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展覧会構成

展覧会冒頭に展示されるカンヴァスにピンクの蛍光塗料を用いた三連画《風景I, II, III》(1968年)は、東京国立近代美術館で開催された「韓国現代絵画展」(1968年)に出品された李の初期の代表作です。蛍光塗料を用いたレリーフ作品《第四の構成A, B》(ともに1968年)と同様、視覚を攪乱させるような錯視効果を強く喚起する作品です。トリッキーな視覚効果を引き起こすこれら作品は、1960年代末の日本に興隆していた傾向を反映しています。

《風景Ⅰ, II, III》
1968/2015年
スプレーペイント/カンヴァス
各218.2×291cm
個人蔵(群馬県立近代美術館寄託)
展示風景:「李禹煥 時を住まう」
ポンピドゥー・センター=メス、メス、フランス、
2019年2月27日-9月30日
©ADAGP, Paris, 2022. ©Centre Pompidou-Metz / Photo Origins Studio

1968年頃から制作された〈関係項〉は、主に石、鉄、ガラスを組み合わせた立体作品のシリーズです。これらの素材には殆ど手が加えられていません。李は、観念や意味よりも、ものと場所、ものと空間、ものともの、ものとイメージの関係に着目したのです。1990年代以降、李はものの力学や環境に対しても強く意識を向けるようになり、石の形と鉄の形が相関する〈関係項〉も制作しています。より近年の作品では、環境に依存するサイトスペシフィックな傾向が強まっており、フランスのラ・トゥーレット修道院で発表された《関係項―棲処(B)》(2017年)はその典型です。

《関係項》
1968/2019年
石、鉄、ガラス
石:高さ約80cm、鉄板:1.6×240×200cm、
ガラス板:1.5×240×200cm
森美術館、東京
Photo by Kei Miyajima
《関係項―棲処(B)》
2017年

作家蔵
展示風景:「ル・コルビュジエの中の李禹煥 記憶の彼方に」展、ラ・トゥーレット修道院、エヴー、フランス、2017年9月20日-12月20日
©Foundation Le Corbusier, Photo by Jean-Philippe Simard

2021年、李はフランスのアルルにある古代ローマの墓地アリスカンを舞台に個展を開催しました。礼拝堂内に展示された《関係項-無限の糸》は、鏡のように磨き上げられた丸い大きなステンレスの底面に向かって、上から細い糸が一本垂れ下がる、〈関係項〉シリーズの最新作の一つです。本展では、兵庫県立美術館の地下から2階へと続く螺旋階段に、本作を元にした新作が設置されます。そこでは、安藤忠雄設計による建築空間と作品との響き合いを感じることができるでしょう。

《関係項―無限の糸》
2022年
ステンレス、糸
サイズ可変
作家蔵
展示風景:「李禹煥 レクイエム」アリスカン、アルル、フランス、
2021年10月30日-2022年9月30日
©Studio Lee Ufan / Photo by Claire Dorn

1971年にニューヨーク近代美術館でのバーネット・ニューマンの個展に刺激を受けた李は、幼年期に学んでいた書の記憶を思い起こし、絵画における時間の表現に関心を強めました。1970年初頭から描き始めた〈点より〉と〈線より〉のシリーズは、色彩の濃さが次第に淡くなっていく過程を表しています。行為の痕跡によって時間の経過を示すこのシステマティックなシリーズは、10年ほど続けられます。

《点より》
1977年
岩絵具、膠/カンヴァス
182×227 cm
東京国立近代美術館
《線より》
1977年
岩絵具、膠/カンヴァス
182×227 cm
東京国立近代美術館

1980年代に入ると、〈風より〉と〈風と共に〉のシリーズに顕著なように、画面は荒々しい筆遣いによる混沌とした様相を呈してきます。80年代終わり頃からはストロークの数は少なくなり、画面は次第に何も描かれていない空白が目立つようになります。2000年代になると、〈照応〉と〈対話〉のシリーズが示すように、描く行為は極端に限定され、ほんの僅かのストロークによる筆跡と、描かれていない空白との反応が試されます。〈点より〉や〈線より〉と対照的に、これらは空間的な絵画のシリーズと言えます。

《風より》
1985年
岩絵具、油/カンヴァス
227×182㎝
豊田市美術館
《応答》
2021年
アクリル絵具/カンヴァス
291×218cm
作家蔵
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