建築家・安藤忠雄(1941〜 )は、近年、内外の主要都市で注目すべき数多くのプロジェクトに携わっています。21世紀の世界に、安藤忠雄が提案するのは、<環境>を視座に据えた建築です。建築のみで完結するのではなく、都市、歴史、社会といったさまざまなものとの関わりの中から、場所に刺激を与える新たな関係を創り出します。その試みは、敷地に刻まれた<場所の記憶>を掘り起こし、環境の<再生>を実現するものとして、広く社会から注目を集めています。
 本展覧会は、世界を舞台に活躍する安藤忠雄による近作を、模型、ドロ−イング、写真、映像等の多彩な手法で紹介し、<次の時代の建築>を展望します。
 また、1995年1月17日の阪神・淡路大震災から8年が経ちました。「文化の復興」のシンボルとして開館した兵庫県立美術館において、その美術館、神戸市水際広場、復興集合住宅、淡路夢舞台などの復興計画のプロセス等も合わせて紹介し、これからの阪神・淡路の復興について考える機会とします。




■会  期:
2003年6月5日(木)〜7月21日(祝・月)
■開館時間:
午前10時〜午後6時(金・土曜日は午後8時まで)入場は閉館30分前まで 
■会  場:
兵庫県立美術館・ギャラリー
■休館日:
月曜日(ただし7月21日(祝)は開館し、翌7月22日(火)は休館)
■観覧料:
一  般 800(700)円 
大・高生 600(500)円 
中・小生 400(300)円 
( )内は前売り・20人以上の団体料金。
※兵庫県内在住の65歳以上の方および県内在住の障害者の方は半額
※兵庫県内に在住・在学の小・中生はココロンカードの提示により無料
※常設展は別途料金(本展と合わせて観覧する場合は割引)
■主  催:
兵庫県立美術館 / 朝日新聞社 / 安藤忠雄展2003実行委員会
■後  援:
兵庫県 / 兵庫県教育委員会 / 神戸市 / 神戸市教育委員会 / (財)伊藤文化財団 / 阪神・淡路震災復興支援10年委員会
■協  賛:
大林組 / 鹿島建設 / 清水建設 / 竹中工務店 / 淺沼組 / 奥村組 / 錢高組 / インターオフィス / カッシ−ナ・イクスシー / きんでん / セントラル硝子 / テクノ・ナミケン / 乃村工藝社 / YKK AP
■協  力:
安藤忠雄建築展実行委員会 / 近鉄ロジスティクス・システムズ
■企画協力:
デルファイ研究所



KOBE
兵庫県立美術館+神戸市水際広場

[写真] 2001
敷地は兵庫県神戸市、阪神・淡路大震災の復興プロジェクトのひとつである美術館と、隣接する広場の計画である。兵庫県立美術館は震災からの「文化の復興」のシンボルとして2002年春に開館。安藤は、発注者も工事期間も異なる両施設を一体化し、単体では得られない相乗的な可能性を求め、都市の文化地域として発展していくことを期待している。美術館の基壇部分から連続する水際広場は、非常時の防災拠点となることも考慮し円形広場を中心に500m近くにわたり、海沿いに展開する。クスノキの森は、震災復興への精神的な支援として全国の政令指定都市の協力で植えられたもの。



TOKYO
同潤会青山アパート建替計画

[模型] 計画中
東京・渋谷区の同潤会青山アパートは、関東大震災後、1927年に建設された日本における初めての本格的な鉄筋コンクリート造集合住宅の一つ。アパートは、建築史的価値とともに、東京の「都市の記憶」として欠かせない存在になった。建替計画では、何よりも「記憶の継承」を重要視し、「地下空間を最大限に生かし建物のボリュームの過半を埋没して、建物の高さをケヤキ並木と同程度に低く抑えること」と、「表参道の緩やかな坂道をそのまま建物内のパブリックスペースとして取り入れること」を主眼とし、次の時代に向けた風景の「再生」が主題となっている。地下は30m、低層部は商業空間にあてられ、そのうえに住宅を配している。屋上は緑化し、ケヤキと一体となった都市の緑豊かな環境をめざしている。



NAOSHIMA
直島コンテンポラリーアートミュージアム&アネックス

[写真] 1992,1995
瀬戸内海に浮かぶ香川県の直島に位置する、海に突き出た小高い丘にある美術館と宿泊施設の複合建築。アートとそれをつくりだすアーティストから、観衆、美術館関係者まで、そこに関わる全ての人々が互いに対話をかわし、刺激しあえるような可能性の場の創出をめざし、美術館はその対話を喚起する装置として考えられた。同様なコンセプトに基づき、現在、2004年夏オープン予定で、建物全体を地中に埋没させた美術館を建設中。環境に埋没し、風景の継承をめざした新しい美術館である。



NEW YORK
グラウンド・ゼロ・プロジェクト

[模型] 2002
2001年9月11日、無差別テロにより崩壊した、アメリカ・ニューヨークのワールド・トレード・センター跡地、グラウンド・ゼロのためのモニュメント計画。命を奪われた人々の鎮魂と、同じことが繰り返されないようにという願いをこめて、安藤は、あえて何もつくらず、ただ土を盛っただけの墳墓のようなモニュメントを提案した。3万人の人々が集うことのできる広さを有し、この場所から「一つの共同体としての地球をめざす」との意味を込めて、形状寸法は地球の球形をモティーフとして定められている。



FORT WORTH
フォートワース現代美術館

[写真]2002
アメリカ・テキサス州フォートワース郊外の都市公園の一画に位置し、隣接して、近代建築の傑作、ルイス・カーンによるキンベル美術館がある。茫漠と広がる敷地に対して、安藤は水庭と森の計画により、周辺環境から自立した都市のオアシスとして人々が憩い、自然とアートを感じることが出来る「芸術の森」というアイディアを提案。1997年国際コンペで指名されて計画が始まり、2002年12月、アメリカ最大級の現代美術館として開館。ガラスとコンクリートの入れ子構造のボックスを並列させるシンプルな構成は、キンベル美術館の構成の秩序感とも呼応している。



PARIS
ピノー現代美術館

[模型] 計画中
パリ南西の郊外にあるセーヌ川の中州にあるスガン島に計画中の新しい美術館。敷地約3.2ヘクタール、総床面積3万の、ポンピドゥーセンターに匹敵する欧州最大規模の美術館となる。2001年国際コンペで指名され、2004年着工、2006年完成予定。スガン島の輪郭をなぞった、宙に浮かぶガラスのボリュームからなるギャラリーと、大地との間の広大なピロティ広場から構成されている。安藤は、両側にセーヌ川を望む立地条件、フランス産業を支えるルノーの工場跡地、戦前からの労働運動のメッカとしてパリに生き続けてきた土地の歴史を強く意識し、セーヌの流れと一体となった都市の記憶を継承しながら、文化の新しい発信地となることをめざしている。



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