
本展のみどころ
つねに“崖っぷち”に立ちながら、デザインの本質を探究しつづけた石岡瑛子。「メッセージは常に時代の中で刺激的でなければならない」「デザインに男も女もない。“石岡瑛子”に裏づけられた表現をしたい」「不安と期待と自信が錯綜している時間を持たない仕事はダメだと私は思う」強い信念に裏づけられた言葉の数々は、時代を越えて私たちの心を揺さぶります。本展では、約50点の代表作に石岡自身の言葉を対置させ、その表現の基底にあるクリエイティブな思想にスポットを当てます。
ポスターなどの印刷物に加え、石岡直筆のスケッチや校正紙をあわせて展示します。細部まで生命力みなぎるデザインがどのように生まれたのか、その制作プロセスと、徹底したクオリティを求める石岡の妥協なき情熱に迫ります。
初公開となる教科書のデザイン、企画や編集にまで携わった雑誌の仕事など、石岡瑛子の業績を語る上で欠かせないジャンルの一つであるブックデザインも多数紹介します。
会場内に流れる晩年のインタビュー音声からは、石岡瑛子がいまここにいるかのような臨場感を感じていただくことができます。
兵庫会場限定の映像資料や特別出品も。石岡瑛子とも親交のあった安藤忠雄氏設計の展示空間ならではのダイナミックな展示をお楽しみください。