怖い絵展 Fear in Painting 2017年7月22日[土]~9月18日[月・祝]

1 神話と聖書

ギリシャ・ローマ神話や聖書で語られる物語は、必ずしも幸福なものばかりではなく、人間が苦難を強いられたり、悲劇的な結末を迎えるものも少なくない。というのも、神話や宗教は、本質的に人間には抗うことのできない超越的な力や摂理を抽出するものだからである。本章では、神の意志や気まぐれに翻弄される人間の悲喜劇を描いた絵画を紹介する。


さあ、お飲みなさい。
「ようこそお越しくださいましたね。まずは一杯いかが?」 玉座から悠然とほほえむのは、アイアイエー島の女王キルケー様。差し出された右手には、なみなみと酒の注がれた杯が。鏡に映る英雄オデュッセウス。これを飲まなきゃ男じゃないよ。でも、キルケー様は恐ろしい魔女だというし、先に様子を見に行かせた部下たちも帰ってこない。さあ、どうする!?
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》
1891年 油彩・カンヴァス オールダム美術館
© Image courtesy of Gallery Oldham

2 悪魔、地獄、怪物

ヨーロッパのキリスト教世界では、人間を堕落させ悪の道へと誘う者として悪魔という存在が想像された。また、人間が死後になって生前の罪の報いを受ける場として地獄のイメージが長きに亘って培われた。本章では、近代にまで命脈を保った悪魔や地獄のイメージや、それに近い怪物の主題を描いた作品を紹介する。


夢で逢い魔障。
おいらの名前は夢魔インクブス。睡眠中の女の子の部屋に忍び込むのが大好きなんだ。こうやっておなかの上に座り込むと、ほうら、楽しい夢が見えるだろう?
…誰だ?おいらのお楽しみを覗いている奴は。心配しなくても明日の晩は、あんたを訪ねてやるよ。
ヘンリー・フューズリ《夢魔》
1800-10年頃 油彩・カンヴァス ヴァッサー大学、フランシス・リーマン・ロブ・アート・センター
© Frances Lehman Loeb Art Center, Vassar College, Poughkeepsie, New York, Purchase, 1966.1

3 異界と幻視

人は、自らの日常生活の外にそれとは違う論理に支配された異界というべき空間を想像してきた。とりわけロマン主義以降の美術では、異界が時として日常生活の狭間や我々自身の内面に発生する様子を幻視するかのような作品が数多く生み出された。本章では、我々の住む世界の自明性を脅かすさまざまな異界の表現を紹介する。


ちいさい人、みぃつけた。
緑のお庭で遊ぶママと赤ちゃん。ぽかぽか陽気でいい気持ち。
…と思っていたら、あれれ、そこに置いてあったお洋服が勝手に動いてる? よく見ると、あらかわいい、小さな妖精さんがいっぱい。 でも待ってぇ、持ってかないでぇ!
チャールズ・シムズ 《そして妖精たちは服を持って逃げた》
1918-19年頃 油彩・カンヴァス リーズ美術館
© Leeds Museums and Galleries / Bridgeman Images

4 現実

人間が生きる現実は、様々な恐怖と苦悩に満ち満ちている。なかでも最大にして最も普遍的な恐怖は死である。死は、それをもたらす犯罪や戦争とともに、画家たちにとって重要な主題であった。また、現実の世界には、死以外にも様々な不条理が潜んでいる。本章では、死の場面を中心に、現実の中に存在するいくつもの闇を描いた絵画に焦点を当てる。


やがて親子は
ころがり落ちるのでしょう。
ジンなんて、そんな強い酒ばかり飲んでたら体に毒だよ。せめてビールにしときなよ。 えっ、ジンのほうがずっと安上がりだし、さっさと酔えたらなんでもいいって? しょうがないなぁ。あんたたち病気だよ…。うわっ、ちょっ、お母さん! こども、こども!
ウィリアム・ホガース 『ビール街とジン横丁』より《ジン横丁》
1750-51年 エッチング、エングレーヴィング・紙 郡山市立美術館
© Koriyama City Museum of Art

5 崇高の風景

18世紀から19世紀にかけてのロマン主義時代、なんらかの感情や気分を暗示的に表現する風景画が生み出された。本章では、特に「崇高」の美学を反映した作例を取り上げ、背後に隠された不安や恐怖の感情を読む。


いま荒城の空の雲
変わらぬ光誰がためぞ。
ウェールズの荒涼たる岩山に建つ古城。13世紀、この地の支配を巡り、オワインとルウェリンという兄弟が骨肉の争いを繰り広げた。武運つたなく敗れた兄は、この城に20年以上の長きにわたって閉じ込められ、恨みの血涙を流したという…。
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー 《ドルバダーン城》
1800年 油彩・カンヴァス ロイヤル・アカデミー
© Royal Academy of Arts, London; Photographer: Prudence Cuming Associates Limited

6 歴史

人間の歴史とは、激しい権力闘争の歴史でもある。ヨーロッパにおいてもそれは例外ではなく、一度は栄華を誇った王侯貴族であっても、ひとたび争いに敗れてしまえば悲惨な末路が待ち受けていた。本章では、歴史を彩る悲劇的なエピソードや運命に翻弄された人々の姿を描いた作品を特集する。


お坊さんに連れられて逝っちゃった。
時は16世紀、チューダー朝のイギリスでは、王侯貴族がカトリックとプロテスタントに分かれて血で血を洗う抗争を続けていた。そんななか、イギリス史上初の女王となったのが、プロテスタント側に担ぎ上げられた弱冠16歳の少女ジェーン・グレイである。だが、わずか9日後にカトリック側の反撃によって王座から引きずりおろされる。そんな彼女を待ち受けていたのは無残な死であった。
ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》
1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー
Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey
© The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

怖い絵展
Fear in Painting

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同時開催 県美プレミアム 「小企画:美術の中のかたち 手で見る造形 青木千絵展 漆黒の身体 /特集:みなと物語 新収蔵品を交えて」 (2017年7月8日[土]―10月15日[日])
同時開催 横尾忠則現代美術館 「開館5周年記念展 ヨコオ・ワールド・ツアー」 (2017年4月15日[土]―8月20日[日])
同時開催 横尾忠則現代美術館 兵庫県政150周年記念先行事業「開館5周年記念展 横尾忠則 HANGAJUNGLE」 (2017年9月9日[土]―12月24日[日])
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