2019年、兵庫県では二つの充実したコレクションを受贈しました。
頴川コレクションは、大阪の実業家・頴川德助(1899~1976)の蒐集による日本美術を中心としたコレクションで、その過半は1973年に開館した頴川美術館(西宮市上甲東園)に受け継がれました。2019年3月末に運営母体の財団が解散、重要文化財4件、重要美術品4件を含む約250件の美術品等が県立美術館の所蔵に帰しました。
また梅舒適コレクションは、わが国を代表する篆刻家として知られる梅舒適(本名:稲田文一、1916~2008)が、約60年にわたる歳月をかけて自ら蒐集した文物で、中国近世・近代書画、文房具、典籍および梅舒適自身の書画篆刻作品等をご遺族よりご寄贈いただきました。今回は、コレクションのなかでも重要な位置を占める、呉昌碩(1844~1927)の作品を中心に展示します。詩・書・画・篆刻の四絶に精通し、近代中国でもっとも優れた芸術家とされる呉昌碩は、今なお日中の書画家の尊崇を集めています。
この受贈記念展は、頴川・梅コレクションの中から優品や資料的価値の高い作品を選りすぐり、はじめて広く公開するものです。日本・中国の美術をこよなく愛した両人を偲び、その高邁なご遺志を顕彰する機会になれば幸いです。