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2023年度コレクション展Ⅲ。特集:美術の中の物語。会期は2024年1月13日[土]-4月7日[日]
Story in Art
2023年度コレクション展Ⅲ 特集

美術の中の物語。会期は2024年1月13日[土]-4月7日[日]

兵庫県立美術館の所蔵するコレクションの中からテーマに沿って作品を展示する「特集」。今回は美術と物語をテーマとした展示を行います。
物語と関わりのある作品は、現在まで数多く制作されてきました。わかりやすい例としては、神話や聖書、歴史上の事件の一場面を題材とした絵画作品があげられるでしょう。また、小説の挿絵などテキストと深く関係した作品や、作者個々人の関心から出発し、独自の物語を立ち上げる作品など、物語と美術の関わり方は様々です。本展では、物語と関係の深い美術作品を部屋ごとに異なった視点から紹介します。美術と物語の多様な関わりを本展から感じていただけますと幸いです。
また、同時期開催の特別展「生誕120年 安井仲治展」に関連して、当館所蔵品を中心に日本近代の写真作品を展示します。


私たちの物語
常設展示室1

展示室1では、神話や聖書、歴史的な出来事など、多くの人に知られた物語を、作家がどのように視覚化したかということに注目します。そこには、数多くの制約が存在しますが、一方で画家たちは作品化に際して様々な工夫や独自の解釈を行いました。
例えば、神中糸子の《桃太郎》は、桃太郎伝説の冒頭の場面を描いた作品です。桃太郎は、昔話というより教訓的説話として国定教科書に掲載されていました。神中は、ファンタジーを回避するために、川を流れる桃を小さく描いています。また、和田三造の《朝鮮総督府壁画画稿》は、のろ鹿に導かれた木挽が天女と結婚するという朝鮮半島の伝説を主題としています。天人との婚姻譚は日本や朝鮮半島を含めた東アジア全体で見られる物語です。


画と文の物語
常設展示室2

文章(文)によって伝えられる物語に絵がつくと、それはいっそう直接かつ躍動的に私たちに伝わります。と、言いたいところですが、はたしてそうでしょうか? 文があっての絵。その場合は、確かにそうかもしれません。が、絵(画)が文をしのいで、独自の語りを始めたら・・・
ここでは、画と物語を語る文が、いっぷう変わった関係でからみあい、ユニークな物語をつむいだ作例として、柴田錬三郎の連載小説に横尾忠則が絵を担当した『うろつき夜太』の原画と、フランスで17世紀後半から18世紀にかけて多くの文章を書いたマルキ・ド・サドの劇にもとづいて20世紀の鬼才サルバドール・ダリが制作したリトグラフによる挿絵を展示します。


私とあなたの物語
常設展示室3

既に誰かの手で記された物語だけが、物語ではありません。
でんぐり返った群像が、社会の目まぐるしさを思わせる《日本アクロバット》(1958年)。敗戦から復興へという大きな物語の中で、中西勝という個人が感じたリアリティの表現であり、画家である私こそが描きうる時代の物語とも言えるでしょう。中馬泰文は、画面にMr. Moonなる独自のキャラクターを軽やかに反復し、見る者を詩的な世界へ誘います。森村泰昌は、よく知られた映画の主人公に扮することで、過去のストーリーを、21世紀を生きる私とあなたの物語として語り直します。
主に戦後から現代までの作品を紹介するこのパートでは、作者個々人の関心から出発し、独自の物語を今ここに立ち上げ鑑賞者と共有する、美術ならではの語り口に注目します。


関西写壇物語
常設展示室4

特別展「生誕120年 安井仲治展」に関連して、当館所蔵品を中心に日本近代の写真作品を展示します。
まず、「流氓ユダヤ」のシリーズから丹平写真倶楽部のメンバーだった椎原治と田淵銀芳の作品を展示します。安井仲治については、1937年に刊行された『写真実技大講座 第5巻 風景撮影の実際』所収の作品を安井の解説付きで展示します。よく作るとはよく見ることだと主張し続けた安井の言葉は、モノクロ写真鑑賞の一助となるでしょう。
1930年代に入って、写真雑誌などで関西写真界の動きが東京のそれと対比的に伝えられ、時に東西対決の様相を呈しました。9年にわたるニューヨーク、パリ滞在から帰国して28年に芦屋に移り住んだ中山岩太もその渦中の人でした。本展示室後半では、芦屋に転居後没するまでの中山の作品と芦屋カメラクラブでの盟友ハナヤ勘兵衛の作品を展示します。


近現代の彫刻―彫刻の中の物語
常設展示室5

西洋の彫刻では、古くから人体により神話や聖書の物語が表現されてきました。19世紀後半に登場したロダンは、ギリシア神話にもとづく《オルフェウス》のように、そこにドラマティックで個人的な感情表現を持ちこみ近代の息吹をもたらしました。
彫刻は、時代の大きな物語を共有するモニュメントとしても重要な役割を果たしてきました。ブールデル《勝利(頭部)》は、アルゼンチン共和国建国の父アルヴェアル将軍をたたえる記念碑と共に作られた寓意像から展開した作品です。
対して、作者自身が登場する福岡道雄の小品は、ごく私的な場面の彫刻です。石を持つ作品の姿は、しかし多くの人に、自らはどのような時に岩陰で石を持つのか、それぞれの物語を想起させるでしょう。


絵が語る人生
小磯良平記念室

画家の人生は一種の物語のようにも見えます。そして、その「物語」には転機となった重要な出来事、影響を受けた人物が登場することでしょう。神戸出身の洋画家・小磯良平の《T嬢の像》は遠縁の女性を描いた作品ですが、小磯はこの作品で第7回帝展の特選を受賞し、画壇に鮮烈なデビューを果たします。
小磯良平記念室では、このような画家の人生の転機を語る作品を紹介します。


風景画は語る
金山平三記念室

実景にもとづく風景画は、たとえ作者にその意図がなくとも、描かれた時代の眺めを記録し物語るドキュメントとなりえます。現地制作を信条に多くの風景を描いた金山平三の場合も、例外ではありません。
留学時代にパリを描いた《雨のプラス・ピガール》には馬車とメトロの入口が見られ、近代化の途上にある都市の姿が留められています。帰国後は日本各地に加え、中国や韓国にも取材していますが、ちょうど日本が東アジアに進出していった頃で、どこを描くかという選択自体が時代を物語ってもいるでしょう。戦後、住民票を移した山形県大石田の風景画は、根深い雪とともにあるこの地の暮らしぶりをしばしば語っています。

関連事業

学芸員による解説会

2024年1月27日[土]、3月2日[土]
各日15:00 - 15:45(開場14:30)
レクチャールーム(定員60名)
当日先着順、参加無料

ゆっくり解説会 in Winter(手話通訳・要約筆記付き解説会)

1月14日[日] 13:00 - 14:30
レクチャールーム(定員60名)
当日先着順、参加無料

HART TALK 館長といっしょ!

「京阪神のアートシーンの中での神戸、そして県立美術館-1970年代から今日まで」
アーティスト 藤本由紀夫氏
ヴォイスギャラリー代表 松尾 惠氏
2月3日[土]
14:00 - 15:30(受付:13:30~)
ミュージアムホール(定員150名)
当日先着順、参加無料

ミュージアム・ボランティアによるガイドツアー

会期中の毎週土曜日 13:00 - 13:30
定員20名、当日先着順、内容により要観覧券

こどものイベント

会期中に実施予定
(詳細は当館Webサイトにてお知らせします)