「水墨画に挑む」
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平成28年4月30日(土) 10:30〜15:30
生誕180年記念富岡鉄斎−近代への架け橋−展関連こどものイベント「水墨画に挑む」を開催しました。
こども・おとな合せて38名のみなさまに参加していただきました。
日本の最後の文人画家(ぶんじんがか)といわれている、兵庫県ゆかりの富岡鉄斎さんの展覧会に合わせて、水墨画を描くイベントを開催しました。鉄斎さんは「万巻(ばんかん)の書を読み 万里(ばんり)の道を行く」(かんたんに言うと、「たくさんの本を読んで学び、遠くの国を旅してまた学ぶ」ということ)を実践した学者でもありますが、水墨画での筆遣いはとっても自由!水墨画を描くことで、みんなの心が鉄斎さんに近づくといいなぁ〜という思いで行いました。

鉄斎さんが愛した富士の風景・・・渋くてかっこいい!
今回は、大阪国際大学の村田隆志先生を講師に迎え、水墨画の「技」を教えてもらいました。

こちらは展示室でギャラリートークをしている様子です。詳しくは後のお楽しみ!
1、受付
いつものように、受付を済ませたら名札をつくります。

こどものイベントの参加者のみなさんのうち、1割程度の方がリピーターです。
美術館のスタッフもボランティアのみなさんも、美術館で再会できるのをとっても楽しみにしています。
全員そろうまでの待ち時間、村田先生がこっそりお手本を作成しています。

黄色いエプロンをしたお兄さん・お姉さんは、村田先生の大学の学生さんです。お手伝いに駆けつけてくれました。
こちらがお手本。水墨画、はやく描きたいなぁ〜。

2、オリエンテーション
展覧会担当の飯尾学芸員(左)と村田先生(中央)が自己紹介しているところです。

まずは、村田先生から水墨画の描き方について簡単に紹介してもらいました。

村田先生の手元を大きく映し出して、描く手順をみんなにわかりやすく解説してもらいました。


筆のばねを使って「はらい」をかくと、めだかやきんぎょ、もみじを描くことができます。
筆の毛先を紙に押し付けてねじると、毛先がバラバラに割れます。これを「割筆(わりふで)」といって、わざとがさがさした描き方にするために使います。写真のように、きのこのかさの部分を描くときに利用しています。
その他、松の太い幹や竹の描き方の手順も教えてもらいました。
さらに、指で直接描く「指頭画(しとうが)」の技法も紹介してもらいました。

こちらの写真では、ぶどうの粒を指で描いているところが写っています。
鉄斎さんも、大胆に「指頭画」を描くこともしていたそうです!!
水墨画の描き方がわかってきたところで、展覧会を担当した飯尾学芸員にバトンタッチして、鉄斎さんの作品や人生について簡単に紹介してもらいました。

たくさんの書物に囲まれて、筆をとる鉄斎さんの写真が今も残っています。
鉄斎さんはとても長生きで、87歳まで生きました。その長い人生の中で、昔の人が書いた本を読んだり、日本全国を旅してまわったりして、生きるための智恵について深く考えたり、自然の美しさや、自然と共に生きる人々の生活のすばらしさを詩と絵にして水墨で表したそうです。
3、展示室へ鉄斎さんの作品をみにいこう!
鉄斎さんの水墨画に興味がわいてきたところで、2つのグループに分かれて、展示室へでかけます。

展覧会の会場までの廊下に、鉄斎さんの写真がズラリと飾ってあります。
写真をみていると、鉄斎さんの生きた明治・大正時代にタイムスリップしたみたいだね!
こちらは飯尾学芸員が《富士山図》についてお話しているところです。

うすい雲が流れていく様子や山頂のごつごつした感じを、墨の濃さと筆づかいで表しています。山のすそには絵の具を使って緑を描き、中心あたりに墨で鳥居も描いています。
迫力のある大きな画面なので、みんなも息をのむように鑑賞していました。
こちらは村田先生が《松芝剛頸図(しょうしごうけいず)》についてお話ししているところです。

松や竹などの植物が力強く描かれています。松葉のとがった感じや幹のでこぼこした様子を、墨の水分を調整して描いています。部分によって筆の運び方が全然ちがうので、みていて飽きないですね。
グループで鑑賞した後は、各自ゆっくり鑑賞しました。

気になった作品をじっくりみていると、鉄斎さんがその風景や人にどんな気持ちを抱いていたか伝わってくるようです。

鉄斎さんみたいに、自由自在に描けたら楽しいだろうなぁ…
4、水墨画の練習をしよう
展示室からアトリエに帰り、お昼休憩をとりました。
午後から水墨画を描く練習をしようと考えていたのですが、みんな休憩中も水墨画を描いてみたくてうずうずしていたので、準備のできた人から少しずつ練習を始めました。

午前中に村田先生から教えてもらった、基本の描き方を試しています。
筆のバネを使ってはらい、めだかやもみじに挑戦!

描いて…描いて…

描いて…

とにかく、描きまくります!!
色を入れたいところには、顔彩(がんさい)という絵の具を使うことにしました。

一度手をとめ、書画カメラを使い壁に村田先生の手元を映して、顔彩の使い方を紹介してもらいました。
顔彩は使ったことのない人が多かったので、席を回って丁寧に使い方を教えてもらいました。
水にひたした筆で固まっている絵の具を溶きます。1本の筆でも、筆先と筆の根元で違う色を含ませれば色同士がきれいに混ざって、花びらや葉っぱのみずみずしい感じが表現できます。

みんなのまなざしが真剣そのもの!
5、うちわに水墨画を描いてみよう!
水墨画の練習をしていたら、あっという間に 時間が過ぎてしまいました。

みんな、描くのが得意になってきたので、最後は「うちわ」に描いて仕上げます!
本番の「うちわ」に描く前に、どんなふうに描くかもう一度練習しましょう。

墨の濃淡をうまく利用できていますね。鉄斎さんの愛した富士山…。
さっそく顔彩も使いこなしています。

赤で描くと、より一層きんぎょが生き生きとみえてきます。どんどん試しましょう。
描いてみたいもののお手本を村田先生に描いてもらって、

試して…
うちわの大きさにおさまるかどうか

試して…

試して…試して…試していきます!!
このうちわは試作品ですが、みんながうちわに描き終わったら、この試作品のように落款(らっかん)を打ちます。一つは「兵庫県立美術館」、もう一つは「少而益壮」と彫った消しゴムはんこを用意しました。

鉄斎さんが使っていた落款の「老而益壮(おいてますますさかんなり)」をもとに、こどもたち向けにアレンジして「少而益壮(わかくしてますますさかんなり)」という落款を作ってはどうかという村田先生のアイデアを実現させました。
鉄斎さんにとって「老而益壮」とは、年齢を重ねてさらによく学問や詩・画に熱心に打ち込もう、という気持ちの表れだったと思います。こどものイベントの参加者のみんなは、まだまだ若いけれど、鉄斎さんに負けない意気込みで作品づくりをしていたので、ふさわしい落款になったと思います。
うちわに仕上げた作品に、落款をでんぷんのりで貼りました。

うちわには、骨があってでこぼこしているので、あらかじめ落款を打った和紙を用意しておいて、それぞれ好きな場所にのりづけしています。
6、ギャラリー(※村田先生におねだりして一緒にかいてもらったものもあります)







7、まとめ
みんな、とっても熱心に作品を仕上げているので、まだまだ描きたい!という人もたくさんいましたが、今回はこれで終了です。

鉄斎さんの作品のこと、水墨画の描き方のこと、みんなで感想を発表し合いました。
うちわは1人につき2枚用意していたので、おうちでも続きを作ってほしいと思います!
8、のりちゃん先生からひとこと

今回は、鉄斎さんのように、描き方の「型」にとらわれず、自分が描きたい!と思ったものを純粋に・楽しく・納得のいくまで描くイベントにしたい、と思って開催しました。そのため、とにかく練習や試しの時間が十分にあるように心がけて計画を立てました。いざ当日になってみると、こどもたちがアトリエのあちこちで村田先生を呼び、次から次へと手ほどきを受けたり、お手伝いの学生さん・ボランティアさん・私たち美術館のスタッフもこどもたちと一緒になって「あれやこれや」と試行錯誤したりと、アトリエの中が創作意欲の熱でいっぱいにあふれました。時間が足りない!と思うほど、水墨画を描くことに夢中になれる場所をつくることができて、とても嬉しいです。
鉄斎さんもきっと、こんな創作意欲や好奇心・探究心にあふれた人だったんだろうな…としみじみ思いました。
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