ハナヤ勘兵衛(本名・桑田和雄、1903-1991)は、戦前から戦後にわたって兵庫県芦屋を中心に長く活躍した写真家です。
大阪市西区に生まれた桑田は、1920(大正9)年、17歳の時に父にカメラを買い与えられたことがきっかけで写真家になる決意をし、同年に大阪の写真機材商の見習いとなります。その後上海に渡り同地でも写真術を修行し、1929(昭和4)年に芦屋に写真材料店を開業し、また自らの号を「ハナヤ勘兵衛」とします。翌年、芦屋を中心に活躍していた写真家の中山岩太(1895-1949)をはじめ、紅谷吉之助(1898-1946)や高麗清治(1897-1962)らと「芦屋カメラクラブ」を結成し、当時世界的に勃興しつつあった新興写真運動の一翼を担うこととなります。その後関西の写真界を代表するひとりとして、戦後にわたって精力的に活躍しました。一方で写真機材開発として、後年「ミノルタ16」となる小型カメラ「コーナン16」展示室6の開発なども手がけました。
当館ではハナヤのご遺族から、戦前の日本を代表する写真作品のひとつである《ナンデェ!!》(1937年)を含むヴィンテージ・プリントのほか、戦後に手がけた関西各地の景勝地を撮影した風景写真パネル等の寄託を受けており、それら寄託品の中には、「芦屋カメラクラブ」で一緒に活躍した紅谷や高麗、松原重三(1900-1962)らの作品も含まれています。
本展は、関西を代表するハナヤの写真家としての功績を、近隣の美術館の協力を得て開催するものです。近年では1995(平成7)年に芦屋市立美術博物館で展覧会が開催されましたが、本展はそれに続いての久々の回顧展となります。