《24歳の自画像》1850年 油彩・キャンヴァス

モロー唯一の油彩画による自画像。美術学校を退学し、独自の道を歩み出そうとしていた、若き日の作品である。


《エウロペ》あるいは《エウロペの誘惑》
1868年 油彩・キャンヴァス


主神ユピテル(ゼウス)が牡牛に姿を変え、エウロペを背にのせて誘拐する。モローは原典を忠実にふまえつつ、牛の顔を人間にするという特異なやり方で、有名な神話の世界を絵画化した。


《オデュッセウスとセイレーンたち》
1875-80年頃 油彩・キャンヴァス


船に乗るオデュッセウス(ユリシーズ)の一行を歌声で魅了し、難破させようとする海の魔物セイレーン。黄金色に満たされた風景もまた、古代の叙事詩の一場面を描いたものである。


《夕べの声》水彩

夕べの到来を詩情豊かに告げる3人の天使。精緻に描き出された画面は小宇宙のごとき密度に満ち、モローの水彩画の魅力をあますところなく伝えてくれる。


《インドの詩人》1885-90年頃 水彩 ・ペン・黒インク

画面はもちろん、東洋風の手描きの縁取りもまた美しい。モローの想像力は、時代ばかりか洋の東西も越え、詩と幻想の世界を編み出した。


《旅する詩人》 油彩・キャンヴァス

モローの描く詩人は、次第に特定の誰かであるよりも、詩人そのものを象徴的に示す存在となる。


《妖精ペリ(扇面)》1865年頃
19本の生木の薄板、リボン、墨・白グワッシュ


想像上の動物グリフィンにのる奏楽の神ペリ。繊細で愛らしいこの扇面は、モローが恋人アレクサンドリーヌ・デュルーのために作ったものという。


《一角獣》1885年頃 油彩・キャンヴァス

精巧にほどこされた線描、きらびやかな色彩。伝説の動物、一角獣を描いたこの作品は、本展出品作の中でもとりわけ美しい一点である。


《出現》1876年頃 油彩・キャンヴァス

サロメの所望した洗礼者ヨハネの首が中空に現れる。モローの描くサロメ像は、『さかしま』の小説家ユイスマンスをはじめ、多くの人々に鮮烈な印象を与えてきた。


モデルを使った《サロメ》の習作(図録番号196)
《サロメ》のためのいろいろな習作(図録番号226)


繰り返し人物をとらえ、ときにはメモさえ書きこまれたデッサンからは、執拗にイメージを追求する画家のいきづかいを感じることができるだろう。