第1章	博物誌から

タイトルにある「博物誌」は自然界の事物・現象を総合的に記述した書物の総称です。本章ではそれを拡大解釈して、人工物を含めた物を集めた作品を紹介します。
我々の身のまわりにある物は、作家によって集められ、作品に組み込まれることで新たなイメージをつくり出し、それまでとは異なる意味を持ち始めます。

  • 小野和則《時間採集 OBG-923》1984年

    小野和則《時間採集 OBG-923》1984年

  • 東山嘉事《題名不詳(赤い円2)》2003年

    東山嘉事《題名不詳(赤い円2)》2003年

横尾忠則《SUNTORY WHISKY》1978年

横尾忠則《SUNTORY WHISKY》1978年

第2章	イメージのアッサンブラージュ

映画、テレビ、雑誌から日々送り出される映像や写真、世の中に溢れるイメージを引用し、一つの画面に集めた作品を取り上げます。映画、広告、ポルノ雑誌から歴史上の絵画まで、出自の異なるイメージが乱立し、混沌と調和のはざまを行き交う光景は、現代の我々の心象風景ともいえるものでしょう。

第3章	アイデンティティ蒐集としてのポートレイト

一人の人間が様々なアイデンティティを潜在的に宿らせた集合体なのではないか、そう思わせる作品を本章では紹介します。自らの内から複数のアイデンティティの可能性を引き出して見せる作家のセルフポートレイトをご紹介します。

澤田知子《ID400》(部分)1998年 澤田知子《ID400》(部分)1998年

澤田知子《ID400》(部分)1998年 ©TOMOKO SAWADA , courtesy MEM

森村泰昌《肖像(ゴッホ)/小》1985−1992年

森村泰昌《肖像(ゴッホ)/小》
1985−1992年

第4章	O氏コレクション−ある蒐集家の像

本章で取り上げるのは、何かを集めて作品にしたものではなく、作品を集めて一つのコレクションをつくり出す蒐集家という存在です。個人の嗜好や知識を反映した個人コレクションは、それを集めた人間をもあらわす趣があるといえます。

第5章 蒐集による象徴

長谷川潔のシリーズ作品「マニエール・ノワール」は、描かれた対象の一つ一つに象徴的な意味が込められています。具体的な事物を集めることで抽象的な事象をあらわす彼の幻想絵画は、見るものの思考の飛躍を促します。漆黒の中に浮かび上がる静物や生き物たちが秘めるメッセージを読み解いてみましょう。

長谷川潔《静物“時”》1969年

長谷川潔《静物"時"》1969年

第6章 総合芸術作品

造形芸術、音楽、詩など、諸芸術を総合することを目指した「総合芸術作品」は、芸術という枠すら踏み超え、世のあらゆるものを幻視的に形づくる可能性を含んでいます。野村仁の「'Grus'Score」(鶴座の譜)シリーズは、飛翔する鶴の群をカメラで捉え、その形から作曲した、音と形による作品です。自然界の調和を写しとった独特の音楽を、目と耳で感じとってみましょう。

  • 野村仁《‘Grus’Score 010 Feb. 11, 2004 07:21》2004年

    野村仁《'Grus'Score 010 Feb. 11, 2004 07:21》
    2004年

  • 野村仁《‘Grus’Score 010 or Lapis Lazuli》2004年

    野村仁《'Grus'Score 010 or Lapis Lazuli》
    2004年

展示室5 近現代の彫刻/安藤忠雄コーナー

当館の収集の柱のひとつである彫刻から、ロダンをはじめとする海外作家が手がけた、さまざまな人体表現を紹介します。
また当館の設計者である建築家・安藤忠雄の関西でのプロジェクトを中心に、模型、写真、映像などで紹介するコーナーを併設します。

  • オーギュスト・ロダン《オルフェウス》1890年

    オーギュスト・ロダン《オルフェウス》
    1890年

  • オーギュスト・ロダン《痙攣する大きな手》1889年

    オーギュスト・ロダン《痙攣する大きな手》
    1889年

  • エドガー・ドガ《腕を前に上げて進む踊り子》1882年頃

    エドガー・ドガ
    《腕を前に上げて進む踊り子》1882年頃

  • レイモン・デュシャン=ヴィヨン《ボードレール》 1911年

    レイモン・デュシャン=ヴィヨン
    《ボードレール》 1911年

  • ヴィルヘルム・レームブルク《女性のトルソ》 1910-14年

    ヴィルヘルム・レームブルク
    《女性のトルソ》 1910-14年

斎藤与里《春》1918年

斎藤与里《春》1918年

展示室6 日本の近現代絵画・日本画の名品

春から初夏にかけて開催する本展では、この季節を主題にした日本画や書を、前期・後期に分けて展示します。
また、小出楢重、林武、吉原治良、松谷武判らによる洋画の名品もあわせてご紹介します。

小磯良平記念室

神戸生まれの小磯良平(1903-1988)は、近代洋画を代表する巨匠のひとりです。確かなデッサン力に裏打ちされた気品あふれる婦人像は、現在も高い人気を誇っています。《T嬢の像》、《肖像》、《斉唱》といった代表作を中心に、寄託品もあわせてご覧いただきます。

小磯良平記念室

金山平三記念室

神戸生まれの金山平三(1883-1964)は、風景画の名手として知られる近代洋画の巨匠です。落ち着いた色づかいと巧みな筆さばきによって、信州や東北など日本各地の風景を情感豊かに描き出しました。この記念室では、《大石田の最上川》をはじめとする代表作を選び出し、金山の画業を紹介しています。

金山平三記念室