兵庫県立美術館
曽野正之さん×蓑館長 アートトーク 終了しました。
後日、講演の要旨をこのサイトで報告します。

次回のやなぎみわさん×蓑館長 アートトークは、1月31日(木)10時より受付開始です。
 開催趣旨
経済・情報のグローバル化や技術革新が急速に進み、多様な価値観が生まれつつある現代社会。その中で「美術」の創造性はどのような拡がりの可能性を秘めているのか−兵庫県立美術館は、そのような視座から、「美術」にルーツを持ちながらも美術分野以外のジャンルにおいて創造的な活動を国際的に展開している兵庫ゆかりのクリエイターをお招きし、3回の連続講演会を開催します。
「創作分野」と「国境」という二つのボーダーを軽やかに超えて活動する3 人のトークゲストには、それぞれの創作の流儀から、美術の持つ普遍的な創造性、美術館やアートのあり方などについて、当館の蓑館長とともに語り合っていただき、150 周年を迎えた兵庫の未来について考える機会とします。

第1回 2018年11月24日(土)原田マハ(作家)
第2回 2019年1月13日(日)曽野正之(建築家)
第3回 2019年3月2日(土)やなぎみわ(美術作家、舞台演出家)

*各回ホスト:兵庫県立美術館長 蓑豊 (各講演の後半に蓑館長とトークゲストの対談を予定)

 トークゲスト
終了しました。

原田マハ

〈美術× 文学〉

元キュレーターにしてベストセラー作家。
アートへの愛が豊かな物語を紡ぎ出す。

©森栄喜

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒。森ビル森美術館設立準備室、同室からの派遣でニューヨーク近代美術館勤務を経てフリーのキュレーターとして独立。2005年『カフーを待ちわびて』で作家デビュー。12年に『楽園のカンヴァス』で第25 回山本周五郎賞受賞、17 年に『リーチ先生』で第36 回新田次郎文学賞受賞。他に『暗幕のゲルニカ』『アノニム』『たゆたえども沈まず』『スイート・ホーム』など著書多数。

※ 講演会終了後、原田マハさんのサイン会実施(当日の書籍購入者に限る。一人一冊まで)


終了しました。
©GION

曽野正之

〈美術× 建築〉

テクノロジーだけでない、
人間の為の、美しい《火星の氷の家》を求めて。

1970年兵庫県西宮市生まれ。神戸大学及びワシントン大学にて建築修士号取得。ニューヨークを拠点に文化施設から宇宙建築に及ぶ多様なプロジェクトに携わる。2005年ニューヨーク市によるスタテン・アイランド9.11メモリアル国際コンペ優勝作品によりアメリカ建築家協会公共建築賞受賞。2010年オスタップ・ルダケヴィッチとCLOUDS Architecture Office設立。2015年アメリカ航空宇宙局 (NASA)が主催する火星住居設計国際コンペにて優勝。ヴィトラ・デザインミュージアム、森美術館、ルイジアナ近代美術館等にて作品を展示。現在ANAとJAXAによる宇宙技術開発施設「AVATAR X LAB」を大分県に設計中。


Staten Island 9/11 Memorial 2004年 ©Brian Mosbacher

Mars Ice House イメージパース 2015年 ©Clouds AO/SEArch

やなぎみわ

〈美術× 演劇〉

すべては個々に分散する。
すべてはひとつに戻る。
現代美術と野外劇という対極の表現。

神戸市生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。学生時代は工芸を専攻。国内外で多くの展覧会を開催し、2009年第53回「ヴェネツィア・ビエンナーレ」美術展日本館代表作家となる。11年から本格的に演劇活動を始め、美術館や劇場で公演した後、15年『ゼロ・アワー東京ローズ最後のテープ』で北米ツアー。16年夏より台湾製の移動舞台トレーラーによる野外演劇『日輪の翼』(中上健次原作)を、熊野をはじめ各地で旅巡業している。2019年2月より、10年ぶりの美術館個展が全国巡回する。


野外劇「日輪の翼」2017年 企画演出/やなぎみわ 原作/中上健次 ©bozzo

「女神と男神が桃の木の下で別れる」より「川中島白桃」2016年 Digital Print
 ホスト

  兵庫県立美術館長  

 蓑 豊

1941年金沢市生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ハーバード大学大学院美術史学部博士課程修了、文学博士号取得。カナダ・モントリオール、米国・インディアナポリス、シカゴの各美術館にて東洋部長を歴任。1996 年大阪市立美術館長、2004年金沢21 世紀美術館初代館長に就任し、2005年より金沢市助役も兼務。2007年4月、金沢21世紀美術館特任館長、大阪市立美術館名誉館長となり、同年5月、オークションハウスのサザビーズ北米本社副会長に就任。2010年4月より兵庫県立美術館長。

 実施概要
開催場所 兵庫県立美術館 ミュージアムホール
参加料 無料(要事前申し込み、先着250名まで。)
開始時間 各回 14時から(約90分) 入場は30分前から
主催 兵庫県立美術館、兵庫県立美術館ギャラリー棟活性化実行委員会

申し込み方法

各回の開催日30日前から兵庫県立美術館ホームページの専用フォームから受付を開始します。
(各申込日時に申込フォームへのボタンを表示します。)

第1回 原田マハ

2018年11月24日(土)

申し込み開始日時:
10月25日(木)10:00


終了しました。

第2回 曽野正之

2019年1月13日(日)

申し込み開始日時:
12月14日(金)10:00


終了しました。

第3回 やなぎみわ

2019年3月2日(土)

申し込み開始日時:
2019年1月31日(木)10:00

※兵庫県立美術館ホームページ内の「兵庫県美ボーダレスアートトーク」専用申込フォームから申し込みます。受付完了後、確認メールを自動送信します。


※申し込み締切となった場合は、兵庫県立美術館ホームページでその旨を告知します。
 お知らせ
1月17日更新

原田マハさん講演記録(2018年11月24日/第1回・兵庫県美ボーダレスアートトーク)

「境界線を越えて 美術と文学 ボーダレスな活動」
「大好きな神戸、大好きな兵庫へまた帰って参りました。」関西学院大学文学部日本文学ご出身であり、神戸に縁のある原田マハさんにとって、兵庫県、神戸、西宮は大学時代を過ごした特別な場所であるという。友人が住んでいた芦屋川の桜、母校の関西学院大学、谷崎潤一郎の別邸(谷崎が大作『細雪』を書いた邸宅で、原田さんは谷崎をテーマに卒論を書いた)、宝塚・・・。こうした兵庫の名所は、憧れの地として原田さんの小説にも度々登場している。
また原田さんは、松方幸次郎(川崎造船所の初代社長、神戸ガス、神戸新聞の社長でもあった神戸縁の人物、そして国立西洋美術館(東京)に所蔵されている膨大な作品群―松方コレクションを遺した文化人)について調査をする目的で最近兵庫に足繁く通っているそうであるが、この松方コレクションの辿った数奇な運命について書いた小説「美しき愚かものたちのタブロー」を現在週刊文春にて連載中である。
ベストセラー作家でありながら、現森美術館キュレーターとしての経験もある原田マハさん。アートと文学の領域を横断し活躍する彼女の考える「ボーダレス」とは、一体何なのか?



ボーダー、あるいはボーダレスについて
「まず、皆さんに、一枚のアートワークを観て頂きます。これを見たご自分の第一印象を心に留めて頂きたい。どんな印象を持たれましたか?空が見えましたか?海が見えましたか?水平線がみえましたか?それとも、全部が見えましたか?」
原田さんがスライドで見せたのは、杉本博司の代表作「sea scape(海景)」。世界中の海を様々な季節・時間の中で撮影したシリーズ作品である。原田さんは、杉本博司の「海景」をこの講演会におけるひとつの提案(subjection)として提示した。
原田さんにとっての「境界線」とは、自分の中におけるテーマ、問いかけである。同氏はこれまで自身の小説の中でさまざまな「境界線」について取り上げてきたという。

「境界線」をテーマとして書いた最初の作品は『さいはての彼女』(2008)。北海道を舞台とした短編集で、登場人物の少女ナギは耳が聞こえないが、大きなハーレーに乗っていて振動でバイクの気持ちが分かる。子どものころに聴覚を失ったナギは、心に深い傷を負っており、彼女と友達との間にある線のようなものを越えていくことができないと嘆いている。そんなナギに対し、彼女の父親は「そんな「線」はどこにもない。もしあるとしたら、お前が勝手に引いた「線」なんだ。そんなもん、超えていけ。どんどん超えていくんだ」と励ます。

2番目に出てくる「境界線」は、明確に「国境」について書いた作品である『翼をください』(2009)。原田さんが小説家になって間もない2006年ごろ、毎日新聞で4年に渡り連載された作品で2009年9月に刊行された。この作品はアメリア・イアハートという実在の人物をモデルに描かれた歴史小説であるが、世界の列強が軍拡を進め、国境を守ろうとする1930年代を舞台としている。主人公のエイミー・イーグルウィングという女パイロットは、空を飛ぶことが好きな理由について「空の上から見ると、国境なんてどこにもない。世界は、ひとつなのだ」という。国境とは何なのかについて問いかけ、世界平和について考える物語となっている。



『太陽の棘』(2014年)では、戦後間もない沖縄の地に精神科医として赴任したエドが、現地のアートヴィレッジに迷い込み、沖縄の人々と交流をする物語である。「勝者と敗者、支配する者と支配される者、持つ者と持たざる者、私たちを隔てるものはいくつもあった。・・・ 私たちは、そのとき、勝者でも敗者でもなく、占領するものでも占領されるものでもなかった。私たちのあいだには、いかなる壁も、境界線もなかった。私たちのあいだには、何枚かの絵があった。ただ、それだけだった。それだけで、よかった。」

そして『異邦人(いりびと)』(2015)では、「境界線」はより象徴的な存在として登場をする。コレクターの家に生まれ審美眼を養ってきた主人公菜穂。その夫カズキが、家の壁に架かっていた妻のコレクションである、杉本博司の『海景』をしみじみと眺めながら回想をする。「・・・作品には、モノクロームの海と空が写されており、水平線がそのふたつをきっぱりと分断している。しかし菜穂には、それが「融合しているように」見えるのだという。永遠に交わることのできぬ空と海とが、ひとつの画面の中でぴったりと合わさったように見えると。静かに呼吸を止めたかのような海と空は、確かに、作品の中で見事に融和しているのだった。」
空と海との「融和」。これは主人公菜穂の見方であり、原田マハさん自身の見方でもあるという。「水平線とは空と海を分かつものではなく、空と海とが一つになっている証拠」なのである。

それでは、境界線(ボーダー)とはなにか?
その問いに対し原田マハさんは、そもそも境界線などない、と言う。
ボーダーが我々人間のイマジネーションで生まれるものであれば、そもそもそれは存在せず、そしてボーダーという概念が存在しないのであれば、ボーダレスもまた存在しない。そもそも私たち自身は一つの融合された社会をつくっているので、それを分断する境界線もまた存在しない。原田さんは、この考え方はアートの世界にも存在すると考えている。

点・線・面
「<点>をアートとします。<線>は<点>を分け隔てるものではなく、<点>の軌道・行動、すなわち私たち自身のアクティヴィティです。芸術家にとってはクリエーション、キュレーターにとっては企画展示、作家にとっては執筆活動、人々にとってはネットワーキング(オンライン)などが該当します。そして<面>とは、アクティヴィティの<場>と考えることができます。場とは私たちが支えている社会(全体)であり、アートの現場である美術館であり、小説を書いて発表している雑誌・インターネットなどのメディア、または小説そのものであるといえます。」
原田さんは、この点・線・面の3つを分け隔てるのではなく、ひとつの融合されたものであると考えている。アートと人々が出会う場が美術館であり、アートと読者を結びつける場が、原田さんの書いている、書きたいと思っている「アート小説」であると。
私たち個人個人は確かに点かもしれない、しかしその点と点が行動を起こすことで、アクションすることでその軌跡が線となり、その線がつながってやがて大きな面になっていくと考えられるのではないか。点から派生して面になっていく過程には、どこにもボーダーラインなどない。

美術×文学 アート小説という解
原田さんが、アートと読者を結びつける「アート小説」へたどり着くまでにはエピソードがあった。
原田さんと兵庫県立美術館との出会いは14歳、中学2年生の時。「ムンク展」をどうしても見たいと思い、父親に連れて行ってもらった。「中二病だったんですね。ミュージアムショップでポスターを買って、「叫び」は中二病だったので買っていないですけど、『マドンナ』というエロティックな作品のものを買って部屋に張っていました」と原田さんは振り返る。原田さんは学生の頃から、アートと自分が不可分なものであるという意識があった。
「関西学院大学時代に忘れられない出会いがありまして、友人が画集を持ってきてくれて、それがアンリ・ルソーだったんです。自分が絵をかく学生だったので、それをみてへたくそだなあと思ったりしたんですけど、上手いとか下手とかを超越したものを感じたので、ルソーのことを調べ始めました。」
原田さんは、岡谷公二の名著『アンリ・ルソー 楽園の謎』(1993)という本を読み、ルソーという人が絵に関してユニークな才能を持っているだけではなく、人間としてすごく面白い人だということを知った。そして自分の中でルソーと自分がコラボレーションをしたいという気持ちが強くなったという。
「ルソーに関する小説を探したんですが、なかなかなくて、そのとき思ったのが、アートと小説が一体化している小説はないのかな、と。」そうして誕生した最初のアート小説が、ルソーの絵画『夢』(1910)をテーマとして書かれた作品『楽園のカンヴァス』(2012)である。
原田さんは当初からアート小説を書いていたわけではなく、ラブ・ストーリーの作品でデビューした。原田さんにとってアート小説とは大切なカードであり、『楽園のカンヴァス』はデビュー後3年寝かせて書かれたものであった。大学時代の発想から25年の月日を経て、ようやく『楽園のカンヴァス』は出版された。単行本化の際は、日本を代表する美術史学者であり大原美術館の館長である、高階秀爾氏が解説を担当するなど、まさに美術の粋と原田さんの夢が詰まった作品となった。

2018年刊行の『常設展示室』を始め、近年原田さんは、常設展に注目した新しいアート小説を執筆している。「常設展にはテーマがあり、学芸員の思いがこめられている。そのコレクションがなぜ、どういった経緯で集まっているのか、考えると奥が深い。」と原田さんは言う。「県立美術館のコレクションは県民のものであり、県民の友人。県立美術館という家に住んでいる友人に会いにいくつもりで、常設展に行ってみてほしい。」




原田マハ × 蓑豊(兵庫県立美術館館長) 対談

―わたしの作品は「良き入り口であり、良き出口」であってほしい。小説を読んで、現実の世界の美術館に作中で登場した作品があるということを調べて、そして足を踏み入れて頂きたいのです。(原田マハ)
―マハさんのストーリーを読んで、美術作品に興味を持った人はたくさんいると思う。ストーリーが、美術をもっと追求したいと思わせてくれる。(蓑豊館長)

(以下 原田マハさん=マ、蓑豊館長=蓑))

蓑:杉本さん(杉本博司)とは、ニューヨークで彼がまだ新人の頃から友人。(原田さんが講演会で同氏の『海景』を取り上げたことについて)何かの縁を感じた。

マ:蓑館長はリビング・レジェンドです。館長の一番素晴らしいところは、アートが大好きであるところ。ありとあらゆるジャンルを愛し、作品に対するリスペクトを忘れていない事が、全身から溢れている。館長とお話をしていると、いつも時間を忘れそうになる。(館長のような)著名人の方の見たもの、聞いたものをメディア・文章に写して残さなければ、という書記者としてのミッションが私にはある。

マ:館長は芸術の世界に入り、シカゴ・アート・インスティチュートの東洋部門の部長をされていました。世界に飛び出したきっかけは何でしょうか?

蓑:中国美術をやっていたんですが、世界の人に理解してもらうにはアメリカにいくしかないと。日本語で文章を書いても、狭い世界で知れ渡るだけで世界の人に知ってもらえないと考えた。また、アメリカのオブジェクティヴにものを見る方法を勉強しなければいけないなと。
トロントのロイヤルオンタリオミュージアムには、8000点近い中国陶器のコレクションが手付かずで眠っているんですけれども、それらをカタログにしてほしいという依頼があったので、英語が全く喋れない中でアメリカに行った。そこで勉強の楽しさ、調べることの楽しさを感じた。物事を科学的に論説するだけでなく、向こうの人には、なぜそうなのかを証明してみせなければならない、アメリカではそれを学んだ。日本の若い方は、外国に行って勉強する喜びをもっと感じてくれたらいいと思います。今は留学に行く学生が少ないと聞いている。ものの分かる人は、言葉がわかるよりも尊敬される。私は大学を出て、3年半美術商に行った。その3年半がなければ、外国へ行って英語もできないで尊敬されるということはなかった。



マ:蓑館長は、伝説の古美術商の「壺中居」というところから出発されたんですね。若いときに小林秀雄、青山二郎、白洲正子などの伝説の目利きに送り出されたことは修行になったと思いますか。

蓑:そうした仲間と集まって、美術談義とかしたことはお互いに勉強になりました。小林さんは本当に親身になって案内してくれた。恥ずかしがらず、飛び込んでいったのがよかった。自分に自信もついたし。それで外国にいくことになった。お世話になった人には、感謝することを忘れずに日々やっている。

マ:川端康成に会ったりもしましたか?

蓑:よく「壺中居」にいらしてましたからね。吉田茂さんとか、普通では会えないような人に会って仕事をしたことはすごく自分の自信になったし、外国へ行ってもやっていけるなと思えた。

マ:何かの小説のネタにさせて頂きたいと思います。トロントからシカゴに行ったきっかけは何ですか?

蓑:トロントへは恩師の小山冨士夫先生の紹介でいったんだけど、船で2週間かけて、ついたら先生から電報が来て、学者になるまで君は日本に帰ったらだめだと。そしてトロントでは、上司からハーバードで博士号をとるようにいわれました。結局6年いて(博士号を)とることができましたけれど、上司が私を信じてくれなければ、できなかったと思います。でも努力さえすれば、実際にとることはできます。大事なのはステップ・バイ・ステップ。飛び越えないで、じっくり、できる範囲でやることです。



蓑:人をドキドキさせるような展覧会、美術館にしたいと思っている。例えば、カエル(フロレンティン・ホフマンの作品《Kobe Flog》※愛称『美かえる』)を美術館に乗せてみるとか・・・ミュージアム・ロードという名前や2号線沿いのスペースを利用して、ここに美術館があるんだぞ、ということをつくれたらいいと思う。私はここの美術館の三代目館長ですけど、前の人を尊敬しつつ、私は私なりにこれからまた新しい兵庫県立美術館をやっていく。

マ:先人の遺したものは宝だと思う。まず美術品そのものが先人の創った文化財。同時に、先輩方が何を見て何を感じ、何を表現してきたかを伝えていくことも大事。
インターネットが普及し、今やボーダーを感じる人のほうが少なくなったかもしれない。その一方で、現在とは部屋から一歩も出ずに、どこにでもアクセスできる時代になったとも言える。気になった絵も調べれば画像がすぐにでる。さっと調べるにはいい方法ではありますが、ただそれは、本物の絵とは全く違うということを知ってもらいたい。そういう点で本物を見せることのできる美術館の役割は、今後ますます重要になってくると思います。

蓑:今の人は、インターネットで調べて、それがあっている情報かどうかを考えたりしないことが恐ろしい。インターネットは便利だが、自分の力で探すということの喜びがなくなってしまったことが、今の人は、私から見れば、かわいそうに思う。

マ:インターネットにはいい所も悪い所もある。『楽園のカンヴァス』の執筆では、読者に端末で調べさせることを意識して書いた。今の時代は皆端末を持っているので。私が期待していることは、本の中のことだけでなくさらにその先まで調べて、じゃあ本物を見に行ってみようというような、一歩現実の世界に出てきてもらうこと。わたしの作品は「良き入り口であり、良き出口」であってほしい。ああ面白かった、だけじゃなくて、現実の世界の、ここの美術館に作中で登場した作品があるということを調べて、そして足を踏み入れて頂きたいのです。

蓑:マハさんのストーリーを読んで、美術作品に興味を持った人はたくさんいると思う。白樺派が興味を持って印象派を取り上げ、大原美術館が日本で初めて西洋美術の世界を広めたが、こうしたことは美術に対するすごい貢献です。マハさんもその入り口を開いた。我々のような普通の文章ではなくて、ストーリーがあり登場人物があるという点が、美術をもっと追求したいと思わせてくれる。

マ:アートは私にとって友達、美術館は友達の家。常設展は友達の部屋です。私も出先で10分もあれば、その土地土地の常設展示室に行って、難しいことは考えずに「元気にしてた?」という感じで挨拶をする。そしてすっかりリフレッシュして帰る。わたしは美術に対して、人生を通して感謝をしています。

蓑:県民の皆さんには、美術館をもっと自分のリビング・ルームのように使ってほしい。

マ:作品を守りたい、という気持ちを皆さんと共有したい。コレクションが友達ならば、館長は友達のお父さん。皆さんに対して何の境界線もなく、風通しよく、美術館のドアを開けて待っています。

蓑:今日は、どうもありがとうございました。これからのご活躍も楽しみにしています。

2018年11月24日 兵庫県立美術館にて



12月26日更新

曽野正之さんのアートトーク申し込み受付は終了しました。

好評につき、曽野正之さんのアートトーク申し込み受付は終了しました。たくさんのお申し込みありがとうございました。



12月2日更新

次回、兵庫県美ボーダレスアートトークについて

第一回の原田マハさんに続く次回のゲストは、建築家・曽野正之さん。
2015年アメリカ航空宇宙局 (NASA)が主催する火星住居設計国際コンペにて優勝し、一躍脚光を浴びた兵庫出身の若手建築家です。地球外で建築を設計するには、もちろん最先端テクノロジーを熟知している必要がありますが、曽野さんの素晴らしいところは、それだけでなく、人間にとって大切な「快適さ」や「美しさ」の追及に妥協がない点です。
子供のころから美術が大好きだった曽野さんが取り組んできたこれまでのプロジェクトや、現在の曽野さんを育んできた美術の創造性・可能性について、当館の蓑館長とともに語り合います。

 申込み開始は、12月14日(金)10時より、上記申し込みフォームより。



10月28日更新

原田マハさんのアートトーク申し込み受付は終了しました。

好評につき、原田マハさんのアートトーク申し込み受付は終了しました。たくさんのお申し込みありがとうございました。



10月18日更新

兵庫県美ボーダレスアートトークページを立ち上げました!

 第1回目は、トークゲストに原田マハさんをお迎えします。申込受付は10月25 日(木)午前10時から。このページの「実施概要」に申込フォームへのボタンを表示します。
みなさまのお申込をお待ちしております!



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