石膏ボードを中心とした建築資材で知られる吉野石膏株式会社は、社内の創造的環境づくりを目的に、1970年代から日本近代絵画、1980年代後半からはフランス近代絵画の収集を開始しました。1991年、創業の地、山形県の山形美術館に作品を寄託し、モネ、ピサロ、ルノワール、シャガールらの作品を公開すると、市民の大きな反響を呼びました。2008年には、美術活動へのさらなる貢献を目的に、吉野石膏美術振興財団を設立、若手芸術家の育成や美術における国際交流の支援などにも力を注いでいます。収集の歴史は比較的新しいものの、今や日本ならびに西洋近代美術の名品を多数所蔵し、質量ともに充実した国内有数のコレクションとなっています。
本展では、19世紀半ばのバルビゾン派にはじまり、印象派を経て、キュビスムから抽象絵画へと至るモダン・アートの展開を軸に、エコール・ド・パリの多様性にも着目しつつ、大きく揺れ動く近代美術の歴史を72点の作品によってご紹介します。
主催 | 兵庫県立美術館、神戸新聞社、MBS、共同通信社 |
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後援 | 公益財団法人伊藤文化財団、兵庫県、兵庫県教育委員会、神戸市、神戸市教育委員会 |
特別協力 | 吉野石膏株式会社、公益財団法人吉野石膏美術振興財団、 公益財団法人日本教育公務員弘済会兵庫支部 |
助成 | TKG Foundation for Arts & Culture |
協力 | 公益財団法人山形美術館 |
協賛 | あいおいニッセイ同和損保 |
当日券 | 前売 (5/31まで) |
団体 (20名以上) |
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一般 | 1,300円 | 1,100円 | ||
大学生 | 900円 | 700円 | ||
70歳以上 | 650円 | ー | 550円 | |
高校生以下 | 無料 | |||
障がい者 | 一般 | 300円 | ー | 250円 |
大学生 | 200円 | ー | 150円 |
前売券のみ取扱い:兵庫県立美術館ミュージアムショップ
前売券・当日券取扱い:チケットぴあ(Pコード:769-611)、ローソンチケット(Lコード:51797)、セブンチケット、イープラス、CNプレイガイド、阪神プレイガイド(阪神プレイガイド)ほか京阪神のプレイガイド
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19世紀前半までの絵画は、いかに写実的に描くかに価値が置かれ、官主導の展覧会「サロン」での評価が重要視されていました。しかし19世紀後半のフランスでは、アトリエから離れ屋外での制作を行ったバルビゾン派や、それまで積極的に扱われなかった卑近な主題を取り上げたクールベのような画家たちが登場します。同じ頃、首都パリが近代都市へと変貌を遂げ、新しい都市の姿を鮮烈に描き出したマネがやがて出現します。
そうした中、サロン以外の発表の場を求め、1874年にいわゆる第1回印象派展が開催されました。この展覧会の出品作品は、パリとその近郊を主題に、明るい色彩と素早い筆づかいで表現され、それまでの絵画からすれば未完成に近い出来に思われました。しかし光と眼の感覚に基づいて描かれたそれら革新的な絵画は、やがて人々の支持を集めるようになっていき、今では「印象派」の絵画として人々を魅了し続けています。
本章では、モネ、シスレー、ルノワール、ドガ、カサット、ピサロ、セザンヌといった画家たちを紹介し、印象派が受け入れられるようになってからもそれに飽き足らず、やがて独自の道を歩んでいく彼らの行程を振り返り、さらにはファン・ゴッホら次世代の画家たちが印象派の表現を吸収し、新たな挑戦へと向かっていく流れをも追っていきます。
印象派が切り開いた新しい絵画の歴史は、20世紀を迎えると一気にその変化の速度を上げていきました。カンヴァス上で展開される色彩と筆づかいが自律的な存在感を示すフォーヴィスムや、モティーフを単純な形体に還元し、それらをカンヴァス上に再構成することで三次元の事物を二次元の表現に置き換えたキュビスムの出現によって、絵画は単なる事物の再現から解き放たれ、さらには現実世界の再現によらず、色彩と形態それ自体が自律する存在をもたらした抽象絵画へと突き進みました。一方で人間の無意識の視覚化を試みたシュルレアリスムが出現するなど、19世紀までの絵画のあり方を脱却するかのようなこれら一連のさまざまな流れを、本章では「モダン・アート」と称し、同時代の画家が手がけた前衛的な作品によって紹介します。
前章で紹介したモダン・アートと並行して、フランスの首都パリにはさまざまな国出身の画家たちが活躍していました。「エコール・ド・パリ」の画家と総称される彼らは、同時代に展開されたモダン・アートの影響を受けながらも、写実から離れることなく、それぞれの画家独自の作風を確立しました。本章ではエコール・ド・パリに属するこうした個性的な画家たちの作品を取り上げ、20世紀美術の豊かな実りを紹介します。