近いかたち、遠いかたち−岡普司・重松あゆみ・中西學−

このかたち、あのかたち。かたちのそれぞれは、一体どうやって生まれる/現れるのでしょうか?どこからやってくる/どこかへつながっていくのでしょうか?3人の作家のそれぞれの「かたち」に触れていただきます。

「美術の中のかたち−手で見る造形」展は、兵庫県立美術館が前身の近代美術館時代から毎年開催しているシリーズ展です。1989(平成元)年の初回以来、常設展示室の一室を使い「視覚に障がいのある方に美術鑑賞の機会を」という趣旨のもと続けてきたものです。しかし、そうした趣旨にとどまらず、「見る」ことからはじまる美術館の中で、視覚とは何かを問い直してみようという意図もあわせもっています。
 さて、シリーズ第24回目となる今展では、「かたち」とは何か、「ある」ものなのか、「成る」ものなのか、あるいは「生まれる」ものなのかを今一度考えるため、ユニークな発想点から、めいめい異なる技術と材質を使って制作を続けてきた3人の作家の作品を展示します。

岡普司(1958年生まれ/京都市在住)

岡普司(おか・しんじ)は1958年、島根県に生れました。京都教育大学特修美術科を卒業後、京都市立芸術大学大学院で彫刻を学び、在学中より京都アンデパンダン展等に出品しています。1983年に京都のギャラリー16で個展を開催し、以来大阪の信濃橋画廊などでほぼ毎年個展を開催してきました。倉敷市や宇部市の野外彫刻展にも出品し、作品を設置しています。また、1996年には兵庫県立近代美術館で開催したアート・ナウにも出品しています。今回は、作者が長年扱ってきた鉄、再生パルプ、木による作品を展示します。作者の身体が直接、材質にはたらきかけることでできるかたちで、そこには運動の熱量と時間が封じ込められています。

岡普司
《THINK THE DEEP FROM THE SOURCE/源流から海溝を思う》
2006年

重松あゆみ(1958年生まれ/神戸市在住)

重松あゆみ(しげまつ・あゆみ)は1958年、大阪府に生れました。京都市立芸術大学および大学院で陶芸を学び、1982年には京展で市長賞を受賞しました。1984年の大阪のギャラリー白での個展以来、ほぼ毎年個展で新作を発表し続けています。2001年、2002年に相次いで開館した陶芸の専門美術館である茨城陶芸美術館、岐阜県現代陶芸美術館の第1弾展にも、中堅気鋭の作家として出品しています。シンプルで美しい色と面を持っていますが、そのかたちと空間はとらえがたく、わたしたちを迷いへといざないます。

重松あゆみ《Green Orbit》2011年

中西學(1959年生まれ/大阪市在住)

中西學(なかにし・まなぶ)は1959年、大阪市に生れました。大阪芸術大学美術学科絵画専攻を卒業し、1983年に大阪の番画廊で初個展を開催して以来、多くの個展で作品を発表してきました。1985年には、兵庫県立近代美術館で開催した「アート・ナウ」に出品し、その後も各地の美術館やギャラリーでのグループ展に何度も出品しています。今回出品していただく《アムルタ》は、2006年に大阪の海岸通ギャラリーCASOで開催した個展「原始のスープ−共時性−」の出品作のひとつで、乳の海を攪拌し不死の飲み物をつくるというインドの神話に想を得たものです。

中西學《アムルタ》2006年

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