兵庫県立美術館では、前身の県立近代美術館が開館した昭和45(1970)年以来、作品の充実に努めてきました。それらを積極的に紹介し変化ある常設展示室の演出を心がけるために、当館では1年を3期に分けて、それぞれ展示のテーマを設けることによって、横断的にコレクションを紹介しています。
平成から令和へと時代をまたがった本年度第3期目となる今期の常設展示室では、「もうひとつの日常」と称して、複数に分かれた当館の展示室ごとにそれぞれテーマを設け、それらが相互に関連しつつ全体を循環する内容として企画しています。
ふだんわたしたちがなにげないものとして認識している「日常」は、しかし戦争や災害などによって失われたとき、それ自体がかけがえのない存在として思い起こされます。美術家はそうした日常やあるいは非日常のそれぞれで表現活動を行い、美術館は機会があるごとにそれらを展示し紹介し、さらにはコレクションしてきました。こうしたことの繰り返しこそが、美術館の本来めざすべき姿といえるでしょう。この展示がそうした美術館のめざすべき姿へのひとつのささやかなきっかけとなれば幸いです。
展示構成 | |
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第一室(常設展示室1) | 朱夏:永遠に向かって |
第二室(常設展示室2) | 白秋:この慈しむべき日常 |
第三室(常設展示室3) | 玄冬:「非日常」という名の日常 |
第四室(常設展示室4) | 青春:新たなる日常-永遠に向かって |
第五室(常設展示室5) | 近現代の彫刻 |
小磯良平記念室 | もうひとりの小磯良平-肖像画と静物画を中心に |
金山平三記念室 | もうひとりの金山平三-人物画を中心に |
大画面に無限に広がるストロークや色彩、無限に循環する円の動き。日々制作することを自らの日常の使命とした美術家の作品には、大作を志向する傾向の見られることがあります。ここでは、そうした循環する、あるいは永遠に続くイメージを喚起させる現代美術作品を中心に展示します。
一方で美術家は、わたしたちの生活の取るに足らないような日常を、作品の制作を通じて可視化することもあります。作品に立ちあらわれた日常からは、その作品が制作された当時の生活様式や社会を垣間見せてくれることもあります。ここでは、そうしたなにげない日常を扱った作品を中心に紹介します。
中山 岩太 《家族写真(清水登之家)》 1922-26年 ゼラチンシルバープリント 中山岩太の会所蔵(兵庫県立美術館寄託) |
わたしたちの「日常」は、戦争や災害といったきっかけを元にその様相を変え、それまでとはまったく異なる意味合いをもたらすことがあります。ここではそうした状態にあって、美術が果たした役割、さらには美術作品が存在する/しないことの意味を再考します。
「非日常」という意味を再考した後、ふたたび「日常」を振り返るべく、わたしたちの生活のなにげない日常をとらえたさまざまな作品を展示し、美術家が手がけた作品と、その作品を鑑賞するわたしたちとの関係やそれぞれのかけがえのない「日常」を振り返ります。
コレクション展Ⅱに続いて、ブロンズや鉄などのさまざまな素材で制作された彫刻作品を展示します。
清楚な女性像で名高い小磯良平には、「肖像画家」という側面もありました。とりわけ戦後には各界の高位な人々を描いてきました。それらをまとめて紹介するとともに、小磯の人物画に描きこまれるさまざまなモチーフを思い起こさせる静物画もあわせて展示します。
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日本各地の風景を印象深く描いてきた金山平三は、数が少ないながら人物画も手がけてきました。それらは金山独特の人物観察に基づく不思議な魅力を備えています。それらとあわせて、金山が小さな人物を描きいれた風景画も紹介します。
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