近代美術館の開館当初から、当館が収集と展示の中核に据えてきたのが彫刻です。特に海外作品では、近代彫刻の祖ロダンから、ブールデル、マイヨールなど19世紀の巨匠を経て、アルプ、ザッキン、ガボ、ジャコメッティ、ムーアなど20世紀の多彩な表現へと向かう流れを一望できるよう系統的収集を続けています。
新美術館への移転を気にブランクーシとシーガルの作品が加わり、さらにコレクションが充実しました。 |
わが国の近代彫刻は、ロダンをはじめとするヨーロッパ彫刻の大きな影響のもとに発展を遂げ、戦後は海外の様々な動向に呼応するかのような新しい表現が次々と生み出されてきました。
当館では、柳原義達、舟越保武、佐藤忠良、堀内正和、植木茂、新宮晋といった今日を代表する彫刻家たちの作品を幅広く収集し、海外彫刻と合わせて常設展示しています。素材や作者の違いによって個性的な表情を見せる彫刻の数々をご覧ください。 |
当館では、彫刻とともに内外の版画をコレクションの柱のひとつに位置づけています。海外版画としては、ゴヤ、マネ、クリンガー、ピカソ、カンディンスキー、ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズなど近現代の版画史を語る上で欠かすことのできない作家たちの作品を網羅的に集めてきました。なかでもアンソールの幻想的な作品群やエルンストの奇想に満ちた版画集の数々は、当館の版画収集のハイライトといえるものです。 |
浮世絵で大きな隆盛を見た日本の版画ですが、近代に入り西洋美術が流入してからは、その影響のもとに多彩な表現が生み出されました。
風景版画の伝統に新境地をもたらした小林清親、新版画の川瀬巴水、創作版画の谷中安規や川西英、そして、国際的にも高い評価を受けた長谷川潔、浜田知明、池田満寿夫。それらの名作を収集してきた当館のコレクションによって、近代から現代にかけての我が国の版画の歴史をたどることができるでしょう。 |
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金山平三と小磯良平。当館では、郷土ゆかりのこの両画家の作品を、ご遺族や関係者の方々から寄贈を受け、数多く所蔵しています。ほかにも、生野町生まれの三巨匠、白滝幾之助、和田三造、青山熊治の作品、ヨーロッパ旅行から帰国後神戸に住んだ林重義、晩年芦屋に住んだ小出楢重の作品などがあります。また、短い生涯でめざましい表現を開拓した飯田操朗、浅原清隆といった画家の作品や、兵庫生まれの画家ではありませんが、ロシア未来派のブルリューク「家族の肖像」、阿部合成「見送る人々」など、神戸に関係深いエピソードを持つ作品も所蔵しています。 |
兵庫には、日本画の一大中心地である京都とはひと味違う、気骨あふれるユニークな日本画家の存在があります。
晩年、養家のある神戸・花隈にすんで、六甲山や仏様を描いた村上華岳はその代表格です。
当館ではこの華岳の作品をはじめ、心にしみ入る原風景としての海・山を描いた東山魁夷、生活感あふれる女性像で有名な三谷十糸子の作品、ハイカラな雰囲気の漂う水越松南、山下摩起の作品などを収蔵しています。
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当館では、郷土ゆかりの画家に限らず、日本近代を代表する作品の収集も続けています。
明治初期洋画の興味深い状況を端的に示す本多錦吉郎「羽衣天女」や神中糸子の作品をはじめ、初期文展の代表作である岡田三郎助「萩」、同時代の若い画家に大きな影響力を持った岸田劉生や安井曽太郎、前田寛治などの作品を所蔵しています。 |
当館の前身である兵庫県立近代美術館は、常に同時代の美術の動向とともに歩んできました。そして、それらの収集と展示を重要な役割と考えてきたのです。とりわけ、戦後の関西でもっとも重要な前衛美術運動を展開した「具体美術協会」については、リーダー吉原治良はじめ、元永定正、白髪一雄、嶋本昭三、田中敦子といった初期メンバーの作品を数多く所蔵しています。また、これ以外に、菅井汲、津高和一といった、やはり郷土に関係の深い作家の作品も収蔵しています。さらに、1987年の「山村コレクション」一括収蔵により、戦後美術の作品群がパワーアップ。最近では、グラフィックデザイナーとして出発し、現在も八面六臂の活躍を続ける西脇出身の横尾忠則の作品を大量収蔵しました。 |