「もっと怖い絵をかこう!」
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平成29年8月26日(土) 午前の部10:15〜12:30/午後の部14:00〜16:15
「怖い絵」 展 関連 こどものイベント「もっと怖い絵をかこう!」を開催しました。午前の部・午後の部を合わせて41名のみなさまに参加・参観していただきました。
1、オリエンテーション
受付を済ませてから、「怖い絵」展担当の岡本学芸員から、展覧会や展示してある作品について紹介してもらいました。
岡本学芸員がみなさんに見せているのは、今回の展覧会オススメの、ウォーターハウスさんが描いた《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》という作品の資料です。
キルケーさんはギリシア神話に登場する魔女なのですが、こちらの作品では、とっても美しい姿で描かれていて魅力的です。キルケーさんは、英雄のオデュッセウスさんに、飲むと動物の姿に変わってしまう薬の入ったお酒を差し出しています。もちろん、そんな薬が入っていることは内緒で。こ・・・こわい!

「怖い絵」展では、このように、描かれている物語のことや、どうしてその場面を絵に描いたのかがわかったときに感じる「恐怖」がかくれている作品を集めて展覧会にしています。このアイデアは、中野京子さんが書いた『怖い絵』という本をもとにしたもので、美術館を利用することが少なかった人にも、関心を持ってもらえるような展覧会となりました。
参加者のみなさんには、こちらのワークシートを配布しました。
表紙は上の写真のように《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》が印刷されています。
こ・・・こわい〜!

表紙をめくると、展示室でメモやスケッチをするためのページがあります。
キルケーさんのお話以外にも、なんだかこわそうな絵があるようですね・・・。
本物の作品をみるのが楽しみになってきました!

3つのグループをつくり、展示室でのマナーを確認して、ワークシートの準備ができたら展示室へ出かけましょう。
2、展示室でギャラリートーク
嬉しいことに、展示室は満員御礼!
一般のお客様の迷惑にならないよう、細心の注意を払ってグループ毎にギャラリートークを行いました。

こちらは最初に紹介した《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》です。
本物をみると、キルケーさんのまわりに豚やカエルが描かれているのがよくわかります。実は、オデュッセウスさんよりも先にキルケーさんのところへ来ていた弟子たちが、すでにあの薬の入ったお酒を飲まされていたのです!
キルケーさんのふわっとした髪の毛や服、鏡に映ったオデュッセウスさんの横顔・・・まるで絵を見ている人もその場所にいるかのような気分になりますね。
こちらは、フューズリさんの描いた《ミズガズルの大蛇を殴ろうとするトール》という作品で、神話の一場面を描いています。
ナビゲーターは、こちらも展覧会担当の小林学芸員です。

画面の真ん中にいるのがトールさん。彼はとても強い神様なのですが、その彼が今まさに大きな蛇を倒そうとしているところです。海にしぶきがあがって、ものすごい迫力!
よくみると、トールさんの舟に一緒に乗っている人がいますが、この人は「もう今すぐ逃げたい!」というように後ろへのけぞるような姿勢をとっています。
この後どうなったのか、気になります・・・。
こちらは、ジョセフ・ライトさんの《老人と死》という作品です。こちらのナビゲーターは、こどものイベントでもおなじみの遊免学芸員です。

絵の真ん中におじいさんが描かれていますが、その視線の先には死神(ガイコツ)が・・・!
おじいさんが山での仕事に疲れて「もう死んでしまいたい・・・」とため息まじりにつぶやいたとき、本当に目の前に死神が現れたので、やっぱり死にたくない!と思いなおした瞬間なんですって。
イソップ寓話の1つですが、こうして絵になっていると、実際にそういう出来事が起こったのではないか?と思えるほどです。死神(ガイコツ)がおじいさんに歩み寄ろうとする手足の描き方は、本当に今にも動き出しそう!です。
この後、おじいさんはどうなってしまうのかしら・・・心配です。
こちらは、チャールズ・シムズさんが描いた《小さな牧神》という作品です。

午後の部では、展示会場がとっても混み合っていたので《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》の代わりに、岡本学芸員のギャラリートークをこちらの作品に急遽変更しました。
こちらの作品は、ぱっと見たところ暖かい日差しの中、庭先で楽しく食事をしているように見えるのですが、よくよく目を凝らすと、人間ではないものが描かれているのです!
食卓の上にあがって木の枝や花に触ろうとする男の子、そのすぐとなりには、こどもサイズの牧神(ヤギの角と足をもっている)・・・?また、画面の左奥に描かれている木の陰に誰かが隠れているようです。それに気付く様子もなく、食事をしている楽しげな女性たちと男の子。
牧神や人影は何かの予兆を示しているのでしょうか、それとも・・・?
一般のお客様で混み合っていましたが、ギャラリートークは大盛り上がり!

みなさんに配布していたワークシートにメモをとってくれた人もいました。
どんな絵が描いてあるか、自分の言葉でしっかり書けています!
ギャラリートークで取りあげた作品の他にも、気になった作品についてメモをしてくれました。

どんなお話の、どんな場面を絵にしているかがわかってくると、もっと作品のことを好きになれますね。
3、もっと「怖い絵」をかこう!
展示室からアトリエへ戻ったら、みなさんも「怖い絵」にチャレンジしましょう。

“もっと”怖い絵というのは、“物語をもっと自分の中で膨らませてみよう”という意味です。なので、今回は、絵で描いても良いし、小説のように文字で表しても良いし、絵にふきだしをつけたりコマ割りをして漫画のようにしたりしても良いことになっています。
画材も、鉛筆だけでも良いし、色鉛筆やペン・クレパスを使っても良いです。
それぞれ自分の表しやすい方法でつくってみよう!
まずは、どんなストーリーで、どんな場面をつくるか、アイデアを練ります。

展覧会の図録をみてヒントを探したり、
美術館の人と相談してみたりして、

アイデアスケッチをしたら・・・

本番の画用紙にかいていきましょう!

キルケーさん、人気です。
もちろん、トールさんも!

自分なりにオリジナルの登場人物やストーリーを考えてくれた人もいて、「どんなお話なの?」と聞くとすらすらと物語を語ってくれました。

こわ〜い感じの絵もできあがってきました!
区切りのついた人から、イーゼルに飾り、発表会の準備です。

他の人がどんなお話をつくったのか、興味津々!
発表会では、自分のつくった作品とそのストーリーを一人ずつ紹介してもらいました。
ストーリーを語っていくうちに、どんどん想像が膨らんでいきます。

高校生のお姉さんは、英雄のオデュッセウスさんと魔物のセイレーンさんを登場人物にして、セイレーンさんの切ない恋心を描いていました。そんな切り口があったとは!
他にも、キルケーさんが毒薬ではなくコーヒーを淹れてくれるお話や、妖精さんたちが悪魔から人間を助けてくれたりするお話を考えた人がいました。ふむふむ、なるほど。
4、ギャラリー












5、のりちゃん先生からひとこと

今回のイベントを終えて、「恐怖」という感覚に、人間はこんなにひきつけられる/想像力をかきたてられるものなのか!と驚きました。展示室でのギャラリートーク中も、アトリエでの制作中も、こどもたちは、想像するために頭を働かせている真剣な表情をしていたのです!
こどもたちのつくった作品の中には、刃物や血が描かれているものもありますが、彼らがそういったことにいつもとらわれている訳ではありません。「こんな物語だったらどうかな・・・」と想像してみたら、「なんだか怖くなってきた・・・でも、想像することっておもしろいかも!?」と感じているということが見てとれました。
神話や文学を含めた“芸術”を味わうとき「恐怖」の感覚を想像できた方が、よりその作品のことを理解できたり、心に残ったりすることがあるので、大人の私たちは、こどもたちの「恐怖」の感覚に無理矢理フタをせず、その成長を見守ることができればいいなぁと思います。
あ〜、こわかった!!
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